桴投人—✖︎トウニン

サトJun(サトウ純子)

桴投人—✖︎トウニン(脚本)

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〇街中の道路
友人A「平らなところでいきなりコケたから、ビックリしたわ」
八草祥太郎「いや、いきなり棒が飛んできたんだよ。 避けようとして転んだんだって!」
友人B「そんな棒、無かったけどなー」
八草祥太郎「ヒュッて。 ドラムのスティックぐらいのヤツ!」
友人A「落ちた音もしなかったけどな。 後ろを歩いていた女子たち、笑ってたぜ」
八草祥太郎「マジかー」
  俺は、確かに見た。

〇大きい交差点
八草祥太郎「信号待ちをしている時、 道路の向こう側にいた女子」
八草祥太郎「信号が青になって、俺たちが歩き始めた時に」
  ──『投げてきた』

〇街中の道路
友人B「まー、怪我したわけじゃないから、良かったんじゃね?」
友人A「かなり、格好悪い転び方してたけどな!」
八草祥太郎「うるせーよ!」
八草祥太郎「うちの学校の制服だった。 それも、かなり美人な子」
八草祥太郎「なのに、俺が頭を上げた時には、もう、その姿はなかった」
八草祥太郎「なぁ、道の向こう側に、うちの制服の女子、いたよな?」
友人B「ん?いや、気にならなかったけど。いたっけ?」
友人A「いや?気づかんかった」
八草祥太郎「そうなん?あんだけの美人なら、絶対気付いてると思ったのに」
友人A「え?何? その子に見惚れてコケたのか?」
友人B「だっせぇー」
  ──俺は、幻を見たのか?
  でも、俺は、それが幻でなかった事を
  すぐ知る事となった。

〇教室の教壇
  次の日の昼休み。
  俺は、焼きそばパンを買い損なった。
  原因はまた、あの女子だった。
八草祥太郎「教室の後ろの入り口から、いきなり棒が飛んできて。慌てて顔を両手で庇った結果がこれ」
八草祥太郎「その棒は、財布を手にしていた俺の手を直撃し、財布が窓の外に飛んでいったのだ」
八草祥太郎「投げてきたのは、あの子だった」
八草祥太郎「おまけに」
八草祥太郎「棒が当たった瞬間。指の隙間から、彼女が小さくガッツポーズをしているのが見えた」
八草祥太郎「いったい、なんなんだ」

〇街中の道路
友人A「部活引退してから、お前、なんかおじいちゃんみたいな動きになってきたからなー」
八草祥太郎「また、周りにはその棒が見えていなかった」
八草祥太郎「まーな。 正直、ポッカリ穴が空いた気分だからな」
友人B「仕方がないよな。元野球部員は」
八草祥太郎「あ、ちょ、俺。忘れ物してきたわ。 先帰ってて!」
「また、転ぶぞー!」
  ──見つけた!
  特進クラスの女子
  ──桴海桃花。

〇川沿いの公園
八草祥太郎「おい!」
桴海桃花「な、なにっ?」
八草祥太郎「おまえ、俺にヘンテコな棒を投げてきただろ!」
桴海桃花「・・・」
桴海桃花「へぇ。やっぱり見えてたんだ。 あなた、目が良いのね」
八草祥太郎「俺は昔から「よく球が見えてる」って言われていたからな!」
八草祥太郎「・・・じゃなくて。 なんでそんな事するんだよ。危ないだろ!?」
桴海桃花「仕方がないじゃない! リストに名前が載ってたんだから」
八草祥太郎「・・・リスト?」
桴海桃花「ほら。ここに『八草祥太郎』って書いてあるでしょ?」
桴海桃花「そう!ちなみに『母親への暴言』って書いてあるわ」
桴海桃花「先に悪い事したのはそっちでしょ!」
八草祥太郎「そ、それと棒を投げつける事と何の関係があるんだよ!」
桴海桃花「関係大アリよ。『バチをあてる』のが私の役目なんだから」
  桃花は、カバンから例の棒を取り出した。
八草祥太郎「まあ、確かに、バチがあたるような事を母さんに言ったのは覚えてる・・・」
八草祥太郎「でも、もう先月の話だぜ?」
八草祥太郎「なんで、今更・・・」
桴海桃花「あ・・・それは・・・そのぉ・・・」
桴海桃花「・・・」
桴海桃花「なかなかあてられなかった・・・から」
八草祥太郎「はぁ?」
桴海桃花「だから・・・そのぉ・・・」
桴海桃花「・・・」
桴海桃花「な、投げるの下手なの!なんか文句ある!?」
  桃花は、顔を赤らめながら横を向いた。
八草祥太郎「それ、ダメだろ。あんまり間が開くと、なんのバチがあたったのかわからん」
桴海桃花「あなたにあてたのは、この桴(バチ)よ」
八草祥太郎「いや、そういう事じゃなくて・・・」
桴海桃花「と、とにかく、私はリストに載っている人に桴をあてればいいんだから、理由とかどうでもいいわ」
八草祥太郎「・・・」
八草祥太郎「その桴、重いの?・・・あれ?」
桴海桃花「あ、これは桴投人(バチトウニン)じゃないと持てないの」
桴海桃花「小太鼓の桴の半分くらいの重さかな」
八草祥太郎「あたった時、わりと衝撃あったけどな」
桴海桃花「あたる瞬間だけ重くなるの。 その罰の重さによってね」
八草祥太郎「なるほど!」
  祥太郎は、いきなり桃花の腕を掴んだ。
桴海桃花「な、なにするのよ!?」
八草祥太郎「あ、ごめん。人間なんだよね?」
桴海桃花「人間に決まっているじゃない!神様だったらもっと上手にあてるわよ!」
八草祥太郎「あ、確かに!」
桴海桃花「・・・」
桴海桃花「うちの家系は代々桴投人(バチトウニン)として軽い罰を引き受けているんだけど、私は向いてないと思うのよね」
八草祥太郎「ノーコンだからな!」
桴海桃花「もぉ、好きでノーコンやってるわけじゃないわ!」
八草祥太郎「じゃ、練習はしてるのか?」
桴海桃花「・・・」
桴海桃花「本番でいっぱい投げてるから、練習なんて必要ないでしょ」
八草祥太郎「あー、そんなんだから、うまくならないんだよ」
八草祥太郎「・・・」
八草祥太郎「よし、わかった!今から特訓しよう」
八草祥太郎「俺、元野球部だから、投げるのは得意なんだ」
桴海桃花「えー、面倒くさっ」
八草祥太郎「そのままでいいのか?一生ノーコンだぞ?」
桴海桃花「・・・」

〇大学の広場
八草祥太郎「まず。桴を投げる時、上から振る?横から振る?」
桴海桃花「うーん・・・」
桴海桃花「その時によるかな」
八草祥太郎「モノを投げる時は、リリースポイントが大事なんだよ」
桴海桃花「リリー・・・なに?それ」
八草祥太郎「棒が手から離れる位置な!」
八草祥太郎「つまり、上から投げるなら、離すのが早すぎると上に飛ぶし、遅いと下に向かう」
桴海桃花「なるほど。確かに」
八草祥太郎「それを安定させる為には、下半身の安定も大事だから、体幹を鍛えないと」
桴海桃花「えー。野球部みたいに走ったり、筋トレしなきゃダメ?」
八草祥太郎「お?なんだ、野球部がやってること、知ってるじゃん」
桴海桃花「・・・時々、屋上から見てたから」
八草祥太郎「・・・えっ?」
「・・・」
八草祥太郎「・・・なぁ。格好良く投げられたら 気分良くない?」
桴海桃花「うん・・・」
八草祥太郎「練習、付き合ってやっから。 頑張ってみようよ!」
桴海桃花「・・・うん!」

コメント

  • バチが当たるって、物理的なものだったのか……😂
    ぶっ飛んだ世界観でしたが、さすが高校生。どんな所からでもラブの気配が芽生えるものですね 笑
    表情豊かな桃花ちゃんが可愛かったです✨

  • バチってこうやって当たるのか……と、妙に納得しちゃいました🤣🤣🤣祥太郎にだけ見えたのも、彼の動体視力の良さだったのですね(さすが元野球部!)
    まさにバチ当たり。斬新な設定で楽しませていただきました😆🙌

  • バチを与えた側と受けた側が一緒になって練習って、、、大らかで優しい世界にニヤニヤしてしまいます!この短編の世界の中に、2人の魅力や今後の可能性とかがいっぱい詰まっていて、心が湧き立つ読後感です!

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