読切(脚本)
〇屋上の隅
日本の首都東京と片田舎の長野を結ぶ一本の細い恋の赤い糸が切れた──
ルーン「ミッションインコンプリート・・・ 恋の弾丸は消失し、この恋は失恋へと変わった」
「あらあら、また失敗したの? 優等生のルーンちゃん」
ルーンが自分の失敗を悔いていると、よく知った声がおちょくってきた。
アンネ「首席候補が聞いて呆れるわ、ルーン」
彼女の名前はアンネ。
ルーンの幼馴染だ。
ルーン「・・・そんなことはどうでもいい」
アンネ「はぁ!?」
アンネ「どうでもいいわけないでしょ!! 次失敗したら首席どころか卒業できないのよ?」
2人は天使見習いであり、恋のキューピッドを目指し卒業試験を行う学生だ。
卒業試験の合格条件は、4組の実りかけた恋のうち1組以上、己の武器で成就させることである。
ルーン「・・・次は決める」
ルーン「必ず」
アンネ「・・・ねぇ、アンタさぁ、そんな身体に不釣り合いな得物じゃなくて小さいのにしたら?」
アンネ「ほら、アタシみたいにナイフ使うとか」
アンネ「なんなら幼馴染じみのよしみで教えてあげよっか」
ルーン「余計なお世話」
アンネ「ムキー!!」
アンネ「ルーンなんか知らない!! 4組の恋を成就させたこのアタシが首席になるんだから!!」
アンネ「ルーンのバーカッ!!」
アンネはプンスカしながら、そのまま帰って行った。
ルーン「・・・」
〇駅のホーム
ルーン「・・・次のターゲットは、あの2人か」
ナギサ「電話してねっ」
レン「もちろんさ」
レン「そんなに頻繁には無理だけど、金貯めて会いに来っから。そんな顔すんな」
ナギサ「・・・うん、楽しみにしてる」
女の方は笑顔を作ったが目はまだまだうるうるしていた。
2人はその後、一言二言交わして男は電車に乗って去って行った。
ルーン「2人は高校の同級生。 卒業し、彼女は東京、彼氏の方は大阪の大学へ進学」
ルーン「距離およそ5百キロ。 分岐点は1ヶ月後。 その上、大学生か・・・」
ルーンは読んでいた資料をポケットに仕まいら彼女を見る。
まだ、泣いている彼女。
ルーン「はぁっ」
〇電車の座席
レン「・・・」
天眼で彼氏を追うと彼氏も泣いていた。
〇駅のホーム
ルーン「この恋は実らせる」
ルーン「必ず」
一ヶ月なんてあっという間だった。
その短い期間でルーンは入念な調査と計画を練った。
〇渋谷のスクランブル交差点
ナギサ「ゴールデンウィークは帰ってくるって言ったじゃん・・・」
ナギサ「レンのバカ・・・」
ナギサ「あいたいよ──レン」
〇屋上の隅
ルーン「その想い、確かに受け取った」
ルーン「恋の弾丸充填完了」
アンネ「でも、こんだけ天気悪いと難しいんじゃない?」
真剣な顔をしたルーンの隣で、当たり前のような顔をしてアンネがいた
ルーン「・・・なんでいるの、アンネ」
アンネ「邪魔しに来たのよん!!」
アンネ「・・・ってのは、冗談。 親友と一緒に卒業したいから応援しに来た決まってんじゃん」
ルーン「・・・ありがとう」
アンネ「だから、決めなよ」
ルーン「うん」
ルーンは天眼を発動した。
ルーン「距離・・・OK 予定到達時刻・・・OK 座標・・・・・・」
ルーンは彼氏の歩く速度、目的地を割り出す。
ルーン「538秒後の位置は──」
〇ビジネス街
〇屋上の隅
ルーン「そこだ!!」
ルーンはライフルを身体でしっかり抑えて引き金を引く。
すると、ピンク色の恋の弾丸が『ビュンッ』という音を置き去りにして飛んでいく。
アンネ「銃口、ブレ無かったわね」
ルーン「第一関門は突破」
〇高層ビル群
〇渋谷スクランブルスクエア
〇屋上の隅
ルーン「無機物及び距離による弾丸の破損無し──」
〇広い公園
〇ゆるやかな坂道
〇大きい交差点
〇池のほとり
〇銀閣寺
〇屋上の隅
アンネ「対象者以外に触れても反応無く貫通。 第二第三関門突破ね。 これなら・・・」
ルーン「・・・まずい」
アンネ「え?」
ルーン「対象者にイレギュラー発生」
〇ビジネス街
レン「もう、大丈夫だ」
少女「ありがとう・・・ございます」
レンは車に轢かれそうな少女を助けていた。
〇屋上の隅
ルーン「また・・・ダメだった」
アンネ「諦めんな、まだ受かるかもしれないだろ!?」
ルーン「私のことなんて、どーでもいいんだ!!」
アンネ「・・・は?」
ルーン「ごめん・・・恋を叶えてあげられなくて」
ルーン「・・・ごめん」
時間はもう1分もない
アンネ「アハ・・・」
アンネ「アハハハハッ」
そんな時、急にアンネが笑った
アンネ「惨めね、ルーン。 でも、これでアタシが首席よ!!」
ルーン「・・・アンネ?」
アンネ「全く、バカよね。 トップになれる実力があるのに。 遠距離恋愛に手を出すなんて」
ルーン「そう私はバカ」
ルーン「でも、成績のために天使が救わない恋があるなんて私は我慢できない」
ルーン「恋する2人が障害で結ばれない世界なんて、私は耐えられない」
ルーン「・・・アンネは違うの?」
アンネ「ふっ・・・気が変わったわ」
アンネ「やっぱり私、ここは邪魔しに来たんだった」
アンネは右手をかざす
アンネ「はあっ」
恋は駆け引き。
アンネの右手は恋を焦らす効果がある。
それは恋の想いを乗せた弾丸にも作用した。
アンネの力によって弾丸の速度が減速する
〇ビジネス街
レン「うっ」
男は無事弾丸に被弾した
レン「金はねぇ。 でも、バイクが・・・ある!!」
男は自宅へ走って帰り、
レン「行くぜ!! 待ってろ、ナギサ!!」
愛する彼女のもとへ向かった──
〇雲の上
「キューピッド試験首席は・・・」
・・・
「アフピー」
「不正を行ったルーンとアンネは不合格だ」
ルーン「・・・ごめん、アンネ」
アンネ「なに言ってんのよ。あの2人が結ばれたんだから。アタシは満足よ」
ルーン「・・・アンネ」
「ふっ。2人に朗報だ」
「友情の女神がその友情に感動し、友情の天使として、即採用してくれるそうだ」
ルーンとアンネは目を合わせ、
「ふふっ」
笑い、
「結構です」
断った
「なっ!? こんなチャンス天界始まって以来だぞ!?」
「ええ、だって──」
2人は手を繋ぎ、
「恋する天使になりたいですから」
天に昇った
数年後、ルーンとアンネの2人はどんな恋も成就させるキューピッドとして、2人で世界を駆け巡った。
──もちろん、
アンネ「アタシが後ろから抑えてあげよっか」
ルーン「・・・邪魔」
自分達の恋も成就させて──
完
街をふらふら歩いてて間違って弾に当たってドキがムネムネしてる人もいるかもと思うと楽しいですね。人様の恋を叶えるキューピッドを目指すルーンとアンネが密かに自分たちの恋も育んでいたなんて、ラストでは読者の心臓がキュンと撃ち抜かれました。
ライフルの彼女を恋のキューピッドにする着眼点、面白かったです!
キャラ紹介にあった、三重の◯◯、京都の◯◯って、そういうことだったんですね(笑)
可愛らしいキューピッドですねぇ。
何故私のところを狙ってくれないのですか!
いつでも狙われる準備はできているのですが!
とまぁ冗談はさておき、一つのことにここまでプライドや気持ちを背負って向かえるのはすごいなぁと感じました!