終活魔王のエンディングノート

大河内 りさ

P20・守りたかったもの(脚本)

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〇謁見の間
ルカード「エリゼ──」
ルカード「無事でよかった・・・」
ヴィエリゼ「ルカード!?」
ヴィエリゼ「どうしてここに──」
ヴィエリゼ「それより腕は!?」
ヴィエリゼ「腕は大丈夫なの・・・!?」
ルカード「あ、えっと・・・」
ヴィエリゼ「見せてっ!!」
ヴィエリゼ「・・・・・・っ」
ヴィエリゼ「私のせいで・・・」
ヴィエリゼ「ごめんなさい」
ルカード「違う! エリゼのせいじゃない!!」
ヴィエリゼ「だって私が──」
ルカード「うわっ」
ガルディアス「離れなさい、ヴィエリゼ」
ヴィエリゼ「お父様・・・」
ローレット「エリゼ!」
ダーリナ「部屋から出るなら 護衛をつけてくださいとあれほど──」
ミア「ルカード!」
キオル「どうなってんだよ!」
「きちんと説明しろ!! / して!!」
ルカード「えっと──」

〇黒

〇洋館の玄関ホール
ルカード「ごめん・・・っ」
ヴィエリゼ(終わらせてくれるんだね──)
ヴィエリゼ(あなたの手で)
  目を閉じて、すぐに訪れるであろう痛みに備える。
ルカード「・・・ッ」
ヴィエリゼ「・・・・・・」
ヴィエリゼ(・・・あ、れ?)
  痛く・・・ない。
  それなら、首筋を濡らす温かなものは何?
  鼻をつく独特な血の匂いは、いったい──
ヴィエリゼ「・・・ッ!?」
  ルカードの腕から溢れた血が、私のドレスを染め上げていく。
ヴィエリゼ(チョーカーが外れた・・・?)
ヴィエリゼ「ルカ──」
ルカード「しっ」
ルカード「そのまま目を瞑って、 俺に身体を預けて欲しい」
ヴィエリゼ「・・・」
  彼に向かって倒れかかると、ルカードが私を横抱きにかかえ上げた。
  その直後──
キオル「ルカード!!」
フェゴール「魔王様・・・!?」
ローレット「くっ・・・う・・・」
フェゴール「ゲンティムさん!?」
ミア「いったい何が・・・」
ラフェル「ふっ・・・ふふっ・・・」
ラフェル「アハハハハハハッ!!」
キオル「てめえッ!! 何をした!?」
ラフェル「僕は、何も・・・?」
ラフェル「ハハハハハハハッ!!」
ルカード「皆、聞けッ!!」
ルカード「魔王ヴィエリゼ・レイヤール・ヴァンダドラルは、俺が討ち取った!!」
ルカード「この戦い── 俺たち人間の勝利だ!!」
キオル「・・・は?」
ミア「ルカード・・・?」
フェゴール「何を仰って──」
ルカード「ルミルソン公爵は魔王討伐に際し それを妨げる行いをした」
ルカード「反逆罪と言える行為だ」
ラフェル「おや、僕のおかげで彼女と 戦いやすくなったのではないかい?」
ラフェル「自分のものにならないのなら、いっそ ・・・ってね」
ルカード「貴様・・・ッ」
ラフェル「ははっ、冗談だよ」
ラフェル「帝国の第三王子の介入で理性を失い魔力を暴発させた魔王を、勇者が見事討伐した──」
ラフェル「そのシナリオにのってあげよう」
ルカード「・・・キオル。 公爵の身柄を拘束しておいてくれ」
キオル「おい、ルカード・・・」
ルカード「魔王の亡骸を部屋に安置してくる──」
ミア「亡骸って・・・そんな・・・」
ミア「嘘でしょう・・・?」
ラフェル「ふふふっ」
ラフェル「魔王を隷属させることは失敗してしまったけれど、とても面白い物が見られたよ──」
ミア「・・・ッ!!」
ラフェル「・・・・・・」
キオル「ミア、少し離れて」
キオル「拘束魔法だ。 暴れると締めつけがきつくなるぜ」
ラフェル「魔王は死んでしまったし、 もう何もすることはないよ」
キオル「ミア、急いでこいつらの手当てを」
ミア「ええ・・・!」
キオル「おい、水属性女! しっかりしろ!!」
ローレット「触るな!!」
ローレット「お前たちのせいでエリゼが・・・」
ローレット「エリゼが・・・エリゼっ・・・」
ローレット「くっ、うぅ・・・」
ミア「ダーリナちゃん・・・」
ダーリナ「大丈夫です」
ミア「何があったの?」
ダーリナ「勇者に直接聞いてはいかがです?」
ミア「本当に、ルカードが・・・?」
ダーリナ「・・・・・・・・・」
フェゴール「ゲンティムさん、生きてますか?」
ゲンティム「・・・っ、なんとかな」
ゲンティム「嬢ちゃんは?」
フェゴール「勇者殿がお部屋へ・・・・・・」

〇貴族の部屋
ルカード「・・・・・・」
ルカード「もう、目を開けて大丈夫だよ」
ヴィエリゼ「すごい血・・・!」
ヴィエリゼ「早く手当てを──誰か呼びに・・・」
ルカード「待って!」
ルカード「今きみが動いたらまずい」
ヴィエリゼ「でも、その怪我・・・ 早く直さないと手遅れになっちゃう」
ルカード「腕一本できみを取り戻すことができたなら、安いものだよ」
ヴィエリゼ「どうして──」
ルカード「首を斬ったと思わせるために、きみの頭にまわしていた自分の腕を斬りつけたんだ」
ルカード「あの魔導具のチョーカーは神官が創ったと聞いていたから、穢れに弱いだろうと思って」
ルカード「たくさん血を吸わせれば壊せるかなって」
ヴィエリゼ「予測だけでそんな無茶をしたの!?」
ルカード「実際、壊せただろ?」
ルカード「それに──」
ルカード「ラフェルにはきみは死んだと 思わせておきたかった」
ヴィエリゼ「どうして・・・?」
ルカード「今後の安全のためにも、 その方がいいかと思っ──」
ヴィエリゼ「そうじゃない!!」
ヴィエリゼ「そうじゃなくて・・・」
ヴィエリゼ「どうして、ここまでしてくれるの・・・?」
ヴィエリゼ「こんなに傷付いてまで・・・ どうして、助けてくれるの?」
ルカード「・・・・・・・・・」
ヴィエリゼ「お願いだから、自分を犠牲にするようなことはしないで・・・」
ルカード「・・・守りたかったんだ」
ヴィエリゼ「・・・?」
ルカード「初恋の女の子のことを」
ルカード「その女の子の心を」
ルカード「その心に誓った約束を」
ヴィエリゼ「それって・・・」
ルカード「初めて会った時、きみの圧倒的な強さに憧れた。羨ましいと思った」
ルカード「でも、そんなきみが父親の不在や人間界との対立に悲しそうな顔をするのを見て、力になりたいと思ったんだ」
ルカード「子供の頃から、初めて会った時から」
ルカード「俺は、きみに惹かれていたんだ・・・」
ルカード「俺の、魔王様──」
ヴィエリゼ「ルカード・・・」
ヴィエリゼ「うわぁああんっ」
ルカード「どうして泣くの!?」
ルカード「え、えっと──」
ルカード「あった! ハンカチ!」
  ルカードが差し出したハンカチを奪うように取り上げて、彼の腕の傷をぎゅっと縛る。
ルカード「痛ッ──」
ヴィエリゼ「・・・ずっと怖かったの」
ヴィエリゼ「魔界を背負う重責も」
ヴィエリゼ「魔族と人間が傷付け合うことも」
ヴィエリゼ「あなたに、魔王だと知られてしまうことも」
ルカード「大丈夫」
ルカード「もう、大丈夫だから・・・」
ヴィエリゼ「うん・・・」
  片腕で抱き寄せられて、ルカードの胸に顔を伏せる。
ヴィエリゼ「・・・・・・・・・」
ヴィエリゼ「・・・胸当てが固くて痛い」
ルカード「えっ!? ごめん!!」
「・・・・・・・・・」
ヴィエリゼ「ぷっ」
ルカード「ははっ」
ルカード「・・・国と話をつけたら会いに来る」
ルカード「だから、それまで待っていて欲しい」
ヴィエリゼ「分かった、待ってるわ」
「『約束』だよ」

次のエピソード:P21・告白

コメント

  • ルカードのずっと秘めていた想いに感動…そして新たに結んだ約束もとても素敵でした^^
    いよいよクライマックスとのこと、引き続き楽しみにしています!

  • 大団円へ…!😭
    それぞれ結ばれますように☺️

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