心臓の音が聴こえる

ユーキ

寝室にて 06:45(脚本)

心臓の音が聴こえる

ユーキ

今すぐ読む

心臓の音が聴こえる
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇男の子の一人部屋
柏木 マコト「やっぱ、布団だよなぁ・・・」
  時刻は午前6:45
  いつも起きる時間より15分も早い
  それに加えて、布団の中のこのぬくもり
  外気は身体の芯まで凍らすかのような凶悪さだというのに、布を隔てただけで雲泥の差、あっちは地獄こっちは──
柏木 マコト(まさにヴァルハラだな・・・)
  そう、だから目が覚めてからなかなか起き上がれないとしても悪いのは全てこの布団。
  1度取り込んだら離さない・・・・・・
柏木 マコト(ぬくい、ぬくい・・・)
柏木 マコト「って、冷たッ!」
柏木 ユーキ「・・・起きた?」
柏木 マコト「起きたっていうか起こされたんデスケド! なにお前、冷た!」
柏木 ユーキ「そりゃ今まで寒ーい台所でご飯作ってましたからねー」
  ガサゴソ・・・
柏木 マコト「だからって布団に潜り込む奴があるか!」
柏木 ユーキ「いつまでも惰眠を貪ってるマコトが悪い」
柏木 マコト「ちょ、おまっ!ユーキ!引っ付くな冷たい!」
  寝間着に差し込まれた手は氷の様に冷たく、ぶるりと背が震える
  しかし数十秒ほど経って、その震えは寒さによるものだけでなく、ユーキの手の震えが指先から伝わったものだと気が付く
柏木 マコト「・・・何、なにかあった?」
柏木 ユーキ「別に・・・マコトの心臓の音が聴きたくなっただけ。気にしないで」
柏木 マコト「気にするなって言われても・・・ お前そんなキャラだったっけ?」
柏木 ユーキ「静かにしてて」
柏木 マコト「はあ・・・」
  精一杯の困惑した声を出しても微動だにしないユーキ
柏木 ユーキ「・・・ぐぅ」
  あろうことか寝やがった
柏木 マコト「仰せのままに、”御姫様”」
  全くこの我が儘お嬢様は・・・
柏木 マコト「・・・・・・」
  安らかな寝息をたてるユーキを見て、
  俺も諦めたようにまた意識を手放した

〇黒
  「起きないね。」
  起きないね。・・・いつになったら起きるんだろう
  いつまで寝てるんだろうね
  早く、目を覚まさないかな・・・?
  ねぇ、ぉ・・・・・・さ・・・
  『早く、起きて。』

次のエピソード:食卓にて 08:30

コメント

  • 暑い夏は冬の冷たい空気が恋しいものですが、そのシーズンが来ると布団の暖かさが身にしみますね。どこにでもいそうな若い夫婦のやりとりから、心が温まりました。

成分キーワード

ページTOPへ