悪役令嬢は平和に暮らしたいのに完璧執事が邪魔をする

イトウアユム

第二十話「その悪役令嬢、完璧執事と永遠に」(脚本)

悪役令嬢は平和に暮らしたいのに完璧執事が邪魔をする

イトウアユム

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〇城の客室
  テーブルの上にはケーキスタンドと
  お気に入りのティーセット。
  私は部屋に漂う紅茶の香りを
  楽しみながら手紙を読む。
  親愛なるラビニアへ
ラビニア・オータム(優しい文章もそうだけど・・・ 差出人の性格を表してるなぁ)
  良い香りのする便せんに書かれた文字は
  綺麗で読みやすい。
  私は小さく笑ってオスカーからの
  手紙を読み進める。
  あれから数か月経ったけど、
  君はどう過ごしているかな?
  僕の方は日に日に体力が戻り、10年ぶりの
  健康を日々噛みしめているところだよ。
  あれから・・・私は思い返す。
  私が魔王化し、セバスと大観衆の前で
  キスをしたあの日。
ラビニア・オータム(あの後は・・・色々と大変だったのよね)
  まずは私達が暴れまくった、
  神殿の後始末と顛末の報告。
  それはオスカーとセバスが
  上手く口裏を合わせてくれた。
  曰く、神殿が破壊されたのはオスカーが
  【魔王因子】を破壊する際の余波。
  曰く、ラビニア嬢とセーラ嬢が争っていたのは、破壊される【魔王因子】の影響を
  一時的に受けてしまったため。
  いささかっていうかだいぶ苦しい言い訳
  だから、最初は心配していたけど・・・。

〇王宮の入口
大臣「そうおっしゃられても・・・ 現に何人か目撃しております」
大臣「ラビニア様が魔王しか振るう事が出来ない 魔剣ダーインスレイヴを手にしていたと・・・」
オスカー・スフェーン「気のせいじゃない? 剣なんて遠目から 見ればみんな同じに見えるしね」
大臣「しかし・・・」
セバスチャン・ガーフィールド「――ではあなた方はそれを見たのか?」
大臣「い、いえ・・・」
セバスチャン・ガーフィールド「万が一、ラビニア嬢が【魔王因子】を 引き継いでいたとすれば」
セバスチャン・ガーフィールド「絶望に打ちひしがれ、オスカー様の様に 体も蝕まれているはず」
セバスチャン・ガーフィールド「なのに彼女は相変わらず能天気な顔をして 健康そのもの。 これはどう説明されるつもりで?」
オスカー・スフェーン「そう、ダミアンの言う通りだ。 それに・・・」
オスカー・スフェーン「【魔王因子】は光の勇者の末裔である この僕オスカー・スフェーンが破壊した――そう言ったはずだよ」
セバスチャン・ガーフィールド「まさかスフェーン王国の臣下とも あろう者達が、オスカー様の言葉を 信じられないと?」
大臣「いえ、そのような事は・・・」

〇城の客室
  容赦ない論破で黙らせるセバスに
  笑顔の圧で黙らせるオスカー。
  ・・・うん、間違いなくあの2人は
  兄弟だって確信したっけ。
  こうして2人は周囲の様々な疑問や質問を
  強引にねじ伏せ【魔王因子】を破壊したと
  言い張ってくれた。
  おかげで私が魔王化した事はセバス達以外
  誰にも知られる事無く闇に葬られた。
  なによりも、オスカーがみるみる健康を
  取り戻した姿が【魔王因子】消滅の証拠に
  なったしね。
  オスカーは今、心身の回復と共に少しずつ
  公式の執務もこなしているらしい。
  今までダミアンや周りに
  迷惑を掛けっぱなしだったからね。
  良き王となるべく頑張るよ。
  リオとルドルフも元気にしているよ。
  もちろん君の親友のベッキーも。
  ベッキーは今、スフェーン王国にいる。
  ゲームではセーラが留学していたのだが・・・。

〇豪華な部屋
ベッキー・セントジョン「セーラが留学を辞退するっていうからさ~ こりゃチャンスだって思って」
  なんとベッキーが自ら留学生に
  立候補したのだ。
ベッキー・セントジョン「一応さ、気は使ってたんだよ。 モブらしく、メインキャラの邪魔にならない様に、目立たない様にしてようってさ」
ベッキー・セントジョン「でも・・・あんたたちを見てたら なんか違うなってね」
ベッキー・セントジョン「役目って、誰かに決められるんじゃなくて 自分で決めるものだもんね。 せっかくの第2の人生、楽しまなきゃ!」

〇城の客室
  あっという間にスフェーン王国に留学し
  今では王宮騎士団の宿舎に足繁く通って
  いるらしい。
  ベッキーの両親は
  騎士の恋人が出来たのか?
  なんて期待していると聞いたけど・・・
  私は知っている。

〇兵舎
リオ・エム「おい、おさげ! こっちもちゃんと拭けよ」
ベッキー・セントジョン「はいっ!」
ルドルフ・モルダー「リオっ! わざわざ掃除をしてくれる ベッキーさんになんてことを言うんだ」
リオ・エム「だったら散らかさない様に 気をつけろよな~!」
リオ・エム「そんなんだからプライベートは ポンコツだって言われるんだよ」
ルドルフ・モルダー「ぐっ!!!」
ベッキー・セントジョン「――尊い・・・。今日も極上のリオルド ありがとうございます・・・ぐふふ・・・」
  ベッキーは今日も『壁』となる
  至福の時のために掃除婦として
  通っているのだという事を。

〇城の客室
ラビニア・オータム(――どうか、ベッキーのご両親の 幸せな誤解が、出来るだけ 長く続きますように・・・)
  そして留学を辞退したセーラはと言うと。

〇暖炉のある小屋
セーラ・スタン「留学なんてするわけないじゃないですか。 せっかくラビニアさんと仲良くなれたのに」
ラビニア・オータム「仲良く・・・?」
セーラ・スタン「うふ。私、初めてなんですよ。 お友達とあんなに喧嘩したのって」
  喧嘩って言うか・・・
  お互い、正気じゃなかったとはいえ、
  殺し合おうとしてたけど。
セーラ・スタン「それに・・・最近私、 カフェ巡りにハマってるんです」
セーラ・スタン「知ってます? このお店、 イケメンな店員さんがいるんですよ~」
  知ってるも何も、あの店員さん、
  ゲームだとガチャボックス売ってた
  モブキャラだったし。
セーラ・スタン「彼と仲良くなるまでは この国から離れられないなーって」
セーラ・スタン「あ、あと知ってます? あの教会の神父さん・・・」

〇城の客室
  ・・・こんな調子。
  つまり、セーラはいつも通りのセーラだ。
  ジョシュ王子たちは多夫一妻制への
  法律改定の為に今後も奮闘するらしい。
ラビニア・オータム(セーラは相変わらずイケメンに目が無い から、これからも苦労しそうだけど・・・)
ラビニア・オータム「まあ・・・ これも一種のハッピーエンドかな」
  彼らが幸せだって満足しているなら、
  私は何も言うまい。
  気を取り直し、シェフ自慢の上品なプティフールをつまみながら手紙を読み進める。
ラビニア・オータム「ふふっ、 私と早く家族になりたいだなんて・・・」
ラビニア・オータム「うん、そうなのよ、ちょっとお父様が 一筋縄ではいかなくて・・・」
  思わず手紙の内容に頷き、
  独り言を零しながらため息。
ラビニア・オータム「え? いっその事僕のお妃にならないか、 ですって? ふふっ、オスカーったら」
  オスカーの冗談に思わず微笑んで、紅茶の
  カップに手を伸ばそうとすると・・・。
???「手紙を読みながら飲まれるのは 無作法ですよ」
  そう言って私の手から手紙を取り上げる
  その人は――
  私の執事、セバスチャン・ガーフィールド
  セバスチャンはこうして私の執事として
  復活し、今までと変わらず傍にいるのだ。

〇水玉
  セバスが私の執事として復帰した頃と
  時同じく。
  スフェーン王国のダミアン・スターリッジ
  侯爵は王宮騎士団の職から退いた。
  表向きは領の運営に専念するため、
  という事になっているが・・・・。
セバスチャン・ガーフィールド「おまえの令嬢教育に専念するからに 決まってるだろうが」
セバスチャン・ガーフィールド「未来のスターリッジ侯爵夫人は完璧とは 言わないまでも、せめて学園を首席で 卒業する位でないとな」
ラビニア・オータム「・・・完璧の基準がジョシュ王子の 時よりも重過ぎると思うんだけど」
  そう、私はスターリッジ侯爵に求婚され、
  晴れて婚約者となったのだ。
  しかし。
  姿も見せずに求婚してきたスターリッジ
  侯爵にお父様は良い印象は無い。
  私が強引に頼み込んで渋々
  「婚約は」認めて貰ったに過ぎない。

〇貴族の応接間
オータム公爵「ラビニアが一目惚れした彼以外とは婚約 しないと言い張るから認めたものの・・・」
オータム公爵「こうして未だに顔を突き合わせず、 使者や贈り物をしてくるだけの男なんて ロクなもんじゃない!」
オータム公爵「そう思うだろう、セバス」
セバスチャン・ガーフィールド「まったく、旦那様の仰る通りです」
  涼しい顔で頷くセバス。
  ・・・あんたの事だってのに、
  なんで他人事なのよ。
  でもスターリッジ侯爵とセバスが
  同一人物だと知ったら、
  お父様卒倒しちゃうだろうし・・・。
  とにかく、また婚約は無しだの
  結婚は認めんだのと騒かれないように
  私がフォローしないと!
ラビニア・オータム「で、でもっ! ほら、スターリッジ侯爵は お忙しい方だから仕方ないわよ。 それに彼は素敵な人よ!」
セバスチャン・ガーフィールド「お嬢様、スターリッジ侯爵は どんな風に素敵なんです?」
  なんであんたがそこを突っ込んでくるのよ
  セバス!!!
  でもここで
  嫌がるわけにもいかないし・・・。
ラビニア・オータム「そ、そりゃ・・・アレよ、その・・・ 強くて、カッコ良くて、頭が良くて・・・」
  自分で言ってて恥ずかしい・・・。
  こういう風に家族の前で恋人へののろけを
  わざと言わせる酷い男、他にいる?
  しかもその恋人当人も目の前にいるのよ?
セバスチャン・ガーフィールド「なるほど。では、そんなスターリッジ侯爵をラビニア様はどう思われているのです?」
ラビニア・オータム「ど、どうって・・・そりゃ、好きに・・・ って何言わせるのよっ!」
  顔を真っ赤にして怒鳴る私に、
  お父様は悲痛な声を上げる。
オータム公爵「ラビニアがっ! お父様と結婚するって 駄々をこねていた私の可愛いラビニアが! ・・・他の男を好きだって!」
オータム公爵夫人「はいはい、ラビニアも年頃ですしね。 良いではありませんか、 お互い好きあっているみたいですし」
オータム公爵夫人「それに・・・どうせなら義理の息子は、 若くて頭が良くて容姿の整っている方が 良いですもの」

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コメント

  • イトウアユムさん、完結お疲れ様です。ラビニアとセバスのお互い強気な距離感が縮まっていく姿、とても面白かったです!

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