20話 魔王軍四天王(脚本)
〇魔王城の部屋
ヴィオ「ユウ、貴様が招集をかけるとは。 くだらない話ではあるまいな?」
宿利ユウ「うん。実は、この前の人間軍との戦闘で思ったことがあって──」
〇空
魔族同士の戦いは、各自が思い思いに動く、乱闘のようなものだった。
〇断崖絶壁
でも、人間軍は統率が取れていて、
前に出て戦う者。
守りを固める者。
後ろから援護する者。
それぞれが自分の役割を果たしていた。
〇魔王城の部屋
アマデウス「そうだな。人間は群れの力を活かした戦い方をする」
宿利ユウ「僕たちにも、それと同じことができませんか?」
アマデウス「魔王軍の中で役割分担をするということか?」
トゥルカナ「つまり・・・狩人や建築士や作農家がいるように?」
宿利ユウ「うーん。僕が言いたいのは、『戦士』というくくりの中での役割分担・・・」
宿利ユウ「指揮系統を作ることだ。 簡単に言うなら──」
宿利ユウ「魔王軍四天王を作りたいんだ!」
トゥルカナ「魔王軍──」
アマデウス「四天王!?」
ヴィオ「何なのだ、それは?」
宿利ユウ「魔王軍の中で一番強い4人のことだけど・・・」
この世界にそういう概念はないんだな。
アマデウス「なぜ4人なんだ? 3人や5人ではいけないのか?」
宿利ユウ「そういえば、なぜでしょう・・・?」
ヴィオ「いい加減なものだな」
アマデウス「しかし、複雑な上下関係を作るのは人間の特徴だ」
アマデウス「対抗策として、こちらにも階級制度を作るのはいいかもしれない」
ヴィオ「たしかに今の魔王軍では、魔王様がご不在のときに戦線を維持するのが大変ですな」
トゥルカナ「魔王軍から強い順に4人選ぶとしたら、誰だろう?」
トゥルカナ「ボクとヴィオは確実として・・・」
え。トゥルカナってそんなに強かったのか。
〇闇の闘技場
トゥルカナ「竜人族の双子」
トゥルカナ「恐角族の手練れたち」
トゥルカナ「ボクの森の護衛なんかも候補かな」
〇魔王城の部屋
ヴィオ「貴様、やけに乗り気だな・・・」
トゥルカナ「いいじゃん。やろうよ、四天王決定戦!」
宿利ユウ「決定戦!?」
トゥルカナ「ちょうど、勇者たちが魔石狩りをしてることがわかったわけだし──」
トゥルカナ「魔石狩りを予選にすれば、一石二鳥じゃない?」
ヴィオ「魔石を欲しているのは貴様であろう。 まったく、抜け目のない奴め」
トゥルカナ「あ、バレた?」
アマデウス「いいだろう。元々、幻影の森に光を供給する条件でトゥルカナを引き込んだんだ」
宿利ユウ「ということは、四天王設立も・・・」
アマデウス「ああ。魔王アマデウスの名において、許可しよう」
ヴィオ「魔王様、ユウに甘過ぎではありませんか?」
トゥルカナ「そうと決まれば、さっそくみんなに告知しないとね」
翼手族「お呼びでしょうか、トゥルカナ様?」
トゥルカナ「そういう事情だから、いい感じによろしく」
翼手族「かしこまりました」
宿利ユウ「今のは?」
トゥルカナ「ボクの森の護衛だよ。キミと同じ四天王候補だから、お手柔らかにね」
宿利ユウ「ん? ボクと同じって?」
トゥルカナ「四天王決定戦、当然キミも出るんでしょ?」
宿利ユウ「・・・え?」
宿利ユウ「ええええ!?」
トゥルカナ「さっきからそういう流れだったよね?」
ヴィオ「まさか、提案だけして貴様は高みの見物をするつもりではあるまいな」
宿利ユウ「いや、そういう制度があればいいと思っただけで、僕自身がなりたいとかは・・・」
宿利ユウ「というか、僕にそんな実力は──」
アマデウス「何を言う。魔石狩りを済ませた者など、魔王軍に50人もいるかどうか」
宿利ユウ「そんなに少ないんですか!?」
アマデウス「自信を持て、ユウ」
アマデウス「お前は強い。我が軍の精鋭と言って差し支えないだろう」
宿利ユウ「アマデウスさん──」
トゥルカナ「うんうん。 アマデスウもいい感じに乗ってくれてる」
ヴィオ「貴様と同格というのは、どうにも納得がいかぬが・・・」
トゥルカナ「何言ってるの。アマデウスのためでしょ?」
ヴィオ「むぅ」
〇闇の要塞
〇闇の闘技場
アマデウス「――というわけだ」
アマデウス「四天王の座につきたいものは、魔獣が取り込んだ魔石を持ち帰れ!」
ここに集まった魔族はみんな、魔石の魔獣より強いんだ。
・・・僕にやれるだろうか?
リーナ「ユウ、今回は私たちもライバルね」
宿利ユウ「リーナ・・・」
リーナ「たとえユウが負けても、私は四天王になる。 手加減はなしよ」
宿利ユウ「――そうだね」
宿利ユウ「僕も全力を尽くすよ。 たとえリーナが相手でも」
宿利ユウ「わっ」
竜人族・紅「なんだ? 小さすぎて見えなかったぞ」
竜人族・蒼「ここは四天王決定戦の招集場だ。貴様らのような弱者が迷いこむところではない」
でかい・・・!
宿利ユウ「――僕もお前たちと同じ、四天王候補だ!」
リーナ「そうよ。弱者なんて呼ばれるいわれはないわ!」
竜人族・紅「ほう。人間のようなチビと」
竜人族・蒼「弱小部族の小娘が」
「はははは」
恐角族・紫「竜人族の双子・・・。 あれは有力候補だな」
恐角族・緑「気にすることはない。 竜人は高いステータスに頼りがちだ」
恐角族・緑「器用さと狡猾さでは我らが上。 この機に名を馳せて、権力を手に入れるぞ」
トゥルカナ「はい、ちゅうもーく!」
トゥルカナ「候補者のみんなには、これを配るよ」
トゥルカナ「遠く離れたところでも少しのMPで会話ができる魔導具。『電話』っていうんだって」
恐頭族「なんだ、貴様は! なぜこの場を仕切っている!?」
トゥルカナ「あれ、知らないの? ボクは四天王のトゥルカナだよ」
恐頭族「ヴィオ様はともかく、誰とも知れん貴様が4つしかない枠を潰すだと!?」
恐頭族「納得がいかん! 四天王を名乗るつもりなら、正々堂々と戦え!」
トゥルカナ「仕方ないな。 そこまで言うなら、かかってきなよ」
恐頭族「貴様に勝てば、俺が四天王だ!」
あの牛頭、かなり力がありそうに見える。
トゥルカナは構えなくて大丈夫なのか?
恐頭族「ぶもぉぉぉ!!」
恐頭族「ぶも・・・?」
〇黒
恐頭族「何だ!? 何も見えんだと!?」
恐頭族「おのれ! どこにいる!?」
トゥルカナ「ここだよ」
トゥルカナ「魔石を取り込んでいるからには、もっと手ごたえがあるかと思ったけど」
〇闇の闘技場
あいつ、目が見えていないようだった。
これもトゥルカナのスキルの効果なのか!?
トゥルカナ「これでわかった?」
トゥルカナ「ボクとキミたちじゃ格が違う。同じ四天王を目指すからって、同格になれると思うな」
アマデウス「・・・トゥルカナ」
トゥルカナ「あ、もちろん殺してないよ」
トゥルカナ「おーい、治癒師ー!」
二宮叶恵「はいっ」
恐頭族「ぶも!?」
トゥルカナ「どうする? 四天王決定戦、まだ続ける?」
恐頭族「す、すみませんでしたっ!」
ひとり、脱落した・・・
宿利ユウ「トゥルカナの圧勝だったけど、あいつのパワーもすごかった」
リーナ「うん。気を引き締めていこう」
〇闇の闘技場
アマデウス「ではこれより、魔王軍四天王決定戦を始める!」
アマデウス「精鋭たちよ、予選突破を目指して──」
アマデウス「行け!」
四天王決定戦楽しみぃ
四天王決定戦…ワクワクしますね〜!魔石で覚醒したユウの活躍に期待です!