お義母さまといっしょ!? ~転生したら姑もいた件~

美野哲郎

エピソード3 王妃の国(脚本)

お義母さまといっしょ!? ~転生したら姑もいた件~

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〇飲み屋街
古手川優介「杏 俺と結婚してくれ」

〇稽古場
  児童養護施設を出て、
  仕事の合間に入った小さな劇団
  そこで出会った初めての恋人は、私と同じように身寄りのない青年・優介だった

〇ファミリーレストランの店内
  やがて私が個性派枠の脇役として
  少しずつメディアに露出し始めると
  彼はいきなり結婚を申し出て
  私を自分の籠の中に閉じ込めようとした

〇飲み屋街
古手川優介「君と初めての、 本当の家族になれたら嬉しい」
倉木杏「──!!」
  その醜い嫉妬心さえ、どこか可愛くて
  つい許せてしまう自分がいた

〇屋敷の門
  だが彼は隠していたのだ
  自分が飛びだした、実家の存在を──

〇貴族の応接間
ジョディ・フローレンス「アン ──アン?」
アンジェリカ・ロウリー「は、はい──アンジェリカめはここに ごきげんよう 王妃様」
ジョディ・フローレンス「従者はいっぱしの挨拶などせず 呼ばれる前に主人の傍に傅いているものですよ」
アンジェリカ・ロウリー「これは大変失礼いたしました」
アンジェリカ・ロウリー「わたくし ”王妃から”申し付かった通り ”夜明け前より”果樹園で 収穫のお手伝いをしておりましたもので」
ジョディ・フローレンス「そう 熱心なことね でもそれは 従者が主人の朝の支度に間に合わない 言い訳にはならないのではなくて?」
アンジェリカ・ロウリー(いや なるだろうが!? アンタが命じたんだよ)
アンジェリカ・ロウリー(私の体は一つしかないんだよ!!)
アンジェリカ・ロウリー「ええ まったく仰る通りでした 反省いたします」
アンジェリカ・ロウリー「少しでも早くヒース様の婚約者として 認められるよう 時間の管理に於いても より厳しく己を律していかなければ」
ジョディ・フローレンス「まあ つまり貴女はまだまだ 多くの仕事を望んでいるのね?」
アンジェリカ・ロウリー「え?」
ジョディ・フローレンス「ちょうど先日 メイド長が腰を痛めて いとまを出したところなの」
ジョディ・フローレンス「これからは回廊の窓のすす払いに 西塔のランタン磨き」
ジョディ・フローレンス「それとそうね 少しは調理も覚えなさい 厨房を手伝って  どれも毎日欠かさずあなたがするのよ」
ジョディ・フローレンス「いいわね? アン」
アンジェリカ・ロウリー「・・・・・・」
ジョディ・フローレンス「・・・フッ」
アンジェリカ・ロウリー「ええ 喜んで!」
ジョディ・フローレンス「──」
アンジェリカ・ロウリー「それはとっても素敵ですわ 窓から覗く庭園の美しい景色も」
アンジェリカ・ロウリー「色鮮やかなガラス細工を施された ランタンの造形も」
アンジェリカ・ロウリー「わたくし  すっかり魅了されていますもの!」
ジョディ・フローレンス「魅了されるのは貴女ではなく 貴賓の皆々様であれば良いのです」
ジョディ・フローレンス「今のあなたはただ無心になって この私のお城に──いえ」
ジョディ・フローレンス「グリーンヒルド公国公城に奉仕すれば それで良いのですよ」
アンジェリカ・ロウリー「ええ ええ その為でしたらなんなりと」
アンジェリカ・ロウリー「そして雇用契約を交わした期間 ご命令を全うし続けたその暁には──」
アンジェリカ・ロウリー「きっとジョディ王妃様もわたくしの ヒース皇太子への そしてこの国への 愛と献身を 理解して下さることでしょう」
ジョディ・フローレンス「──」
アンジェリカ・ロウリー「──」
アンジェリカ・ロウリー(もう負けない 私は今度こそ ──悪魔の姑なんかに・・・)

〇洋館の廊下
ヒース・フローレンス(はわわわ・・・ ごめん ごめんよアンジェリカ)
ヒース・フローレンス(そんなに僕を愛してくれていたなんて)
ヒース・フローレンス(どうか一年間耐えてくれ 僕は ずっと待ってるからね──)

〇荒廃した市街地
クリント「城下町の最下層でも 一歩路地を曲がればこんなもの か」
クリント「異邦人が隠れるとしたら この辺だろうと踏んだが どうやら正解・・・」
  ヒュー・・・
クリント(なんだ? 風の音が鋭く)
アンジェリカ・ロウリー「クリントー? ねえ どこ 急いで抜け出してきたの」
アンジェリカ・ロウリー「すぐに厨房に戻らなきゃ 私・・・」
  ザッ・・・
ノーヴル男爵「これはこれは  貴族様がこのような場所へ何用で?」
アンジェリカ・ロウリー「・・・そう やはりまだ残っていたの」
アンジェリカ・ロウリー(クリントのバカ 捕まったのね)
ノーヴル男爵「恐らくアンタを仕留めないことには こちらの計画は進まないと踏んだのさ」
  ザザザ・・・
アンジェリカ・ロウリー「なるほど 城で出くわした時より 生き霊たちの魔力が濃いわ」
アンジェリカ・ロウリー「それで? ここでなら負けないと?」
ノーヴル男爵「お手合わせ 願えますかな」
アンジェリカ・ロウリー「そうする他 ないのでしょう?」

〇グレー
???「目標捕捉」

〇荒廃した市街地

〇グレー
???「鋼のアルケミー 錬成完了」
???「加えて風のエナジー」
???「我が鼓動よ──奴の心臓を穿て」

〇荒廃した市街地

〇荒廃した市街地
アンジェリカ・ロウリー(遠くで風向きが変わった──)
アンジェリカ・ロウリー「──来る」
ノーヴル男爵「(・・・ニヤリ)」
アンジェリカ・ロウリー「緑のアルケミー」
ノーヴル男爵「またしても! 即席の錬金術 この速度は尋常ではないぞ」

〇グレー
???「弾いた! ってのか???」
???「どれだけの反射と錬成速度だよ」

〇荒廃した市街地
アンジェリカ・ロウリー「恐らく私をここに釘付けにして 遠方攻撃で瞬殺、でも狙っていたのかしら」
アンジェリカ・ロウリー(まあ ”瞬間”と呼ぶにはほど遠い 遅さだったけれど)
アンジェリカ・ロウリー(現世の記憶が甦ってみると すいぶんバカな世界ね)
アンジェリカ・ロウリー(一部の持てる者が魔法に現を抜かすより 銃器の精度を高めていたら危なかった)
アンジェリカ・ロウリー「さあ さっさと人質を放して 今度こそ観念なさいクソったれ」
ノーヴル男爵「へへ そっちこそ本性見えてきたな なるほどアンタには敵わなそうだ」
クリント「──」
ノーヴル男爵「だがこちらの人質は そう俊敏には先の攻撃を避けられまい」
アンジェリカ・ロウリー「青のアルケミー!!」
ノーヴル男爵「なっ!?」

〇荒廃した市街地
ノーヴル男爵「雨粒が 無数の弾丸に──!?」
アンジェリカ・ロウリー「ごめんなさいね 雨の野外って 錬金術師が最も強いフィールドなんだ」
ノーヴル男爵「そんな話 聞いたことが」
アンジェリカ・ロウリー「えいっ!!」
ノーヴル男爵「ぐわあああ」
ノーヴル男爵「くっ・・・ 何故だ・・・」

〇荒廃した市街地
アンジェリカ・ロウリー「雨は最強のフィールド・・・ただし その錬金術師が天才だった場合に限る」
アンジェリカ・ロウリー「いえ 最後の”何故だ”は違うわね 協力者がクリントを撃たなかった 一体どうして・・・?」
アンジェリカ・ロウリー「ま どのみち私の雨粒の弾丸に 軌道を逸らされていたでしょうけど」
アンジェリカ・ロウリー「はぁ・・・こちとらお義母さまの ・・・じゃなかった 王妃の命令で手一杯だって言うのに」
クリント「う う~ん」
アンジェリカ・ロウリー「さ クリント とっとと帰るわよ この手土産で 従者としての契約期間を縮めさせてやる」
  ザッ・・・
アンジェリカ・ロウリー「誰!?」
リリィ「あ・・・あの」
アンジェリカ・ロウリー「まあ ごめんなさい 他に人がいたなんて気づかなかったわ」
アンジェリカ・ロウリー「どこか 怪我はしてない?」
リリィ「ううん そうじゃなくて 何か 食べ物を恵んでくれませんか」
リリィ「孤児院の一番ちいさな子が 昨日から空腹で動けないの」
アンジェリカ・ロウリー「孤児院・・・・・・」

〇中庭

〇荒廃した市街地
アンジェリカ・ロウリー「グリーンヒルド公国は 決して貧しい小国ではない筈」
アンジェリカ・ロウリー「王妃 自分の美と権威を保つためなら 一銭だって惜しまないのに」
アンジェリカ・ロウリー(異世界に転生しても 性根は変わらないって訳かしら)
ノーヴル男爵「くっ ・・・そうさ 貴族様にはわかるまい これが現実」
ノーヴル男爵「どんなに頭が富で潤っていても 組織の末端にまで血液の循環していない社会は いずれ腐り落ちる運命だ」
ノーヴル男爵「あの王妃が死ねば 国民には 今より豊かな暮らしが約束されるのさ」
アンジェリカ・ロウリー「あなた 一体何者なの?」
ノーヴル男爵「公国とは名ばかり 実質的な独裁者を 体を張ってまで守る価値があるのか?」
アンジェリカ・ロウリー「・・・・・・」
アンジェリカ・ロウリー「いえ こう訊ねるわね」
アンジェリカ・ロウリー「あなた一体── ”誰に 王妃殺害を依頼されたの?”」

〇西洋の城

〇洋館の玄関ホール
ジョディ・フローレンス「初めまして 遠路はるばる ようこそおいで下さいました」
ジョディ・フローレンス「もう少し早いお付きでしたら とても見物な鉢合わせが起こりましたのに」
ジョディ・フローレンス「口惜しいことですわ── ユーフォスティ王国 第三皇子」
  ──カイザル様

次のエピソード:エピソード4 その憎しみは輪廻する

コメント

  • あれだけの実力がありながら王妃の寝首をかけないのがやはりわからない。これはプレイじゃなかろうかと思えてきますね。暗殺者だちがやろうとしていることをアンは出来るはずなんですよね。

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