Triangle(Ⅰ)(脚本)
〇お祭り会場
〇中庭のステージ
『久遠奏太さんの演奏と歌でした~』
『この後15時から御光町ジュニアダンスチームぱれっとのステージが行われます』
『皆さまお誘いあわせの上、特設ステージまでお来し下さいませ』
『商店街会場ではふるさと物産展が開催されています。そちらの方も是非・・・』
〇テントの中
商工会役員「僕みたいに長年イベントやってると、もう分かるのよ」
商工会役員「実際ねえ、道でオリジナルソング歌ってる様な人舞台に上げても客が逃げちゃうんだよね。ポエムとかさ。みんな引いちゃうの」
商工会役員「気持ち悪・・・ああいや普通の人には意味わかんないでしょうああいうの。ひゃはは」
商工会役員「だから基本的には我々が目をかけてるジュニアダンスチームとか、知り合いのピアノ教室の人しか呼ばないの」
商工会役員「もちろん大会常連とかコンクール優勝は、町おこしの舞台に立つ基本だね」
商工会役員「そういう意味じゃ君は特別だよ。凄いねえ素人さんなのに。ファンついててさあ」
奏太「素人・・・」
商工会役員「ああゴメンゴメン。もう立派な芸能人さんだね」
商工会役員「で、これから就職とかどうするの?」
商工会役員「音楽関係とか需要あるの?大変だよ色々」
商工会役員「そりゃあ勿論東京でスター目指すに決まってるだろう?フクヤマだフクヤマ。あっはっはっは!」
商工会役員「じゃあ今の内にサインもらっとかないとな」
商工会役員「俺のハッピに書いてくれよ。はははは!」
商工会役員「まあまあ、どんどんやってよ。これくらいしかお礼できないから」
奏太「どうも・・・」
商工会役員「でもいくらスター君でも裏通りには近づいちゃダメだからね」
商工会役員「アーティストさん的にはああいう刺激的な場所は興味あるだろうけどね」
奏太「それくらい分かってますよ」
商工会役員「何が御影町だ。ありゃただの裏路地。掃き溜め。町の恥」
商工会役員「とっとと再開発したい所だがあのヤクザ者がデカい顔してさ・・・」
奏太「あ!」
商工会役員「あ、いや。どうも」
商工会役員「ああ?」
塚越「はいどうも。お疲れ様でーす」
商工会役員「ああ!これはこれは塚越社長!」
奏太「じゃあ、僕はこれで・・・」
商工会役員「俺も子供神輿の様子見にいかねえと・・・」
塚越「今年の町興しも大盛況で何よりですね。私みたいなヤクザもんでも皆さんの素敵な笑顔を見るとカンパした甲斐がありましたよ」
塚越「些少な額で申し訳ない。本当、数百万程度で大きな顔してお恥ずかしい」
商工会役員「と、とんでもない!役員一同塚越産業さんには感謝してもしきれません!」
塚越「嬉しいな。まあまあ、一杯どうぞ」
商工会役員「すみません。社長自ら」
塚越「社長だなんて、とんでもない」
塚越「裏路地の。掃き溜めの。町の恥です」
商工会役員「ああいや・・・あれは、その・・・」
塚越「さあどんどん注ぎますよ~」
商工会役員「いやいや、もうそのへんで。ははは」
塚越「ヤクザもんの酒は飲めませんか?」
商工会役員「い、いえ!とんでもございません!」
塚越「ああ、すみませーん。注ぎ過ぎて地べたにこぼれちゃいましたー。勿体ないなー」
塚越「舐めます?」
商工会役員「え?」
塚越「舐めろよ」
商工会役員「・・・」
塚越「冗談ですよ冗談。ははははは!」
商工会役員「はは・・・はははは・・・」
〇商店街の飲食店
奏太「・・・」
奏太「ごめん!ちょっと外すね!今日は見に来てくれてありがとう!」
奏太「へえ!結構ガッツリいっちゃう派なんだ!」
マリア「お、お疲れ様です!」
奏太「聴いてくれたんだ」
マリア「新曲おろしたんですね」
奏太「初めての別れの歌・・・ペラいけど」
マリア「だからペラくないって」
奏太「何やってる人?学生?」
マリア「社会人。それにもうおばちゃんだよ」
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