注文の細かい料理店(脚本)
〇けもの道
ウォーレン「なあ、コール」
コール「ん?」
ウォーレン「道に迷ってないか?」
コール「あははは。ウォーレンは心配性だなぁ」
コール「だーいじょうぶだって。もうすぐだよ、もうすぐ」
ウォーレン「お前、それ2時間くらい前から言ってるぞ」
コール「ダメだよ、ウォーレン。美味しいものを食べるためには、苦労が必要なんだよ」
ウォーレン「いや、材料を取りにいくとかなら、そのセリフはわかる」
ウォーレン「けど、お店に行くんだろ? なんで、その店はこんな場所に建てたんだ?」
コール「んー。聞いた話によると、山奥にお店を出してるのには意味があるらしいよ」
ウォーレン「ホントか? こんな場所だと客が来づらいだろうし、デメリットしかないだろ」
コール「そうだなぁ。きっと、ここまで来るまでにお腹が減るでしょ? 空腹は最高のスパイスってね!」
ウォーレン「空腹っていうか、疲れすぎて、逆に食欲無くなってこないか?」
コール「あ、あったよ!」
ウォーレン「・・・ホントにあった」
コール「えーと、山猫庵って書いてあるから、ここで合ってるね」
ウォーレン「山猫庵? なんか聞いたことあるような・・・」
コール「まあ、隠れた名店だからね」
ウォーレン「隠れてるなら、聞いたことないはずなんだけどな」
コール「あ、何か書いてある。んーっと、イケメン大歓迎だって!」
コール「僕たち超イケメンだから、歓迎されちゃうね!」
ウォーレン「・・・自分で言うなよ。残念な奴だと思われるだろ」
コール「おじゃましまーす!」
ウォーレン「おい! 先に行くな!」
〇暗い廊下
コール「あれ? 変わったお店だなぁ。何もない部屋だ」
???「いらっしゃいませだにゃん!」
ウォーレン「うおっ! どこからしゃべってるんだ?」
???「魔力だにゃん! 嘘だにゃん」
ウォーレン「なんで嘘付いたんだよ!」
キャロル「山猫庵の店長、キャロルだにゃん。お客様、イケメンでとっても嬉しいにゃん」
ウォーレン「・・・なんで、イケメンだと嬉しいんだ?」
キャロル「イケメンは、私の大好物だにゃん。じゅるり」
コール「ねえねえ、僕たち、お腹減ったんだけど料理食べさせてくれないかな?」
キャロル「もちろんだにゃん」
キャロル「でも、そのためにはお客様に色々やってもらわないとならないにゃん」
ウォーレン「やること?」
キャロル「まずは二人とも、身を清めてほしいにゃん」
キャロル「ここまで来るのに、汗をかいただろうし、土だらけになってるにゃん」
キャロル「だから、奥の部屋にあるお風呂に入ってほしいにゃん」
ウォーレン「は? 風呂? なんで、飯を食べるために風呂に入らないといけないんだ?」
コール「まあまあ。僕たち汗かいたんだし、お風呂入ってさっぱりしてから食べた方が美味しいよ、きっと」
ウォーレン「・・・・・・」
〇西洋の大浴場
大浴場で湯船に浸かっている二人。
コール「あー、いい湯だなぁ。疲れが取れるよ。極楽極楽」
ウォーレン「・・・・・・」
コール「どうしたの? そんな難しい顔して」
ウォーレン「なあ、コール。この店、やっぱり怪しくないか?」
コール「怪しい? なんで?」
ウォーレン「・・・普通、料理店で、こんな大浴場とかないだろ」
コール「粋な計らいだよねー」
ウォーレン「いや、そうじゃなくて・・・」
コール「あ、見てよ、ウォーレン。このお風呂、ゆずが浮かんでるよ」
コール「どおりで良い匂いがしてると思ったんだよねー」
ウォーレン「・・・・・・」
キャロル「ゆずは疲労を取る効果があるにゃん」
ウォーレン「うおっ! お前、どこから話してるんだ?」
キャロル「魔力だにゃん。嘘だにゃん。覗いてるわけじゃないにゃん」
ウォーレン「・・・・・・」
キャロル「それから、ゆず湯に、あと5分浸かってほしいにゃん」
ウォーレン「なぜだ?」
キャロル「お肉が柔らかくなるにゃん」
ウォーレン「肉が・・・柔らかくなる?」
キャロル「あー、いや、間違ったにゃん。肩こりとかが治るにゃん」
キャロル「体をほぐしてから食べるにゃん」
コール「あはは。お気遣い、ありがとう。至れり尽くせりだね」
キャロル「フロから上がったら、しっかり体を洗ってほしいにゃん」
ウォーレン「注文が細かいな」
キャロル「美味しく食べるための秘訣にゃん」
コール「それなら仕方ないねー」
ウォーレン「・・・・・・」
〇サウナの脱衣所
コール「いやー、いい湯だった」
キャロル「体を拭いたら、そこの桶の中にある塩で体を清めてほしいにゃん」
ウォーレン「・・・なんで、そこまでする必要がある?」
キャロル「塩は皮膚を引き締める効果があるにゃん」
キャロル「お客様の玉のような肌を、さらにピカピカにするためにゃん」
コール「あははは。玉のような肌だってー。照れるね。じゃあ、塩で体を清めよっか」
ウォーレン「・・・・・・」
キャロル「ちゃんと隅々まで練り込んで欲しいにゃん」
〇サウナの脱衣所
キャロル「次は爪を切って、髪形を整えてほしいにゃん」
キャロル「あ、整髪料はそこにある、豚の油を使ったポマードを使ってほしいにゃん」
コール「へー、こだわりの逸品だね」
ウォーレン「おい、ちょっと待て!」
ウォーレン「料理を食べさせるのに、なんでこんなことまでさせる?」
キャロル「私の料理は一級品にゃん。その料理を食べるんだから、それなりのマナーが必要にゃん!」
コール「そうだよねー。ほら、ウォーレン、駄々こねてないで、言う通りにするよ」
ウォーレン「コール、やっぱり怪しいぞ、この店」
コール「何言ってるの! 僕、もうお腹ペコペコだよ」
コール「早く準備して料理食べたいんだから。ほら、さっさとする!」
ウォーレン「・・・・・・」
〇殺風景な部屋
キャロル「次に、ナイフとか銃を持ってたら、この部屋に置いていって欲しいにゃん」
キャロル「そんなものは料理を食べるのに必要ないにゃん」
ウォーレン「・・・・・・」
コール「大丈夫! そんな物騒な物、最初から持ってないよ」
キャロル「それなら安心にゃん。それじゃ、最後に目の前のローブを着て欲しいにゃん」
キャロル「あ、下着は履かないで、直で着て欲しいにゃん」
コール「うわー、いいローブだね。・・・・・・って、ウォーレン、どうしたの? 青い顔して」
ウォーレン「コール。これ、ヤバいやつだ」
コール「は?」
ウォーレン「逃げるぞ! 殺される・・・」
コール「何言ってんの? これで最後なんだから、さっさと着替えていくよ」
ウォーレン「止めろ! 離せ―!」
〇レストランの個室
キャロル「ここまで指示に従ってくれて、ありがとうにゃん」
コール「あー、店長さん、やっと顔を見せてくれたね。可愛い人だなー」
キャロル「ありがとにゃん。お客様もホント、イケメンで嬉しいにゃん。じゅるり」
ウォーレン「・・・ヤバい。これ、絶対、ヤバいやつだ」
キャロル「イケメンは大好物にゃん。はあーはあー。よだれが止まらないにゃん」
ウォーレン「うう・・・くそ・・・」
コール「ねえ、僕、お腹減っちゃったよ。早く食べさせてよ」
キャロル「うふふふふ。もちろんだにゃん。それじゃ、さっそく・・・」
ウォーレン「ヤバいヤバいヤバいヤバい」
コトッとテーブルの上に皿が置かれる。
キャロル「前菜のアボカドとエビのカクテルソースだにゃん」
ウォーレン「いや、普通に料理出すのかよ!」
キャロル「は? なんのことだにゃん?」
終わり
え!?も、もしや、あの、鍵谷シナリオブログ様の
御本人様!?台本見させてもらっております!
どれも面白く素敵です!これからも頑張って下さい!
(macaron)
店側の指示を途中まで聞きながら、絶対予期せぬ結末だろうと思っていたら、完璧に騙されました! 単なるイケメン好きの料理上手なだけなんですね。緊張がとけて、2倍美味しく感じられたかも!