童話シリーズ

鍵谷端哉

私の名前はシンデレラ 前編(脚本)

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〇外国の田舎町
  昔々、あるところにシンデレラと言う、それはそれは、とても美しい娘がおりました
  シンデレラはママハハや義理の姉たちと暮らしていて、全ての家事を任されていたのです
  さらに、シンデレラは義理の姉たちにイジメられていたそうな・・・
  砂利道を巨大な荷車を引いているシンデ
  レラ。
シーラ「なにやってるのよ、シンデレラ!チンタラしてなさいでさっさと運ぶのよ」
  シーラがシンデレラをムチで打つ。
シンデレラ「うっ!」
村人1「見て、またシンデレラがシーラさんにイジメられているわ」
村人2「シーラさん、普段はいい子なのにねぇ。どうしてシンデレラにだけはあんなに厳しいのかしら」
村人1「ちょっと常軌を逸してるわよね。あんな巨大な荷車を引くこと自体、普通は無理なのに」
村人2「あの荷車、特注品らしいわよ。シンデレラが街から家まで運ぶまでに一時間を切ったら、さらに大きな荷車に変えるんだって」
村人1「・・・ それは酷いわね。可哀そうに、シンデレラ」
  荷車を引くシンデレラ。
シンデレラ「うおおおお!」
  バンと扉に手を付く、シンデレラ。
シンデレラ「着いた!時間は?」
シーラ「えーっと・・・ 凄いわ!新記録!58分」
シンデレラ「やったー!じゃあ、また一回り大きな荷物、頼んでおいてくれよな」
シーラ「ねえ、シンデレラ。もうこんなこと止めない?これ以上、鍛えてどうするのよ」
シンデレラ「何言ってんだよ、シーラ姉。人間の限界に挑む!まさに浪漫じゃねーか」
シーラ「シンデレラ。あなた、女の子なのよ。せっかく、器量がいいのに、嫁の貰い手がなくなってしまうわ」
シンデレラ「いーんだよ結婚なんざ、興味ねえし。俺に必要なのは旦那じゃなく、強者だ」
シーラ「はあ・・・ 。なんで、こんな風に育っちゃったのかしら」
シンデレラ「しょうがねえよ、親父の遺言が強く生きろ、だったんだからさ」
シーラ「・・・ そういう意味じゃないと思うわよ」
  カーラがドアを開けて、家から出てくる。
カーラ「あら、シーラ姉さん、シンデレラ、お帰りなさい。早かったわね」
シンデレラ「聞いてくれよ、カーラ姉。ついに、一時間切ったんだぜ!」
カーラ「あら、凄いわね。・・・ って、それって素直に喜べないわ。益々、嫁の貰い手がいなくなるもの」
シンデレラ「カーラ姉も、そんなこと言うのかよ。いいんだよ、俺は結婚しないから」
カーラ「またそんなこと言って・・・ って、ほら、そんなところに立ってないで、荷を下ろしましょ」
シーラ「その前に、シンデレラの手当てが先よ。 今日は五回も鞭を打っちゃったんだから」
シンデレラ「ああ、それは平気だよ。服が破れただけで、皮膚には傷がついてねーから」
カーラ「ねえ、シンデレラ。前から思ってたんだけど、どうして私たちが罵倒しながらシンデレラを鞭で打たなきゃならないの?」
シンデレラ「それは俺が、ドSかつドMだからだ。罵倒されると力が湧くんだよ」
シーラ「まさか、妹に変態属性がついていたなんて・・・。うう、結婚は絶望的だわ」
カーラ「でも、罵倒でいいなら鞭で打たなくてもいいんじゃない?」
シンデレラ「ああ、それは、限界のときに身体にショックを与えることで、身体を動かすことができるんだ」
シンデレラ「一旦、身体が動けば、それを身体が覚えるから、次は難なく動かせられるようになるってわけ」
シーラ「そんなことを意気揚々で説明されても・・・」
カーラ「はあ・・・。鞭を打つ側にもなってよ。おかげで街の人たちから、私たちがシンデレラをイジメてるって噂されてるのよ」
シンデレラ「あれ?おっかしーな。みんなには、ああいうプレイだって、説明してるのに」
シーラ「さらに誤解を生むようなことは止めてっ!」
カーラ「・・・ シーラ姉さん、もう諦めようよ。今更なに言っても遅いわ」
シンデレラ「そうそう」
シーラ「はあ、どうしてこんなことに・・・」

〇西洋風の部屋
シンデレラ「うおおお!」
  シンデレラがものすごい勢いで、床を雑巾
  がけしている。
シーラ「・・・ シンデレラ、雑巾がけ、手伝おうか?」
シンデレラ「いや、いい。もうすぐで終わるし」
カーラ「じゃあ、私、洗濯の方してくるわね」
シンデレラ「もう!全部、俺がやるって言ってるだろ!家事は全身の筋肉をつかう、いい特訓になるだからさ!」
シーラ「でも、妹が必死に働いてる中、何もしないっていうのも、なんだかさ・・・」
シンデレラ「それなら、料理やってくれよ。料理はいらねースキルだからさ」
カーラ「女の子として、一番必要なスキルよ・・・」
  そのとき、勢いよくバンと扉が開く。
ミンシア「みんな、大ニュースよ!」
シンデレラ「ああ、母さん、お帰り」
シーラ「どうしたの、そんなに慌てて」
カーラ「お母さん、とにかく落ち着いて。はい、お水」
ミンシア「ありがとう」
  水を飲み干す、ミンシア。
ミンシア「ふう」
シーラ「それで、ニュースってなに?」
ミンシア「それがね!ついに、王子が嫁を取るらしいの!」
シーラ「へー」
カーラ「ふーん」
シンデレラ「なんだ、そんな話か」
ミンシア「・・・ リアクション薄いわね」
シーラ「だって、私たちに関係ないし」
カーラ「ミーハーじゃないし、他人の恋愛事情に興味ないのよね」
シーラ「王様が不倫してたー、とかなら少しは盛り上がるかもだけど」
ミンシア「若い娘の発言とは思えないわ。はあ・・・ 私の育て方が悪かったのかしら」
シンデレラ「さてと、洗濯してくっかな」
カーラ「私は晩御飯の準備しないと」
シーラ「あ、手伝うわよ」
ミンシア「ちょっと待ちなさい!ふふふ。この情報を聞いても、そんな態度をしてられるかしら?」
ミンシア「実は、なんと、舞踏会を開いて、王子がそこで直接嫁を探すらしいわ!」
カーラ「ふーん」
シーラ「へー」
シンデレラ「なんだ、そんな話か」
ミンシア「期待外れのリアクション」
シーラ「お母さん、同じだよ。直接選ぶって言っても、私たちが選ばれるわけないわ」
カーラ「そうそう。お母さん、ちゃんと現実は見ないとダメよ」
ミンシア「我が娘たちながら、ドライ過ぎて、お母さん、ちょっと引いたわ」
シンデレラ「さてと、洗濯洗濯」
ミンシア「シンデレラ、ちょっとそこで待ってなさい!」
シンデレラ「・・・ なんだよ?」
ミンシア「シーラ、カーラ、ちょっと来なさい」
  ミンシアとシーラ、カーラが少し離れたと
  ころでひそひそ話をする。
ミンシア「これはチャンスだと思うの」
カーラ「だから、お母さん、現実を見てって」
シーラ「・・・あ!」
ミンシア「ふふ、シーラは気づいたようね」
カーラ「どういうこと?」
シーラ「シンデレラのことね?」
ミンシア「そう!あの子の容姿なら間違いなく選ばれると思うの」
ミンシア「あ、もちろん、あなたたちにもチャンスはあると思うわよ」
カーラ「そういう気遣いは、いいから」
ミンシア「・・・ と、とにかく、なんとしてでもシンデレラを今度の舞踏会に連れていくの」
ミンシア「さすがのシンデレラも王子の命令なら、嫁に行くはずだわ」
ミンシア「これは、シンデレラが結婚できる、一生で一度あるかないかの大チャンスなのよ」
シーラ「でも、シンデレラが素直に行くかしら」
ミンシア「ふふふ。私に秘策があるわ。まずは、シーラ、あなたが行きます!って手を挙げるの」
ミンシア「それを見て、カーラが慌てて、私が行くって手を挙げる」
ミンシア「そしたら、シンデレラも慌てて手を挙げるから、二人で、どーぞどーぞと譲るのよ。いいわね」
シーラ「わかったわ」
シンデレラ「なあ、なにこそこそ話してんだ?」
ミンシア「舞踏会に行きたい人、挙手!」
シーラ「はい!私、行きます!」
カーラ「いや、私が行きます!」
シンデレラ「いってらっしゃい。楽しんで来いよ」
シーラ「どーぞどーぞって、あれ?」
  家を出て行ってしまう、シンデレラ。
カーラ「お母さん、話が違うんだけど・・・」
ミンシア「くぅ・・・ ・・・ 。見てらっしゃい、シンデレラ」
ミンシア「必ず、あなたを舞踏会に参加させてみせるわ!」
  前編 終わり。

次のエピソード:私の名前はシンデレラ 中編

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