メタリアルストーリー

相賀マコト

エピソード28(脚本)

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〇闘技場
  エミリアはひとり、黙々と修練場で槍を振るっていた。
  どことなく殺気立っており、槍を扱う手つきにも苛立ちが見られる。
  常人であれば目で追うことも叶わない速さで槍を振り回したあと、ピタリと動きを止めた。
エミリア「はあ・・・」
  鍛錬中にもかかわらず身が入っていない。
  それを自覚して、エミリアは眉間にシワを寄せた。
エミリア(さっさと忘れよう)
  モヤモヤとした思考を振り払うため、槍を握り直すと後ろから声がかかる。
ライザー「失礼します」
エミリア「・・・ああ」
  振り返るとそこにはライザーの姿があった。
  エミリアは槍を片手で持ち直す。
ライザー「聞きましたよ」
ライザー「決闘したんですよね・・・ニルと」
  その名前を聞いた瞬間、エミリアの中に昨日の男の姿がはっきりと思い浮かんだ。
  エミリアと決闘することを渋り、あっさりと負けた情けない男の姿だ。
  エミリアは怒りをあらわにして、ライザーにずかずかと歩み寄る。
エミリア「お前はとんだ大ぼら吹きだな!」
ライザー「え、ええ!?」
エミリア「なにが「只者ではない」だ! 私よりも強いかと思ったら、てんで話にならない!」
  ライザーはエミリアの反応に困惑しながら、何があったのかを尋ねる。
  エミリアはため息を吐いたあと、ニルとの決闘について話し出した。

〇闘技場
  エミリアの話を一通り聞き終わり、ライザーは目を丸くする。
ライザー「そんなはずはないっすけどね・・・」
  首を傾(かし)げるライザーをエミリアはじとりと睨む。
ライザー「・・・正直俺の見解では、あいつは今までの特級コレクターの中でも一、二を争う・・・」
エミリア「悪いが到底信じられん」
  エミリアはすぱっと言い切り、ライザーの言葉を打ち消した。
  大きく息を吐いて、呆れたようにつぶやく。
エミリア「まあ私も、少し期待しすぎていたところがあったのかもしれないな・・・」
  エミリアは手にしていた槍を壁に備え付けられた武具掛けに戻した。
  それからライザーに背を向ける。
エミリア「用があるので失礼する」
  悲壮感を漂わせながら修練場を立ち去るエミリアの背中を見つめて、ライザーは頭をかいた。

〇西洋の円卓会議
  エミリアは議長の元へ向かい、ニルとの決闘について報告をした。
  議長はエミリアの酷評を聞き、「ううむ」と腕を組み唸る。
  ニルという人物は、人によって評価が極端に分かれるため、なんとも判断がつきづらかった。
  もちろん、エミリアの言うことは非常に信用に値する。
  しかし、メイザスが剣を鍛えるということがどういうことなのかも理解している。
  議長は考えた末、結局ニルに対して特別な処置は行わないと決定した。
  特級コレクターと副団長の話は保留にすることになった。

〇西洋の市場
  1週間後。
  メルザムの街では、年に一度の大きなお祭りの日だ。
  この日は、メルザムで信仰されているメルザイア教の儀式が行われる。
  メルザイア教は、ギアーズのコアを森羅万象の祖とする宗教だ。
  人でごった返すメルザムの街を横断するのは祭りの華であるパレード。
  騎士団はパレードの警護の役割があり、エミリアはこの指揮を執っていた。
  祭りの盛り上がりは最高潮を迎えている。
  エミリアはパレードが通る道の先頭を凛とした表情で歩く。
エミリア「!」
  そんな中、人混みの中にニルの姿を見つけた。
  ニルもエミリアに気づいたようで、ぺこりと会釈をする。
  エミリアは決闘のことを思い出し、眉間にシワを寄せた。
エミリア(・・・職務に集中せねば)
  そう自分に言い聞かせ、すぐにキリッとした顔つきに戻る。
  沿道に人々が密集している様子を視界に入れながら、エミリアは任務を全うすべく胸を張って歩いた。

〇西洋の市場
ニル「それにしても人が多いね・・・」
  ニルは見渡す限りの人の波に圧倒されていた。
  隣にいるアイリとエルルも頷く。
エルル「パレード行っちゃいましたね〜」
アイリ「そうね。 お腹も空いたし、屋台でも巡りましょうか」
エルル「賛成ですっ!」
  3人は屋台が集まる通りへと歩いていく。
  数々の屋台が並び、食欲をそそる香りがあたりにとびかっている。
  そんな中、ニルはとあるにおいに反応した。
ニル「! これは・・・」
  ニルを先頭にして、においの方へ向かっていく。
  そこには"焼きムザル麺"なるものが売られていた。
アイリ「ムザル麺のアレンジ料理ね」
アイリ「・・・そういえばアンタ、好きだったっけ」
  ニルは勢いよく頷く。
  エルルはにっこりと笑った。
エルル「じゃあ、お昼ご飯はこれにしましょう!」
  注文して少しすると、使い捨ての容器に入った焼きムザル麺を手渡される。
  焼きムザル麺は、香りや味はムザル麺そのままに、焼いた麺のパリパリとした食感がクセになりそうだ。
  噛みしめるように咀嚼(そしゃく)しながら、ニルはしみじみと言う。
ニル「俺、ムザル麺と出会うためにメルザムに来たのかな・・・」
アイリ「なに言ってんの」
  ぺろりと焼きムザル麺を食べ終わると、3人は大満足で再び歩き出した。
  しばらく人の波に乗って屋台を冷やかしながら進む。
エルル「私、あれが食べたいです!」
  エルルが指さす先には、ニルが初めて見るものが売られていた。
  色とりどりのもこもこした雲のようなものが店頭に並んでいる。

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