真夏の人間日記「僕達は悪魔で機械な青春が死体!」

不安狗

33/再会(脚本)

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〇田舎駅の待合室
星木ミウ「・・・・・・あれ、コハク君?」
  駅で電車を待っていると、横から聞き覚えのある声が聞こえた。
  「・・・・・・ミウさん?」
  見覚えのあるアンドロイド用のメイド服は、こんな田舎の駅舎にはどこか不釣り合いに見える。
  他の利用客がいれば悪目立ちしそうだが、真夜中の無人駅には僕とミウさん以外、人っ子一人いなかった。
星木ミウ「こんばんは。良い夜だね」
星木ミウ「でもこんな夜更けに、これからお出かけ?」
  「え、あ、うん・・・・・・」
星木ミウ「そうなんだ。あなたは、どこに行くの?」
  「えっと・・・・・・、あ、あれ?」
  ミウさんに尋ねられて気づく。
  そういえば、こんな時間に僕は一体、どこに行くつもりだったんだろうか。
  全くと言っていいほど、行き先について僕は思い出すことができなかった。
  何で僕は、こんなところにいるんだ?
星木ミウ「やっぱりまだ、わからないんだね」
星木ミウ「まあいいや。詳しい話は、電車に乗ってからだね」
  「電車・・・・・・?」
  ふと見るといつの間にか、ホームには真っ黒な電車が停まっていた。
  急に目の前に現れた電車の窓から漏れる明かりに、僕は反射的に目を逸らす。
星木ミウ「・・・・・・中で、久野さんも待ってるよ?」
  「久野が・・・・・・? あ、待って!」

〇電車の中
  ミウさんを追って、僕は一番近くの眩い車両に乗り込んだ。
  中にいたのは、白いワンピースを着た久野一人だけだった。
  奥に見える隣の車両にも、その反対側の車両にも、他の乗客は誰一人乗っていないように見えた。
星木ミウ「久野さん、連れてきたよ」
  ミウさんが久野に、親しげに話しかける。
  でもそれが本物の久野でないことは、一目見ただけで分かった。
  「・・・・・・いや」
  久野がワンピースを着ているところを、僕は今まで見たことが無い。
  というかこの白いワンピース、僕には心当たりがあった。
  するとミウさんが振り返って、こてんと首を傾げた。
星木ミウ「・・・・・・コハク君?」
  「あなたは、久野さんじゃないですよね?」
星木ミウ「・・・・・・」
  「・・・・・・お前、誰だ?」
  肩をすくめた久野の身体が、みるみるうちに縮んでいく。
  「・・・・・・」
コクノ「さすがはお兄ちゃん」
コクノ「どうしてわかったのかしら?」
  そして目の前で僕をじっと見上げている久野は、白いワンピースを着たコクノの姿になっていた。
  「久野はそういう格好しないんだ」
  「それにその服、前会った時に着てたやつでしょ?」
コクノ「ええ、私のお気に入りなの!」
  コクノはワンピースの裾を翻し、その場でクルリと回った。
  「ということは、こっちのミウさんも・・・・・・」
  すると隣の車両から、学校の制服を着たもう一人のミウさんが飛び込んできた。
星木ミウ「いた! やっと見つけた・・・・・・」
星木ミウ「コハク君、と・・・・・・え、私?」
  「ミウさんが、二人・・・・・・?」
  二人のミウさんが、向かい合った。
コクノ「あら、こんばんは。もう来たんだ」
  制服を着た方のミウさんが身構えると、コクノはメイド服を着た方のミウさんに右手をかざした。
  するとそのメイド服は白いワンピースに変形し、メイド服を着ていたミウさんの身体はコクノの姿に変化した。
  「ミウさん、じゃなくて、コクノが二人・・・・・・?」
  二人のコクノは横に並んで、近くの座席に座った。
  いつの間にか僕とミウさんも、二人のコクノが座っている席の向かい側の席に、腰を下ろしていた。
  電車はまだ、動き出す様子はない。
コクノ「ミウお姉ちゃんが、お兄ちゃんの夢に入りたそうにしてたから」
コクノ「だから私が、ちょっと手伝ってあげたの」
  コクノは二人のまま、同じ言葉を同時に喋りながら、同じようにニッコリと微笑んだ。
  多分、どっちも本物なのだろう。
  「ミウさんが・・・・・・?」
星木ミウ「・・・・・・コクノ。じゃあここは、コハク君の夢の中で合ってるってこと?」
  ミウさんが、二人のコクノを交互に見た。
コクノ「そうよ。あなたはお兄ちゃんの夢の中に、ちゃんと入ることができたの」
  「夢・・・・・・」
  今僕の見ているこの光景は、夢なのか。
  連日夢のような出来事をたくさん見てきたけど、今までのは全て現実だった。
  ただ今回のこれに関しては、どうやらちゃんと夢らしい。
  とは言え、きっと夢で済ませられるようなことでは無いのだろう。
  コクノにミウさん、今いるメンバーからしても、何かしら現実に影響が及ぶことは間違いないと思った。
星木ミウ「・・・・・・そう」
星木ミウ「じゃあ、コハク君、久野さんはその、大丈夫だった?」
  「久野?」
星木ミウ「うん。・・・・・・あの後、ちゃんと人間に戻れてるんだよね?」
  ミウさんが僕の方を見た。僕の夢に入ろうとしてたらしいだけあって、ミウさんはコクノの話についていけているようだった。
  まさか久野の状態のことを聞くために、わざわざ僕が見ている夢の中に入ったのか?
  久野が見ている夢の方には、入れなかったのだろうか。
  「え、ああ、大丈夫。久野の家も元に戻っていたし」
  「ミウさんこそ、大丈夫なの?」
星木ミウ「・・・・・・うん。仲間と合流できたから。それよりコクノ」
  仲間・・・・・・?
  確かミウさんはフェーズ1、ゾンビの世界に逃げたはず。
  あのゾンビだらけの世界に、他に生存者がいるのか?
コクノ「何かしら? ミウお姉ちゃん」
  コクノが二人とも、ゆっくりとミウさんの方を向いた。
星木ミウ「あなたは何で、コハク君の夢の中にいるの?」

次のエピソード:34/明ける夜

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