サンビタリア症候群

香久乃このみ

第十四話 依存(脚本)

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〇黒
  ──あらすじ──
  ケガの後遺症で
  足にマヒの残った陽花。
  絶望する陽花を
  信吾は優しく受け止める。

〇おしゃれなリビング
紅林信吾(しんご)「はい、ただいま。 ハルちゃん、今日からここが君の家だよ」
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」

〇簡素な一人部屋
紅林信吾(しんご)「ベッドに下ろすよ。 よいしょっと」
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
紅林信吾(しんご)「広めの部屋借りておいて正解だったな」
紅林信吾(しんご)「こちらの部屋は 君の自由に使ってくれていいからね」
紅林信吾(しんご)「下から車イス運んでくるから、 しばらくここで休んでて」
楠原陽花(はるか)「シンちゃん・・・」
紅林信吾(しんご)「なに?」
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
紅林信吾(しんご)「そんな心細い顔しないで。 ちゃんと戻ってくるから」
楠原陽花(はるか)「うん・・・」
楠原陽花(はるか)「私、迷惑じゃない?」
紅林信吾(しんご)「迷惑?」
楠原陽花(はるか)「私、やっぱり、 自分のマンションに戻った方が・・・」
紅林信吾(しんご)「今の君を、1人になんてさせられないよ。 心配だからね」
楠原陽花(はるか)「シンちゃん・・・」
紅林信吾(しんご)「何度も言ったよね、 僕はハルちゃんが好きだって」
紅林信吾(しんご)「ずっと君だけを想って生きて来たって」
紅林信吾(しんご)「だから、安心して僕を頼って」
紅林信吾(しんご)「ハルちゃんの力になれるなら、 僕だって幸せだから」
紅林信吾(しんご)「わかった?」
楠原陽花(はるか)「・・・うん」

〇黒

〇ビジネス街

〇オフィスのフロア
木田部長「紅林君」
紅林信吾(しんご)「はい、なんでしょう」
木田部長「楠原君のことだが、今、 君のマンションにいるって本当かい?」
紅林信吾(しんご)「はい。不自由な体で 一人暮らしをさせるのは心配ですから」
木田部長「・・・・・・」
紅林信吾(しんご)「僕たち幼馴染なんですよ」
紅林信吾(しんご)「こういう時に助けてあげるのも、 僕の役目かな、って」
木田部長「まぁ、いい」
木田部長「それで、 彼女はいつごろ復帰できそうだね?」
紅林信吾(しんご)「復帰ですか?」
木田部長「楠原君に頼りっぱなしもいけないが、 彼女ほど優秀な人材はそういないからね」
木田部長「出来れば一日も早く彼女には この部署に戻ってきてほしい」
紅林信吾(しんご)「そうですね」
紅林信吾(しんご)「病院と相談しつつ、 彼女の意向を聞いておきます」
木田部長「頼んだよ」

〇マンションの入り口

〇シックな玄関
紅林信吾(しんご)「ただいま」
楠原陽花(はるか)「お帰りなさい」
紅林信吾(しんご)「へぇ、車椅子の扱い、上手になったね」
楠原陽花(はるか)「それが・・・」

〇L字キッチン
紅林信吾(しんご)「・・・・・・」
紅林信吾(しんご)「すごい有様だね、何があったの?」
楠原陽花(はるか)「ごめんなさい」
楠原陽花(はるか)「ずっと家にいるのだから、せめて ご飯でも作ろうと思ったんだけど」
楠原陽花(はるか)「車椅子じゃ調理台に手が届かなくて、 手が滑って全部、落としてしまって・・・」
楠原陽花(はるか)「本当に、ごめんなさい」
紅林信吾(しんご)「怪我はない?」
楠原陽花(はるか)「え? えぇ、それは大丈夫」
紅林信吾(しんご)「なら良かった」
紅林信吾(しんご)「じゃあ、片づけておくから、 ハルちゃんはあっちで休んでて」
楠原陽花(はるか)「でも、私も何か・・・」
紅林信吾(しんご)「その状態で、床のものは拾えないだろ?」
楠原陽花(はるか)「っ!」
楠原陽花(はるか)「・・・疲れて帰ってきたばかりなのに、 ごめんなさい」
紅林信吾(しんご)「いいよ」
紅林信吾(しんご)「今後ご飯は買ってくるか、 作ってあげるから」
紅林信吾(しんご)「君は、部屋で大人しくしてるんだよ」
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
楠原陽花(はるか)「私、何の役にも立てないのね」
紅林信吾(しんご)「ん? 何か言った?」
楠原陽花(はるか)「ううん、なんでも」
楠原陽花(はるか)「あ、会社の方はどう?」
楠原陽花(はるか)「私、引継ぎもなしに抜けてしまったから、 困っていたりしない?」
紅林信吾(しんご)「いや、全然問題ないよ。 君がいなくても会社は回ってる」
紅林信吾(しんご)「部長も、安心して療養してくれって」
楠原陽花(はるか)「・・・そう」
紅林信吾(しんご)「・・・・・・」

〇おしゃれなリビング
紅林信吾(しんご)「美味しい?」
楠原陽花(はるか)「うん」
紅林信吾(しんご)「良かった」
紅林信吾(しんご)「いつか君に食べさせたいと思って、 料理も結構練習したからね」
楠原陽花(はるか)「え・・・」
紅林信吾(しんご)「君のことだけを思って生きてきたのは、 嘘じゃないんだよ」
楠原陽花(はるか)「あ・・・りが、とう・・・」
紅林信吾(しんご)「心配しなくていいからね」
紅林信吾(しんご)「何もできなくても、 僕はハルちゃんが好きだから」
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
楠原陽花(はるか)「ぅ・・・あ、あぁ・・・」
紅林信吾(しんご)「どうしたの、ハルちゃん? 背中が痛む?」
楠原陽花(はるか)「違うの・・・」
楠原陽花(はるか)「ずっとその言葉が欲しかったの・・・、 誰かに、言ってもらいたかったの・・・」
楠原陽花(はるか)「何もできなくても、好きだって・・・」
紅林信吾(しんご)「っ!」
紅林信吾(しんご)「・・・・・・」
紅林信吾(しんご)「バカだな、そんなことで泣くなんて」
楠原陽花(はるか)「うぅ・・・うぁあ・・・」
紅林信吾(しんご)「でも、そんなハルちゃんも 可愛くて大好きだよ」

〇空

〇ビジネス街

〇休憩スペース
田所胡蝶(こちょう)「紅林さぁん」
紅林信吾(しんご)「なんでしょう、田所さん。 わからないところでも?」
田所胡蝶(こちょう)「そうじゃないんですぅ」
田所胡蝶(こちょう)「紅林さんが疲れているようで、 私、すごく心配になっちゃってぇ」
紅林信吾(しんご)「そう? そんなことないけど?」
田所胡蝶(こちょう)「紅林さん、家に帰ったら 楠原先輩のお世話を させられてるんでしょう?」
田所胡蝶(こちょう)「疲れて帰宅した人にそんなことさせる なんて、楠原先輩ひどすぎますぅ」
田所胡蝶(こちょう)「自分は昼間からゴロゴロしてるくせに」
紅林信吾(しんご)「・・・・・・」
田所胡蝶(こちょう)「紅林さんに迷惑かけてること、 もう少し自覚した方がいいですよね、 あの人」
紅林信吾(しんご)「そんなことないよ」
田所胡蝶(こちょう)「ね、紅林さん、 たまには羽を伸ばさなきゃダメですよ」
田所胡蝶(こちょう)「このままじゃ、倒れちゃいますよ?」
田所胡蝶(こちょう)「だ・か・らぁ、 今日、一緒に飲みに行きません?」

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コメント

  • 面白くて一気見していたら、あの人のコメントに目が止まってしまった😅 どうも。ギルティな奴です。笑
    している事は同じなのに、こんなに印象が違うとは😆(一緒にするな)

    いやしかし流石ですわ。感情揺さぶられっぱなしです❤

  • シンちゃんの暗い願望と計画は成功してしまっているのですね。
    その檻の中でしか生きられなくなっている陽花も、陽花に復讐しようと行動している信吾も、どうか目を覚ましてしっかりと立って欲しいと願わずにはいられません。

  • 失意の陽花さんを、シンちゃんの設けた優しい檻の中でしか生きられない依存状態にするのが彼の復讐かと思いきや、その後もあるのですね。。。
    終始じっとり重い空気感が漂う話の中、一気に空気を換えられる田所さんの存在感には逆に感心してしまいましたw

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