クラークコードー愛to憎しみの歴史IF小説ー

神テラス

第七話「北の大地 明治札幌③」(脚本)

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〇おしゃれな廊下
  元老と男子学生達が対面したその日の晩、兄貴分の男子学生の寮には、珍しく故郷からの便りがあった。
  兄貴分の男子学生は、寮での自室で寝転がりながら、手紙を開いて読んだ。
  妹が地元の名士と婚約したこと。
  俺が一族の誇りとして鼻が高いこと。
  そしてまた、母上の体調が、あんまり、かんばしくないことなどが、手紙には書かれてもいた。
新生「兄貴」(親父やお袋は、俺が政府高官として栄誉栄達することを望んでいる)
新生「兄貴」(妹の婚約話もある)
新生「兄貴」(俺がこのまま平穏無事に学問を修めて、政府高官として成功すれば、一族の子弟も、俺に続くことができる)
新生「兄貴」(田舎の武士として、長州や薩摩の連中が大きな顔をする中で、新政府に入っていくには、一にも二にも、学問しかない)
新生「兄貴」(俺の出世に、一族の未来が、かかってもいる)
  兄貴はそう思うと、たまらなくなり、手紙を握りしめた。
  元老が帰った後、学長からも男子学生達に通達があった。
  「お前達わかっているな」
  「この札幌農学校には、女学生など最初からいなかったのだ!」
  「また、クラーク教頭への見送りも、このスパイ事件も口外を一切禁じる!」
  「もしクラーク教頭の帰国に見送りに行ったものは、今後の栄達はないものと思え!」
  兄貴分の男子学生は、元老や学長が述べた言葉や通達を思い出してもいた。
  兄貴分の男子学生は急に怖くなって、布団にくるまって目を閉じた。

〇ファンタジーの教室
  クラーク博士と女学生達が荷造りをしている間、構内では官憲達がうろつくようになった。
  そんな中、クラーク博士は実験機器の引き渡しを名目に、教室に男子学生達を集めて、事の次第を話した。
  自分は米国のスパイではないこと。
  女学生達もまた、無実の罪であること。
  明治政府の命令で日本を離れること。
  最後に、島松の駅舎に立ち寄ってから、出発することなどを、男子学生達に淡々と話をした。
  男子学生達は皆、涙を流した。
  皆、クラーク博士と女学生達の無実を信じていた。
  中には、最後に島松駅舎へ、学生一同(放校処分になった女子学生達とともに)で、見送りに行くことを提案する者もいた。
  だが、クラーク博士はそれを辞めるようにと述べた。
  私を見送りに行けば、間違いなく、君たちの今後の立身出世がなくなること。
  これからの日本の発展には、君達の力が是が非でも必要である旨も話した。
  最後に、クラーク博士は、日本の未来を担う若者たちの教育に携われたことに、感謝の意を述べた。
  私は今後、どのようなことがあったとしても、君たちを責めるようなこともしない。
  君たちが、三度、私を『知らない』と言ったとしても、君たちは一生涯、私の大切な教え子だ。
  クラーク博士は教壇から、そう述べ終えると、涙を流して男子学生達と別れた。

〇教室の外
  一方、校内では、官憲達が、にらみをきかせていた
  兄貴分の学生がクラーク博士と別れて、
  トボトボと寮に帰ろうとしていると、
  官憲がやってきた。
官憲「男子学生一同で見送りの話でもしたんじゃないのか!」
新生「兄貴」「し、知りません」
  兄貴は逃げるようにその場を去った。
  兄貴が門に向かって歩いていると、今度は学長に出くわした。
  「君、まさかクラーク教頭を見送りにいくんじゃないだろうね?」
  校長が兄貴に尋ねると、兄貴は下をむいたまま答えた。
新生「兄貴」「見送りのことなど、何も知りません」
  兄貴分の学生が、正門にたどり着くと、今度は守衛の男が話しかけてきた。
  「丁度いいところに。クラーク先生を知りませんか?」
新生「兄貴」「知りません!」
  兄貴は逃げ帰るように、そのまま校舎を離れた。
  「教室の忘れ物が、守衛室に届いているだけなのですが・・・」
  警備員の男は、キョトンとした表情で、兄貴分の男子学生が、立ち去るのを見ていた。

次のエピソード:第八話「北の大地 明治札幌④」

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