第十三話 喪失(脚本)
〇黒
──あらすじ──
信吾から受け取った動画のおかげで
窮地を脱した陽花。
だが、恨みを募らせた真希也に
刺されてしまう
???「・・・さん、・・・すはらさん」
???「楠原さん、聞こえますか? 楠原さん!」
〇病室のベッド
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
看護師「楠原さん、 今どこにいるか分かりますか?」
楠原陽花(はるか)「・・・?」
看護師「ここは病院です」
看護師「あなたはケガをして運ばれました。 分かりますか?」
楠原陽花(はるか)「ケガ・・・、病院・・・」
楠原陽花(はるか)「痛っ!」
看護師「あぁ、無理に動かないで。 背中に傷を負っているから」
楠原陽花(はるか)「・・・?」
楠原陽花(はるか)(足の感覚が・・・)
看護師「ちょっと待っててくださいね。 ご家族さん、呼んできますから」
楠原陽花(はるか)「家族?」
〇大学病院
〇病室のベッド
陽花の父「はー、全く、何をやっとるんだお前は」
陽花の父「夜、フラフラ歩いていて刺された? バカか!」
陽花の父「女が暗くなってからうろついていたら、 襲われても文句言えるわけないだろう!」
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
陽花の父「しかも刺したのは若い男?」
陽花の父「どうせ面白半分に 色目でも使った相手だろう」
陽花の父「自業自得だ、お前が悪い!」
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
陽花の母「お父さん、ちょっと。 ここは病院だから・・・」
陽花の父「生意気に一人暮らしなんかするから こんな目に遭うんだ」
陽花の父「こんなことなら、とっとと適当な家に 嫁入りさせておくんだった」
陽花の父「そんな大けがをして、 もう一生貰い手なんかない!」
陽花の父「どうする気だ、このバカ!」
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
楠原陽花(はるか)「出て行って」
陽花の父「なんだと?」
楠原陽花(はるか)「出て行って!!」
陽花の父「お前!」
陽花の父「父親がわざわざここまで来てやったのに、 その態度はなんだ!!」
陽花の母「お父さん、みんなが見てるから・・・」
楠原陽花(はるか)「来てくれなくてよかった!! 会いたくなんてなかった!!」
陽花の父「このバカ!」
陽花の父「親の目から離れて 調子に乗ってるんじゃないのか!?」
楠原陽花(はるか)「痛っ、触らないで・・・!」
看護師「なにをしてるんですか! 患者さまは絶対安静ですよ!」
看護師「騒ぐなら退出してください!」
〇黒
〇病室のベッド
看護師「楠原さん、大丈夫?」
楠原陽花(はるか)「はぁ、はぁ・・・。 うっ、ぐ・・・」
看護師「待ってて。 今、主治医の先生を呼んでくるから」
楠原陽花(はるか)「かんごし、さん・・・」
看護師「なんですか?」
楠原陽花(はるか)「足、感覚がないんです・・・」
看護師「・・・・・・」
〇黒
背中から刺された私は脊椎を損傷。
それによる下半身の麻痺が残ったと
主治医から説明を受けた。
〇病室のベッド
楠原陽花(はるか)「ふ、ふふふ・・・ふふっ・・・」
楠原陽花(はるか)(もう、これまでと同じようには 生きていけないってことね)
〇明るいリビング
子どもの頃から、両親は
私をまともに見てくれなかった。
頑張って成果を出せば愛してもらえる。
そう信じて成果を出せば、
女の分際で生意気だと逆に叱責された。
〇教室
けれど努力を重ねるごとに、
周囲の人が褒めてくれるようになった。
その称賛の言葉を心の支えに、
私は頑張り続けることができた。
〇名門の学校
認めてくれる人が大勢いれば、
親のことなんて忘れられた。
〇オフィスのフロア
けれど少しでも油断すれば、
称賛の言葉は別の人物のものと
なってしまう。
〇病室のベッド
楠原陽花(はるか)(私だけを見てくれて、 褒めてくれる人が欲しかった)
楠原陽花(はるか)(たとえ私が優秀でなくなっても、 受け入れてくれる人が欲しかった)
楠原陽花(はるか)(そんな人が現れてくれるのをずっと、 ずっと待ってた・・・)
楠原陽花(はるか)(けれど、もうそれは叶えられない・・・)
楠原陽花(はるか)「疲れた・・・」
楠原陽花(はるか)「もう、疲れた・・・」
紅林信吾(しんご)「楠原さん」
楠原陽花(はるか)「紅林君」
楠原陽花(はるか)「何をしているの、夜間の患者同士の 部屋の行き来は禁止されているはずよ」
楠原陽花(はるか)「誰かに見つかる前に出て行って」
紅林信吾(しんご)「泣いていたの?」
楠原陽花(はるか)「・・・っ」
楠原陽花(はるか)「あなたには関係ない」
紅林信吾(しんご)「・・・・・・」
楠原陽花(はるか)「そう言えば、 あなたは私を恨んでるんだったわね」
楠原陽花(はるか)「じゃあ、朗報よ」
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)
ずっと真面目に真摯にひたむきに生きてきた陽花さん、(周囲の男たちの感情はともかく)そんな彼女への酷な展開、あまりにもツラすぎます!こんな展開を考えた方は非道です!
あれ、シンちゃんからしたら、この展開は……
えっ、これしんちゃんの思惑通りの展開やん!?
あかん、あかんてーー!!
陽花、騙されるな!!
色目を使っただとか襲われる方にも落ち度はあるだとかいう昭和の価値観って未だに残ってますもんね。少し露出のある服を来ただけで誘ってると勘違いする精子脳回路は令和の時代に淘汰されることを願います。本当に、男の気持ち悪さを描くのが上手いです!