ブリキの動物園

澤井 軽野

エピソード2(脚本)

ブリキの動物園

澤井 軽野

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〇シックな玄関
  家のドアに貼られていた1枚の紙──
  そこには赤い字で
  『出ていけ 十八年前の事件を知っている』と殴り書かれていた
片瀬 英司(かたせ えいじ)「これがドアの外に──?」
片瀬 舞(かたせ まい)「ええ──」
片瀬 舞(かたせ まい)「あなた家に居たんでしょ?気付かなかったの?」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「なっ!ぼ、僕が悪いっていうのか!?」
片瀬 舞(かたせ まい)「え!? い、いえ、別にそんなつもりは──」
片瀬 舞(かたせ まい)「ごめんなさい。ただ、何か気付いた事はなかったかなって──」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「──」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「あ、ああ」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「特に物音とかはしなかったかな」
片瀬 舞(かたせ まい)「そ、そうよね」
片瀬 舞(かたせ まい)(怒らせちゃった──言い方が気に障ったかな)
片瀬 英司(かたせ えいじ)「それにしても、どういう事だ?」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「18年前の事件って、君が暴行された事件の事だよな──?」
片瀬 舞(かたせ まい)「え、ええ、多分──」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「僕たちがここに引っ越してきた事と、それがどう関係あるんだ?」
片瀬 舞(かたせ まい)「さ、さあ──わからないわ」
片瀬 舞(かたせ まい)(英司には、この町が事件現場だって教えてないから、余計にわからないよね──)
片瀬 舞(かたせ まい)(でも、私だってわからない)
片瀬 舞(かたせ まい)(一体、誰が、どうしてこんな貼り紙を──?)
片瀬 英司(かたせ えいじ)「これ、誰かに見られてないかな」
片瀬 舞(かたせ まい)「わからないけど──」
片瀬 舞(かたせ まい)「通りからは見えなかったから、家に入ろうとしない限り気付きにくいと思う」
片瀬 舞(かたせ まい)「け、警察に相談した方がいいかな?」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「──町の人たちに歓迎されてない今、騒ぎを大きくするのは避けたい」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「君だって、事件の事を知られるのは嫌だろ?」
片瀬 舞(かたせ まい)「え、ええ──」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「なら警察は呼ばないでおこう」
片瀬 舞(かたせ まい)「そ、そうね──」
片瀬 舞(かたせ まい)「でも怖いわ、防犯カメラ付けましょうよ」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「防犯カメラはダメだ!」
片瀬 舞(かたせ まい)「えっ!?ど、どうして?」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「そ、それは──」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「ホラ、町の人を信用してないみたいで挑発的に見えるかも」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「町に受け入れてほしいのに、こちらがあまり物々しくするのも良くない」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「大丈夫、こんなのきっとただのイタズラだよ」
片瀬 舞(かたせ まい)「──」
片瀬 舞(かたせ まい)「そ、そうね、わかった」
片瀬 舞(かたせ まい)(ただのイタズラで18年前の事件を持ち出すとは思えない──)
片瀬 舞(かたせ まい)(でも、この英司の態度ではきっと何を言ってもムダだわ──)

〇部屋のベッド
片瀬 英司(かたせ えいじ)「それで、町内会に入れてもらう件はどうなった?」
片瀬 舞(かたせ まい)「会長はほとんど名前を貸してるだけで、タッチしてないらしいの」
片瀬 舞(かたせ まい)「それで一応話は通してくれるそうだけど、明日の夕方に集会があるらしくて」
片瀬 舞(かたせ まい)「そこに顔を出して、町内会の皆さんと話してみてって」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「そうか、じゃあ行ってみてくれ」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「僕は明日は初出勤で、帰りどうなるかわからないから」
片瀬 舞(かたせ まい)「わ、わかった」
片瀬 舞(かたせ まい)(町内会の人があの貼り紙をしたかもしれないのに、一人で行くのは怖いけど──)
片瀬 舞(かたせ まい)(英司も大変なんだし、仕方ないわ)
片瀬 舞(かたせ まい)(・・・?)
片瀬 舞(かたせ まい)(香水の匂い──私のじゃない)
片瀬 舞(かたせ まい)(昨日来た、お隣の泉さんの──?玄関からここまで匂いが来ちゃうのかしら)
片瀬 舞(かたせ まい)(何か嫌だな──)

〇住宅街
「・・・」

〇アパートの中庭
片瀬 舞(かたせ まい)「ここが町内会の集まりがある公民館──」
片瀬 舞(かたせ まい)「お、お邪魔します──」

〇広い更衣室(仕切り無し)
町の人「ええ、ですが──」
町の人「わかっとる、しかし──」
片瀬 舞(かたせ まい)「すみません、あの──」
  ・・・
町の人「──何の用だ?」
片瀬 舞(かたせ まい)「あ、あの、町内会長に伺って」
片瀬 舞(かたせ まい)「私たちを町内会に入れて頂きたいのですが──」
町の人「会長から話は聞いた」
町の人「だが実質、町内会を取り仕切っとるのはワシだ」
片瀬 舞(かたせ まい)「は、はい、ですのでどうぞお願いします──」
町の人「──会長の頼みとあっては仕方あるまい」
町の人「皆で話し合った結果、あんたを町内会に入れてやってもよい」
片瀬 舞(かたせ まい)「ほ、本当ですか!ありがとうございます!」
町の人「そこでまず入会金を払ってもらおう」
片瀬 舞(かたせ まい)「は、はい おいくらでしょう?」
町の人「入会金としてまず50万、月々の会費が5万だ」
片瀬 舞(かたせ まい)「ご、50万──!?」

〇シックな玄関
泉 洋子(いずみ ようこ)「ウフフ、また来てあげたわよ」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「お、おい、急に来るなと言ったろ」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「いや、それより昨日の貼り紙はお前か? 変なマネはやめろよ」
泉 洋子(いずみ ようこ)「貼り紙?知らないわよ」
泉 洋子(いずみ ようこ)「何が書いてあったの?」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「い、いやそれは──」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「しかしお前じゃないとすると誰なんだ?」
泉 洋子(いずみ ようこ)「知らないわよ いつ貼られたの?」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「昨日舞が出て行ってから、帰って来るまでの間だと思う」
泉 洋子(いずみ ようこ)「う~ん?」
泉 洋子(いずみ ようこ)「その時間は町の人みんな集まって、何か相談してたはずだけど──」
泉 洋子(いずみ ようこ)「もちろん私の両親でもないと思うし」
泉 洋子(いずみ ようこ)「大沢先生のとこには奥さんが行ってたんでしょ?」
泉 洋子(いずみ ようこ)「あとこの町に住んでるのは、アパートに大学生がほんの数人」
片瀬 英司(かたせ えいじ)「──なるほど」
片瀬 英司(かたせ えいじ)(口裏を合わせてる可能性もあるけど、ほとんどの住民はアリバイのようなものがあるのか)
片瀬 英司(かたせ えいじ)(この町は大学があるから職員や学生も通りかかるけど、動機があるとは思えない)

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コメント

  • 一瞬ルポライターの人がロケラン持って殴り込みに来た人かと思いましたが違った……
    町内会の閉鎖的なとこが妙に生々しい!

  • 旧の自治会あるあるですね…
    タコが自分の足を食べる様に馬鹿なことをしていると気づかない老害達にはイライラしちゃいます。ルポライターが何か光となるのか?気になりますね

  • 町内会のいや〜な閉塞感が生々しくて生々しくて……1話から「半分ノンフィクションなのでは?」と思うほどの描写力でした。
    片瀬舞ってもしや「肩身が狭い」的な意味も…?

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