恋におちたフェミニスト

冬木柊

エピソード4(脚本)

恋におちたフェミニスト

冬木柊

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〇高層ビルのエントランス
  わたしの社会人一年目は、
  忙しさとほろ苦さで終わった

〇ビジネス街
  社会人二年目の春

〇研究施設のオフィス
  四人の新入社員が入って来た
  広報部に配属された高浜美波は
  涼子の大学の後輩だった
課長「今年の広報は、ゆるふわ広報なんだな」
高浜美波「課長、それってどういう意味ですか?」
翔太「先輩は厳しいフェミニストだったからね」

〇オフィスのフロア
  新しい派遣社員さんも入社してきた

〇研究施設のオフィス
  新しい人が入ると人間関係が変わる

〇オフィスのフロア
  会社の話題は新しい人のことばかり

〇高層ビルのエントランス
  去って行った人のことはなにも話題にならなかった

〇研究施設のオフィス
  わたしは仕事に慣れ
  自分の時間を持てるようになった
高浜美波「二見先輩こんにちは」
二見明日香「こんにちは」
玲奈「明日香、今日、レインボー飲み会があるの 参加しない?」
二見明日香「レインボー飲み会?」

〇ビジネス街

〇おしゃれなレストラン
  レインボー飲み会とは
  会社で働く性マイノリティの飲み会だった
  社内で性マイノリティを
  カミングアウトしている人もいれば
  人事部に性マイノリティを伝えていても
  職場では性マイノリティを秘密にしている
  人もいるのだった
高浜美波「どうぞ二見先輩」
二見明日香「ありがとう」
廣岡正明「ねえ! 聞いてくれる!?️ わたしの恋話!」
玲奈「いいですよ、どうぞ」
廣岡正明「わたしね、つい最近フラれたの・・ 向こうからわたしのこと好きになっておいて」
廣岡正明「別れる時はメールひとつでお終いなのよー」
マリアーナ・斉藤「聞いていい? 体の関係はあった?」
井上香澄「それはあったでしょ、泣いているんだから」

〇雑誌編集部
  別れてほしい、もう会うこともやめたい
廣岡正明「・・・・・。」

〇オフィスの廊下
  わたし、いてもたってもいられず
  オフィスを飛び出して会社の廊下を走ったの

〇廊下のT字路
  それでトイレで泣こうとしたの・・

〇おしゃれなレストラン
廣岡正明「でも多目的トイレって障がい者の人が使っていてすごく長く使うことってあるじゃない?」
加倉井文乃「そうよねえ」

〇廊下のT字路
  わたしちゃんと待ったの
  そしたら・・
  あんた馬鹿じゃないの!
  ここは多目的トイレよ!

〇おしゃれなレストラン
廣岡正明「そりゃ、わたしだって多目的トイレで 泣くなんて勝手なんだけどさ!」

〇飛行機のトイレ
  ようやくトイレに入れたけれど

〇飛行機のトイレ
  もー臭くてたまらないのよ!

〇おしゃれなレストラン
廣岡正明「もー勘弁してよ!あの臭い親父って感じよ!」
井上香澄「そうよねえ わたしたちって悲しいことがあっても トイレで泣くこともできないのよねえ・・」
新庄翔平「そしてフラれた時は会うことすら拒まれる 悲しいよね・・」
高浜美波「・・・・・。」
二見明日香「・・・・・。」

〇おしゃれなレストラン
「もー、しんみりしないで! 飲みましょ! 飲みましょ!」

〇ビジネス街
  翌日

〇研究施設のオフィス
二見明日香「どうしたの?」
翔太「佐倉が発注を間違えて 違う設計のシステムが納品されそうなんだよ」
二見明日香「そうなんだ」
高畑「それでそのシステムのエンジニアに 書き換えてもらうよう頼んだら」
高畑「ルールに従って納品を遅らせて修正しろって言うんだよ」
二見明日香「そうでしょうね」
部長B「遅れた、すまなかったな!」
高畑「部長待ってましたよ」
部長B「要するに俺から そのエンジニアを説得すればいいんだな?」
高畑「そうです、パワハラティブに」
課長「部長、すみません、わたしの力が足りず・・」
部長B「気にするな! じゃ、みんな行くぞ!」
課長「はい!」
二見明日香「みんな?」
高畑「営業みんなで押しかけて圧力をかけるんだよ」

〇オフィスの廊下
エンジニア「ふざけんなボケナスが! ルールを守るのが先だろ!?️」
エンジニア「部長が来たからってなんだって言うんだよ!」
高畑「あらら・・」
部長B「すまない、みんな・・」
部長B「俺では力になれないようだ・・」
課長「部長すみません、ご迷惑をおかけして・・」
高畑「でも、どうすりゃいいんだ?」
磯村「明日香ちゃん、明日香ちゃんがエンジニアさんに可愛く頼んでみたらどうかな?」
二見明日香「えっ?」
翔太「そうだな、ダメもとで二見お願いしてみろよ」
課長「二見さん、二見さんがそういうのは嫌いなのはわかってる」
課長「でも、ダメでもともとだ 二見さん、エンジニアを説得してみてくれ!」

〇雑誌編集部
二見明日香「すみませーん」
エンジニア「なにしに来た! 誰が来ても無駄だ!」
「あっ!」
廣岡正明「・・・・・。」
二見明日香「・・・・・。」
廣岡正明「君はなにをしに・・?」
二見明日香「部長と同じ用件です、部下なので」
廣岡正明「・・・・・。」

〇オフィスの廊下
課長「二見さん、どうだった?」
二見明日香「今回限り承認いただけるそうです」
「えっ!?️」
磯村「すごい!  やっぱり二見さんは営業部のエースだ!」

〇研究施設のオフィス
  二見さん、これは貸しだからね、次はないよ
  わかりました ありがとうございます
  じゃ、借りを返しに
  来週のレインボー飲み会参加ね!

〇ビジネス街
  一週間後

〇おしゃれなレストラン
廣岡正明「それでね!、二見ちゃんひどいのよ! わたしが部長を追い払ったのに! 無理を押し付けに来たのよ!」
羽田ミチル「ねえ、二見ちゃんは女子高出身なんだって? やっぱり一線を超えた関係って多かった?」
二見明日香「うーん、わたしが知る限りないですね」
廣岡正明「なに言ってるのよ! みんな隠れてやっているのよ!」
廣岡正明「わたしなんてね・・ 初めては無理矢理だったのよ・・」
廣岡正明「もしあれが優しくしてくれていたら・・ 普通の男として生きていけたかもしれないの」
蘭堂コウ「でも実は感じていた・・、そうだったっけ?」
廣岡正明「そうなのよ! 人生最高の体験! 一度でその人に心も体も奪われたの!」

〇おしゃれなレストラン
「二見ちゃん飲んで! 女子高の素敵な先輩の話とか聞かせてよ!」

〇テラス席
廣岡正明「じゃ、みんな、さよならー」
新庄翔平「バイバイ」
高浜美波「蘭堂さん、今日もありがとうございました」
蘭堂コウ「高浜さん、このレインボー飲み会 もうお任せして大丈夫ね?」
高浜美波「はい」
二見明日香「高浜さん、この人は?」
高浜美波「レインボー飲み会を企画いただいた 社外のライターさんです」
蘭堂コウ「どうも、蘭堂と言います」
蘭堂コウ「A Iシステムさんにはお世話になっています」
二見明日香「そうなのですね」
蘭堂コウ「わたしは性マイノリティの 社会福利を企業に提案しているのです」
蘭堂コウ「性マイノリティの皆さんに 心を休ませる庭を作りたいのですよ」
二見明日香「・・・・・。」
名取孝子「蘭堂さん、今日もありがとうございました」
名取孝子「わたし、この飲み会お陰で 自分一人じゃないんだって思えて・・」
名取孝子「とても救われています」
蘭堂コウ「ありがとう、嬉しいわ」
名取孝子「蘭堂さんの取り組み、応援します!」
蘭堂コウ「ありがとう!」
名取孝子「じゃ、また!」
蘭堂コウ「またね!」
名取孝子「はい!」
二見明日香「・・・・・。」
蘭堂コウ「高浜さん、この後、例の取材つき合います?」
高浜美波「そうですね、お願いします」
高浜美波「二見先輩、一緒に行きましょうね」
二見明日香「えっ?」

〇ネオン街

〇入り組んだ路地裏

〇ビルの裏
二見明日香「あれ?、高浜さんは?」
蘭堂コウ「用事ができたみたいですよ」
二見明日香「えっ?」

〇ホストクラブのVIPルーム
二見明日香「ここは・・」
蘭堂コウ「ホステスさんの取材なのですよ」
二見明日香「えっ?」
蘭堂コウ「二見さんは横にいるだけで大丈夫です」
蘭堂コウ「社会勉強ですよ」
二見明日香「・・・・・。」
サラ「こんにちは」

〇ホストクラブのVIPルーム
  わたしは突然
  ホステスさんの取材に付き合うことになった
  最初は、好きな食べ物や好きな服
  当たり障りのない会話ばかりだったが
  すぐに話は核心に入っていった

〇ホストクラブのVIPルーム
  初めて男の人と付き合ったのは?
  十五歳ですね
  その頃はどんな女の子だった?

〇メリーゴーランド
  初体験話を終わらせた後は遊んでましたね
  遊んでいた?

〇カラオケボックス
  夜遊びして
  お金がなくなったらそのまま稼ぎました
  そのまま稼ぐ?

〇雨の歓楽街
  男を見つけて・・

〇カラオケボックス
  そのまま誘うんですよ
  キスをして、心を許させて
  男を犯すんですよ

〇雨の歓楽街
  ・・・・・。
  ふふ、言葉が出ませんか?
  このまま、わたしが話しましょうか?

〇アーケード商店街
  その頃付き合った男は500人くらいですね
  一人五万円くらい貰っていましたけど
  一万円で、遊んであげたこともありました

〇入り組んだ路地裏
  飲んで酔って、そこの路地裏でしたことも
  男が喜ぶのでベルトを外してあげて
  右手の指先でしてあげるんですよ

〇水中

〇清潔なトイレ
二見明日香「・・・・・。」
二見明日香「ここ・・は?」

〇ホストクラブのVIPルーム
二見明日香「・・・・・。」
ホステスA「あら、大丈夫?」
二見明日香「ここは?」
ホステスA「あなた、 気分を悪くしてトイレで休んでたのよ」
二見明日香「そうだったのですね・・」
サラ「ふふ、あんな話に気分を悪くするなんて かわいい」
二見明日香「い、いや、ごめんなさい」
サラ「怖がらなくて大丈夫よ」
サラ「あんな話全部嘘なんだから」
二見明日香「嘘?」
ホステスA「こんな店に来る男たちが コンビニのかき氷蜜柑を食べるのが幸せって女に興味示すと思う?」
二見明日香「・・・・・。」
サラ「ここの女は淫乱で、すぐ酒に酔って その辺の路地裏でなんでもしてくれるって、」
サラ「そういう噂を流すものなのよ」
ホステスA「まず、「男を犯す」って定番よね」
サラ「「500人の男と付き合う」もね」
二見明日香「・・・・・。」
サラ「もう帰った方がいいですよ」
二見明日香「・・・・・。」
二見明日香「そうします」

〇ビルの裏
二見明日香「それじゃ、おじゃましました」
サラ「気をつけてね」
二見明日香「はい」

〇黒
明日香「えっ?」
  ほとんどが嘘でも・・
  少しはほんとうのことがあったかもよ

〇ビルの裏
二見明日香「・・・・・。」
二見明日香「・・・・・。」

〇研究施設のオフィス
  砂田真帆さんも

〇雑誌編集部
  エンジニアの廣岡さんも

〇テラス席
  ライターの蘭堂さんも

〇ホストクラブのVIPルーム
  そして彼女も・・

〇水中
  みんな二つの顔を持っている

〇ビルの裏
  わたしにももう一つの顔があるのだろうか?

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