第四話 野犬歩きて棒に当たる(脚本)
〇ラブホテルの部屋
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「フ──ッ フ──ッ」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)(呼吸を整えるのが早いな)
餘目 天花(あまるめ あまか)「ね!ここ書き忘れてるよぉ?」
餘目 天花(あまるめ あまか)「離婚後の戸籍! 『もとの戸籍にもどる』でいいよね?」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「勝手に決めないで?」
「は?」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「自分のことは自分で決める」
私は犬じゃない
餘目 天花(あまるめ あまか)「な、何よ!『仁藤』名乗る気!?」
✔️『新しい戸籍を作る』
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「母とは縁を切ってるから」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「そういや『返品不可』だったわ!」
餘目 天花(あまるめ あまか)「帰る家もないとか、毒親育ちって不憫~」
餘目 天花(あまるめ あまか)「うちの女中になる? 月2(光熱費別)で別宅貸すよ?」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「家賃とるんか~い!」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「──まずは自分で探すわ」
「へあ?そ、そう?」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「ま、今夜は俺ら別室とるから」
餘目 天花(あまるめ あまか)「ゆっくり休んでね?」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「服は朝届けるわ 携帯も充電しとくな!」
かつてのチワワ?「退路モ断テヌ 腰抜ケニ 人間ガ勤マルカイ!」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「まずは生きなくちゃ」
彼らのように図太く──
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「グゥ」
かつてのチワワ?「寝タッ!」
かつてのチワワ?「省エネ モード カーイ!」
〇黒
〇オフィスビル
翌朝、私たちは三人で市役所に赴き
離婚届を提出した
餘目 天花(あまるめ あまか)「鈴ちゃんこれからどうする? 私らリング見に行くけど、一緒来る?」
唯鈴(いすず)「鍵もらえますか?荷物まとめたいので」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「俺らの留守に勝手に入る気か? もう他人なんだぞ?」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「言うほど荷物もないだろ? あ、これ──」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「悪い、充電忘れてたわ! 夕方には帰るから適当に時間潰してな」
唯鈴(いすず)(潰す時間なんてないわ)
〇図書館
唯鈴(いすず)(まずは情報収集よね)
唯鈴(いすず)(家、仕事──『生活』の棚かな)
唯鈴(いすず)(ん?)
『ワンコのしつけかた』
唯鈴(いすず)(ワンコ = 私・・・)
唯鈴(いすず)「・・・ん?」
『マウンティング』──?
〇山並み
マウンティングとは
飼い犬や人や他の犬、ぬいぐるみなどに覆いかぶさり腰を動かす行動
マウンティングする理由は
①繁殖行動の練習
②優位性の誇示
③ストレス発散
④興奮、など
〇図書館
唯鈴(いすず)(マウンティングなんてしてない! むしろ、これってまるで──)
唯鈴(いすず)(・・・やめさせる方法は)
・正しい主従関係を分からせる
・トレーニング
・去勢
唯鈴(いすず)「去勢──」
かつてのチワワ?「オ、オマエ・・・?」
〇図書館
それからは取り憑かれたように
ヒトの去勢に関する文献を読み漁った
残念ながら去勢の文化は
世界的に見ても消滅寸前だったが
その概念は仮死に陥った私の胸を強く打った
唯鈴(いすず)(なんだろう、この気持ち──)
かつてのチワワ?「現実カラ逃ゲルナ!コノ犬メ!」
唯鈴(いすず)「え?いっけない!」
〇綺麗な一戸建て
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「遅い」
餘目 天花(あまるめ あまか)「はい、これ荷物♪」
唯鈴(いすず)「あ、どうも ──お世話にナリマシタ」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「お疲れ様でした。寿々喜(すずき)さんの活躍と健闘をお祈りします」
餘目 天花(あまるめ あまか)「ちょ!お祈りメールじゃないんだから!」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「ま、仕事探しは手伝うしさ! 今後のためにも『良い関係』でいような!」
餘目 天花(あまるめ あまか)「だね!妬まず恨まず! 持ち前の『鈍感力』発揮していこ!」
唯鈴(いすず)「ねぇ、天花ちゃん? ひょっとして高校のときも──」
?????「まだかかりますの?」
唯鈴(いすず)「あ!」
「お義母さん!?」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「おっ、お袋!?なんでここに?」
仁藤 春依(にとう はるえ)「嫁変えるんでしょ? 挨拶くらいさせなさいな」
餘目 天花(あまるめ あまか)「はじめまして、お義母様! 私──」
仁藤 春依(にとう はるえ)「貴女は結構よ 娘増やす気はないから」
餘目 天花(あまるめ あまか)「はぇ?」
仁藤 春依(にとう はるえ)「世話になったわね、唯鈴さん 最後にお茶しましょ?」
唯鈴(いすず)「はい・・・」
仁藤 春依(にとう はるえ)「お邪魔したわね、アデュー!」
〇テラス席
仁藤 春依(にとう はるえ)「潮時だったのよ 拾ってもらった恩は十分返したでしょう?」
唯鈴(いすず)「私・・・仁藤家に相応しく なかったんでしょうか?」
仁藤 春依(にとう はるえ)「なに?仁藤家って── 二人の問題でしょう?」
仁藤 春依(にとう はるえ)「私を巻き込まないで頂戴! 母も妻ももう卒業したわ!」
仁藤 春依(にとう はるえ)「──で?これからどうするの?」
唯鈴(いすず)「今夜はネットカフェに泊まって 家と仕事は明日探します」
仁藤 春依(にとう はるえ)「どこまでも哀れな子ねぇ!」
仁藤 春依(にとう はるえ)「はい、これ。私の気持ち」
仁藤 春依(にとう はるえ)「旧友の名刺よ 困ったときは連絡なさい」
唯鈴(いすず)「旧友・・・ 水商売関係──ですか?」
仁藤 春依(にとう はるえ)「結構向いてると思うわよ?貴女 庇護欲掻き立てるし、身請け話なんかも──」
唯鈴(いすず)「犬はやめたんです! 誰かに養ってもらうのはもう──」
仁藤 春依(にとう はるえ)「まぁ、お守り代わりに持ってなさい 『選択肢は人生を豊かにする』」
仁藤 春依(にとう はるえ)「大丈夫、あなたは強い子よ」
唯鈴(いすず)「お義母──?」
仁藤 春依(にとう はるえ)「あら、もうこんな時間? フライトに遅れちゃう!」
仁藤 春依(にとう はるえ)「私ね、余生はグアムで過ごすのよ!」
仁藤 春依(にとう はるえ)「貴女も悔いのない人生をね!アデュー!」
〇おしゃれなリビングダイニング
餘目 天花(あまるめ あまか)「どう考えても元嫁より今嫁でしょ?」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「気にすんなって ドライなんだよ、あの人」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「骨は南の島に埋めたいらしいし もう会う機会もないって」
餘目 天花(あまるめ あまか)「そういう問題じゃなくて!」
餘目 天花(あまるめ あまか)(昔からこうなのよ!あの子は──)
〇学校の廊下
餘目 天花(あまるめ あまか)(全科目平均以上!これならお父さんも──)
「試験中寝てたァ!?」
唯鈴(学生時代)「前日バイトで疲れてて──」
餘目 天花(あまるめ あまか)(皆が『放っておけん』鈴ちゃんだ)
先生「君ね、学ぶ気はあるのか?遅刻、居眠り、宿題未提出、テストもこの有り様・・・」
先生「むっ?これは──!」
先生「おどろいた! 配点の高い応用問題は全問正解してる!」
餘目 天花(あまるめ あまか)(私が解けなかった問題を軒並み!?)
先生「ふむ、要領や地頭は悪くないのか 勉強に集中すればA大も狙えるかもな!」
餘目 天花(あまるめ あまか)(私の第一志望・・・)
いつもこうだ
私が努力を重ね手を伸ばしたものを
何食わぬ顔でかっさらっていく
ムカつく女
〇体育館裏
早くいなくなれし
〇大企業のオフィスビル
翌朝、月曜日
〇おしゃれな受付
餘目 天花(あまるめ あまか)「いらっしゃい、ませ──」
唯鈴(いすず)「CJAの仁藤さんお願いします」
餘目 天花(あまるめ あまか)(お願いしますじゃねぇんだわ)
餘目 天花(あまるめ あまか)「恐れ入ります アポイントメントのないお客様は──」
受付嬢「ただいま確認いたします」
餘目 天花(あまるめ あまか)(ちょ!私が対応中なのに──!)
〇オフィスのフロア
総務課・山岸「えっ!離婚ですか?」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「昨日届けを出してね。じき受理されるから、必要書類用意しといてもらえる?」
総務課・山岸「はい・・・えっと、ご愁傷様でした」
芳川 吉哉(よしかわ よしや)「いやそこは『おめでとう』っしょ?」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「げっ、芳川!」
芳川 吉哉(よしかわ よしや)「同期に『ゲッ』はないだろ? 散々グチにも付き合ってやったのによ~」
芳川 吉哉(よしかわ よしや)「早よ離婚しろっつったのに、昇進かかってる今時期かよ!らしくねぇなぁ!」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「いや、俺なりに歩み寄ってたワケでさぁ?まぁ、無駄だったんだけど──」
芳川 吉哉(よしかわ よしや)「ふぅん?」
総務課・山岸「はい、CJAでございます 仁藤でございますね?」
総務課・山岸「スズキ──イスズ様?」
総務課・山岸「少々お待ちください」
総務課・山岸「元・・・奥様、ですよね? 下にいらっしゃったそうで──」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)(何の嫌がらせだよ)
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「通してくれ、対応する」
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去勢……SM……!
気になるワードが出てきてこの先の展開がすごく楽しみ。
主人公も何か覚醒しそう。
3つの選択肢が出てきたところで、三番だろうと心の中で選んでいました。
確かにこれは家族に見られたくない検索履歴になりそうですね。変わっていく主人公は生き生きしてて良いですね。
続きが気になりすぎます🤣
普段おしとやかで自分を前に出さなかったからか反動がでかすぎて恐ろしい!でもどこかワクワクしてしまいます🤣👍