愛をくれた人と別れるとき

再始動の準備中

「さあ、この恋の契約を終わらせましょう」(脚本)

愛をくれた人と別れるとき

再始動の準備中

今すぐ読む

 愛をくれた人と別れるとき
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇貴族の部屋
ノア「清掃終了っ!」
ノア「埃ひとつない部屋に仕上げるなんて」
ノア「完璧すぎる自分が怖いくらい」
ノア「そう・・・・・・」
ノア「怖いくらい」
ノア「世界が綺麗」

〇ファンタジーの学園
「ご婚約おめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
ルトラール「あの子は、どこにいる?」
「あの手伝い人形のことでしょうか?」
「ルトラール様の部屋を掃除されている頃だと・・・・・・」
ルトラール「部屋に戻る」

〇貴族の部屋
ルトラール「セツナ!」
ノア(ルトラール様!?)
ノア「お帰りなさいませ」
ノア「どこかのご令嬢と婚約されたことは伺っています」
ノア「主様に仕えていた時間だけは長いのに・・・・・・」
ノア「ルトラール様と添い遂げる女性のことを存じ上げずに申し訳ございません」
ノア「ご婚約おめでとうございます」
ルトラール「・・・・・・ありがとう」
ルトラール「どうして腕組みを?」
ノア「っ」
ノア「ルトラール様の真似をしてみました」
ルトラール「・・・・・・セツナから見た私は」
ルトラール「そんなに偉そうなのか?」
ノア「はい」
ノア「いつかは捨てられてしまう手伝い人形の私に」
ノア「名前を与えてくれた主様」
ノア「偉そうで、偉そうで、とても偉そうで」
ノア「手伝い人形の私は」
ノア「呼吸をするのも苦しくなります」
ルトラール「・・・・・・次からは気をつけよう」
ノア「主様が気をつけることなどありません」
ノア「主様は、主様であってください」
ノア「これから先も」
ノア「ずっと」
ルトラール「その言葉は」
ルトラール「そっくりそのまま君に返す」
ルトラール「君も、君のままでいてくれ」
ノア「それは・・・・・・」
ノア「偉そうな主様を忘れるな、という命令でしょうか」
ルトラール「私のことは忘れてくれて構わない」
ノア「・・・・・・・・・・・・」
ルトラール「その強気な姿勢を・・・・・・」
ルトラール「その、前を向くための強さを」
ルトラール「未来を美しくするための強さを」
ルトラール「どうか忘れないでほしい」
ノア「それが主様の命令であるのなら」
ノア「私は、それに従うまでです」
ルトラール「セツナ」
ノア(この声で名前を呼ばれるのも)
ルトラール「セツナ、私は・・・・・・」
ノア(この声を聞くのも)
ノア「お世話になりました」
ノア(今日が最後)
ノア「手を、掴んでくださるのですね」
ルトラール「手を掴んだところで、君は相変わらず表情ひとつ変えてくれないな」
ノア「主様の手を払い除けることが、手伝い人形のあるべき姿です」
ルトラール「・・・・・・そうだったな」
ルトラール「君は、数多くの手伝い人形たちの見本となるべき存在だ」
ノア「私にも・・・・・・」
ノア「令嬢のような恋の物語を綴らせてくださり」
ノア「ありがとうございました」
ルトラール「・・・・・・ありがとう」
  共に生きてくれて
  未来を、祈ってくれて

〇雪山の森の中
ノア「雪景色なのに花びらが舞うとか・・・・・・」
ノア「自然にも祝福される婚約なんて」
ノア「さすがは私の主様!」
ノア「・・・・・・・・・・・・」

〇貴族の部屋
ルトラール「セツナ」
ルトラール「私の前では、感情を曝け出してほしい」

〇雪山の森の中
ノア(私は主様の前で)
ノア(感情を捨てなければいけない)
ノア「それが」
ノア「手伝い人形のあるべき姿」

〇雪山の森の中
「ノアちゃーん!」
「待ってー!」
ルリハ「どうかな? どうかな? この洋服?」
ノア「ルリハのための贈り物って感じ」
ルリハ「だよね~」
ルリハ「今回も素敵なご主人様だったなぁ」
ルリハ「ノアちゃんはノアちゃんで、物凄く寒そう」
ノア「主様が魔法に長けていた人だったから、そんなに寒くはないかな」
ルリハ「魔法加工された服って、高く売れそうじゃない!?」
ノア「残念ながら、売る予定はありません」
ルリハ「はいはい」
ルリハ「ノアちゃんは、古き良き手伝い人形ですからね」
ノア「ご馳走してあげるから、機嫌直して?」
ルリハ「そうこなくっちゃ!」
ルリハ「私もノアちゃんみたいに、手伝い人形の真似が上手くなりたい」
ルリハ「この賃金格差をなんとかしないと・・・・・・」
ノア「お願いします」
ノア「人形は、いつか動かなくなるから」
ノア「修理もできなくなる時代が、必ずやって来るから」
ノア「私たちは、使い古されて終わり」
ノア「消耗品と同じ」

〇雪山の森の中
ノア「太陽の光・・・・・・」
ルリハ「おまけに花びら付き」
ルリハ「きっと」
ルリハ「ノアちゃんの卒業を祝福してくれているんだね」
ノア「長く働かせてもらったことには感謝しているけど・・・・・・」
ノア「卒業って言い方は大袈裟」
ルリハ「大袈裟なんかじゃないよ」
ルリハ「大好きなご主人様から卒業する覚悟を決めたノアちゃんは」
ルリハ「最高にかっこいい手伝い人形だよ」
ノア「・・・・・・・・・・・・」
ルリハ「ノアちゃんのご主人様は」
ルリハ「人が、手伝い人形の文化を引き継いでいることに気づいたんだね」
ノア「どうして?」
ルリハ「ノアちゃんの表情が」
ルリハ「とっても綺麗だから!」
ルリハ「私たちに感情が不要なのは、人間だって見抜かれないためだけど」
ノア「それくらい承知して・・・・・・」
ルリハ「今のノアちゃんは人だよ! 人間だよ!」
ルリハ「感情を曝け出してもいいんだよ」
ルリハ「手伝い人形の伝承者さん」

〇噴水広場
ノア(ルトラール様が来ない・・・・・・)
ノア(そろそろ迎えに・・・・・・)
ルトラール「待たせて、すまなかった」
ノア「いえ」
ノア「主様が無事なら何も問題はありません」
ルトラール「君への贈り物を探していたら、こんな時間になってしまった」
ノア「・・・・・・ありがとうございます」
ルトラール「・・・・・・ははっ」
ノア「何か?」
ルトラール「いや・・・・・・」
ルトラール「君は君らしいなと思ってね」
ノア「・・・・・・・・・・・・」
ノア「・・・・・・美しい花ですね」
ルトラール「美しいものは苦手かい?」
ノア「私は手伝い人形なので」
ノア「得意も苦手もありません」
ルトラール「君は、手伝い人形の鏡だな」
ノア「身に余る光栄です」
ルトラール「・・・・・・ははっ」
ノア「何か面白いことでも?」
ルトラール「いや」
ルトラール「私は、ただ君が傍にいてくれるだけで・・・・・・」

〇雪山の森の中
ノア「ちょっと・・・・・・」
ノア「花びらの量、可笑しくない!?」
ルリハ「だね」
ノア「くすっ」
ルリハ「ふふっ」
ノア「美味しい食事に、高級宿屋をおまけしてあげる」
ルリハ「やった!」
ノア(触れたくない心がある)
ノア(触れたら、壊れそうになるから)
ノア(私が完全に壊れてしまう前に)
ノア(私は『この』感情から卒業する)
ノア「本当に・・・・・・」
ノア「世界が美しすぎて、嫌になる」
ルリハ「ノアちゃーん!」
ルリハ「早く、早く」
ノア(主様)

〇噴水広場
ルトラール「ノ・・・・・・」
ルトラール(名前を呼ぶのも許されない、か)
ルトラール「そろそろ屋敷に戻る・・・・・・」
ルトラール「・・・・・・綺麗だ」
  ノア

〇雪山の森の中
ノア「どうかお幸せに」

コメント

  • いくら表情で気持ちを押し殺したとしても、奥底から溢れてしまう仕草が微笑ましく美しいですね☺️
    美少女絵も風景も全部綺麗にマッチしてて、気持ちいい読了感の残るお話でした👏

  • ノアちゃんが自身の立場を十分考慮しながら主様を大切にされているところが、人形という愛らしい存在感とうまく相乗していて物語に深みを感じました。

  • 「あなたのための贈り物って感じ」っていいセリフですね
    繊細な女の子の生の内省に触れた気になりました

成分キーワード

ページTOPへ