心臓の音が聴こえる

ユーキ

食卓にて 08:30(脚本)

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ユーキ

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〇ダイニング
「いただきます」
  目の前には白いご飯、鮭の切り身に、いい匂いのする味噌汁と里芋のにっころがし。
  結局睡魔には抗えずそのまま小一時間ほど添い寝へとしけ込んでいたが、また温め直してくれたらしい
  湯気をたてるそれらに口角が上がるのを抑えられない
柏木 ユーキ「なにニヤニヤしてるの、気持ち悪い」
柏木 マコト「いやー?わざわざ温め直してくれるなんて、愛されてるなぁ~って」
柏木 ユーキ「これは・・・たまたま冷めてなかっただけだし・・・!」
柏木 マコト「へぇ~?」
柏木 ユーキ「・・・・・・いいからさっさと食え、バカ」
  季節は冬なのに"たまたま"冷めてなかったと言い訳をし、赤くなっているであろう顔を背けるユーキ
柏木 マコト(可愛いなぁ・・・)
  いつも通りの食卓に、いつも通りユーキが居て、それがとても愛おしい
柏木 マコト「・・・そういえばふたりは?」
  不意にそんな言葉が口から溢れた
柏木 ユーキ「ここにはいないよ」
柏木 マコト「ここには?」
柏木 ユーキ「うん」
柏木 マコト「ふぅん・・・」
  "ここには"いない"ふたり"・・・・・・?
  自分で口に出しておいておかしな話だが、生憎と思い当たる人物はいない
柏木 ユーキ「・・・・・・?」
  もともとここには自分とユーキしかいないはずなのだ。
柏木 ユーキ「・・・・・・コト!」
  しかし知っていなければ口になどできないはずで・・・
柏木 ユーキ「マコトッ!」
柏木 マコト「うわっ!なに?!」
柏木 ユーキ「それはこっちの台詞! どうしたのぼーっとしてマコトらしく・・・ はあるけど」
柏木 マコト「あんの?!」
柏木 ユーキ「まあね~」
柏木 マコト「ひどっ!」
柏木 ユーキ「・・・ねぇ、マコト」
柏木 マコト「ん~?」
柏木 ユーキ「あの時の約束は覚えてる?」
柏木 マコト「・・・?約束?」
柏木 ユーキ「・・・いや、やっぱいいや」
柏木 マコト「・・・今朝から変なのお前」
柏木 ユーキ「・・・・・・」
  だんまりを決め込んで食事を再開
  しまった・・・
  こうなったらもう何を言っても口を割らないだろうし、早々に話題を変えるに限る
柏木 マコト「・・・変といえば、最近似たような夢ばっか見るんだよ!」
柏木 ユーキ「・・・どんな?」
柏木 マコト(よし!食い付いた!)
柏木 マコト「誰かにずっと名前呼ばれている夢なんだけどさ・・・」
柏木 ユーキ「・・・怪談だね」
柏木 マコト「やっぱそう思う? うわあどうしよう。・・・お祓いかな?」
柏木 ユーキ「別に怪異のせいって決まったわけじゃないけどね」
柏木 マコト「悪夢見せるなんて悪霊以外ないって!」
柏木 ユーキ「悪夢と決まった訳でもないでしょ・・・」
柏木 マコト「いや絶対悪夢だよ! あんな居心地の悪い夢!」
柏木 ユーキ「・・・案外、マコトの待ち人たちだったりしてね」
  そう言うユーキはどこか寂しそうで、なぜか漠然とした不安に駆られる
柏木 ユーキ「・・・いや、何でもない」
柏木 マコト「なんか、今日のお前おかしくて調子が狂うわ」
柏木 ユーキ「ごめんって」
  しかしその答え探しは今はしない
  違和感の正体は、不安になる原因はユーキがいつもと違うせいだと結論付ける
  結局俺は臆病者なのだ
  現実を直視することから逃げ続けている、臆病者。
「ごちそうさまでした」

〇黒
  食後のひとこま

〇ダイニング
柏木 ユーキ「~♪」
柏木 マコト「あのー、ユーキさん・・・」
柏木 ユーキ「んー?」
柏木 マコト「・・・なにしてんの?」
柏木 ユーキ「マコトの髪をいじっています」
柏木 マコト「それはわかるんだけど・・・」
柏木 ユーキ「夫の髪をいじってる」
柏木 マコト「俺が聞きたいのはその理由なんだけど・・・」
柏木 ユーキ「好きな人の髪をいじってる」
柏木 マコト「・・・・・・!」
柏木 ユーキ「あ、耳赤くなった」
柏木 マコト「うるせぇ・・・」
柏木 ユーキ「髪、伸びたね そろそろ切ったら?」
柏木 マコト「・・・そのうち。面倒くさいし」
柏木 ユーキ「だからってずっとこんなとこにいちゃダメだよ」
柏木 マコト「こんなところ・・・?」
柏木 ユーキ「ごめん。忘れて。 ・・・後片付けしないと」
  そう言って台所へ去っていくユーキ
柏木 マコト「やっぱり、調子が狂うんだよなぁ・・・」
  ユーキに触られたところをいじる
柏木 マコト「・・・・・・」
  熱を持った顔にも気付かないフリをした

次のエピソード:居間にて 14:30

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