ミュゲの香りを感じながら

ぐらっぱ

第二話 過去(脚本)

ミュゲの香りを感じながら

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〇黒
電話の声「もしもし!? 聞いてる? 夏菜、どうしたの!」

〇山中の坂道
「──次のニュースです」

〇ゴリラの飼育エリア
ニュースキャスター「鬼山動物園ではリニューアル工事が終わり 今日からオープンの為か 大勢の方で賑わっています」
ニュースキャスター「こちらが今回の目玉 新しくなったゴリラ園です ふれあいをテーマとして──」
ニュースキャスター「わぁ! 突然ゴリラさんが隣に」
ニュースキャスター「なーんて、驚きましたか? 実はガラス越しで見られるんですよ まるで隣に立っているみたいですね」
ニュースキャスター「そう、こんなに近くで ゴリラさん達を見る事ができるんですねー 大きーい」
ニュースキャスター「この子は桃ちゃん! 実は特技を持っているんです 目の前で見られるなんて迫力ありますね」
ニュースキャスター「桃ちゃーん 特技を見せてくれるかな?」
桃ちゃん「・・・」
ニュースキャスター「・・・」
ニュースキャスター「桃ちゃーん?」
桃ちゃん「・・・」
ニュースキャスター「今日はおねむのようですが 起きている時は特技を見せてくれる かもしれませんね!」
ニュースキャスター「どんな特技かは 皆さん是非鬼山動物園に来て 体験してみてくださいね」
ニュースキャスター「現場は以上です では──」
桃ちゃん「ウッホホー!」

〇黒

〇学校の駐輪場
金哉「なんかツライ事あった?」
金哉「いや、いつもより元気ないから」
金哉「悩みあったら、聞くよ?」
金哉「・・・本当に大丈夫?」
金哉「いつでも相談してくれよ」
金哉「気にしないで さ、行こう」
金哉「あっそういえば」
金哉「────」

〇黒
  あれ・・・?

〇古いアパートの部屋
???「おい、わかってるだろうな 誰かに喋ったら・・・」
「・・・」

〇黒
  これは夢これは夢

〇街中の道路
  金哉君はいつも優しい
  私には勿体ないくらい素敵な人
  どうしてこんな私の事を
  大事にしてくれるの?
  って聞いたら
  恥ずかしそうに
  お前が好きだから
  って言ってくれたっけ
  あの時はとても幸せだった
  こんな楽しいのは初めて
  嬉しかった
  あの頃の私は幸せに満ちていたと思う
金哉「────」

〇黒
  本当に幸せだった?

〇古いアパートの部屋
???「お前なんか好きじゃないよ どこか行ってしまえ!!」
「どうして? 大事だって言ったじゃない・・・」
???「本当は邪魔だったんだよ お前さえいなければあたしはもっと・・・」
「どうしてそんなこというの? どうして・・・」
???「お前なんか・・・」

〇黒
  聞いちゃダメ・・・

〇中規模マンション
金哉「それじゃ、また明日ね」
金哉「あっ・・・ そうだ、目をつぶって?」
金哉「まだだよ いいって言うまで開けないで」

〇黒
「いいよ」

〇中規模マンション
金哉「・・・」
金哉「好きだよ」
金哉「また、明日ね」
  彼の柔らかい唇の温もりは
  今も忘れない
  思えばあの時が一番幸せだった
  私の煤けた人生の中で一番・・・

〇テクスチャ3
  それから何人かとお付き合いしたけど
  みんななぜか連絡がつかなくなって
  そのまま別れちゃったな
  私、全然魅力ないのかなぁ
  誰も私の事なんて好きじゃないのかな
  私は愛されないのかな
  ダメな子だからいけないの?
  どうしたら愛してくれるの?

〇教室
???「私が守ってあげる 大丈夫 あなたの不幸は私が全て引き受けるから」
???「目が覚めたら嫌な事は全部消えるよ そしてあなたは幸せになるの」
???「その為に私がいるんだよ だから安心して」

〇ソーダ
???「あなたは私の大事な宝物よ」
「たからもの?」
???「そう、お前は僕たちの宝物だよ」
???「あなたは大事な大事な宝物」
???「大好きだよ」
「私もみんなだーいすき」
???「ずっと一緒にいるからね 約束よ」
「うん、やくそく!」

〇黒
「ねぇ、聞いてる?」

〇オフィスのフロア
香澄「どうしたの? ボーッとしちゃって 仕事でわからない事でもあった?」
夏菜「あ、えーっと! すいません、考え込んじゃって 今すぐやります」
香澄「大丈夫大丈夫 落ち着いてやりなよ 最初は難しいけどそのうち慣れるし」
夏菜「はい、がんばります・・・」
香澄「そーいや、総務の子と同級生だって? 知り合いいると心強いよねー」
夏菜「あ! えっと・・・優香さんですか?」
香澄「そうそう優香ちゃん アタシと同期なんだよー 彼女優しいよね」
夏菜「そうですね いい香りもするし・・・」
香澄「香り?」
夏菜「いえ、なんでもないです・・・」
香澄「そうだ、優香と今度飲みに行くんだよね 一緒に来る?」
夏菜「え!? いいんですか?」
香澄「いいよいいよ 仕事の悩みあったら聞いてあげられるし おいでよ」
夏菜「ありがとうございます」
香澄「それじゃ、後で連絡先教えるね 今はまず仕事がんばろ?」
夏菜「はい!」
夏菜「・・・」
夏菜(ミュゲの香りは私だけが気付いてる きっとみんな分からないんだわ)
夏菜(優しい香り・・・ なんだか心が落ち着くのよね)
夏菜(優香さんと同じ職場で良かった 会えば元気をもらえるもの)

〇黒

〇中規模マンション
  どうしてみんな居なくなるんだろ
  私が何かしたのかな
  そんな事を考えても仕方ない
  私は今を生きなければ
  ただ、最近は前よりも
  頭にモヤがかかったかのように
  昔の事が思い出せない気がする

〇タクシーの後部座席
夏菜(なんだか静かね)
夏菜(そういえばさっきの電話 美樹ちゃんって誰だったかなぁ)
夏菜(まぁ、いいや 疲れたなぁ・・・)

〇黒

〇空っぽの部屋
胡散臭そうな男「だからぁ! それは俺じゃありませんって!!」
胡散臭そうな男「そりゃあ酔っ払って喧嘩売った事は 何度もあったけどさぁ 記憶無いけど」
胡散臭そうな男「さすがにこれは無いはず 心当たりないし・・・」
胡散臭そうな男「・・・え? あいつのこと知りたい?」
胡散臭そうな男「あいつに出来そうな気はしないけど ただ可能性はありえるかなぁ ヤバかったし」
胡散臭そうな男「あんまり一緒にいなかったから 詳しくは知らないっすけど ヤバかったっすね」
胡散臭そうな男「いやあ、なんか色々ヤバかったっす」
胡散臭そうな男「あんなヤベーもん持ってるなんて 絶対普通じゃないっすよ もう関わりたくないっす」
胡散臭そうな男「え? ナニか知りたいって?」
胡散臭そうな男「なんというか・・・ アレですよアレ」
胡散臭そうな男「もっと詳しく知りたいって?」
胡散臭そうな男「えーっと・・・」
胡散臭そうな男「・・・」
胡散臭そうな男「──ですよ」

〇黒
「これは大事に持っていよう あの人と繋がった御守りに」
「きっと喜んでくれる 目が覚めたらきっと・・・」

次のエピソード:第三話 鈴蘭

コメント

  • 主人公の記憶の断片に現れる謎の男女。
    ミュゲの香りは事件を隠蔽する為の暗示?
    主人公は催眠術に掛かっているのでしょうか……。
    胡散臭い男の挙動が面白すぎました!
    タメ口からの「〜ッス」やアレアレ発言。
    『アレ』が何なのか気になります!
    ゴリラニュースに癒されました✨

  • ミュゼって鈴蘭の香りなんですね。
    一気に2話読みましたが、気になる展開です。
    彼が死んだ原因は?主人公の挙動に注目です。

  • がっつりゴリラ出てきて笑っちゃった😂
    まあ主人公からヤバい香りがしてきましたね…あと胡散臭い男の語彙がヤバいのにソレが何なのか凄く気になる不思議…

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