お義母さまといっしょ!? ~転生したら姑もいた件~

美野哲郎

エピソード1(脚本)

お義母さまといっしょ!? ~転生したら姑もいた件~

美野哲郎

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〇洋館の廊下
  とうとう 辿り着いたわ
ヒース・フローレンス「どうしたんたい? アンジェリカ」
アンジェリカ・ロウリー「緊張しているのかも知れません なにせ王妃様──いえ」
アンジェリカ・ロウリー「愛するヒースのお母さまと 初めてお目にかかるのですから」
ヒース・フローレンス「あはは 愛するだなんて そんな」
ヒース・フローレンス「でも大丈夫 母上もきっと 君を気に入ってくれるから」
ヒース・フローレンス「朗らかで 邪気のない いつものアンジェリカでいてくれれば それでいいんだよ」
アンジェリカ・ロウリー「ええ そうね」
アンジェリカ・ロウリー「ありのままの ウソのない私で お母様と仲良くなれたら それってとっても幸せなことだわ」
ヒース・フローレンス「さあ行こうか 今日は人払いしてある 邪魔者はいないからね」
アンジェリカ・ロウリー「ええ まいりましょう」
  そう ありのままの ウソのない私で
  自分の欲望に忠実であればいいのだ

〇源泉
  グリーンヒルド公国。
  魔力の源「エナジーフロウ」の産出国。
  小国にして、世界に多大な影響力を持つ
  この国の、実質的な支配者である──

〇西洋の城
  ──王妃ジョディ・フローレンス
  憎き彼女の喉元まで
  とうとう私は辿り着くことが出来た

〇洋館の廊下
  ごめんなさいね ヒース皇太子
  あなたの純粋さには助けられてきたわ
ヒース・フローレンス「さあ いこうか 母上のもとへ」
アンジェリカ・ロウリー「ええ まいりましょう」
  その人に 復讐を果たす為に

〇洋館の玄関ホール
ジョディ・フローレンス「あら ヒース」
ヒース・フローレンス「ご機嫌うるわしゅう 母上」
ジョディ・フローレンス「ええ 訪ねてくれて嬉しいわ それで どうかしたの?」
ヒース・フローレンス「え・・・言伝しておいただろう?」
ヒース・フローレンス「今日は ぼくの大切な友達を 母上に紹介したいからって」
ジョディ・フローレンス「友達? 友達と言うのは──」
ジョディ・フローレンス「先ほどから私にずいぶんな眼差しを よこしてくれている」
ジョディ・フローレンス「そこの下賤な町娘のことかしら?」
アンジェリカ・ロウリー「え」
ヒース・フローレンス「母上! なんて失礼なことを言うんだ」
ヒース・フローレンス「彼女ほどの素朴な微笑みを ぼくは未だかつて 見たことがないくらいだよ」
ジョディ・フローレンス「フフッ かわいいのねえヒース 貴方はそのままでいなさい」
ジョディ・フローレンス「貴方に取り入るドブネズミは 私が駆除してあげるからね」
  そんな!? バレている?
  私の正体に気づいたとでもいうの?

〇草原の道
アンジェ「パパあー パパあー うわああああ」
クリント「ダメだ、アンジェ リアムおじさんはもう」
クリント「逃げよう 生きてるとわかったら アンジェまで殺されるかも知れない」
アンジェ「復讐・・・しなきゃ」
クリント「今はその身を隠して 復讐の機会を待つんだ」
アンジェ「復讐・・・しなきゃ 復讐・・・しなきゃ」
クリント「アンジェ・・・」
アンジェ「私は あの人に復讐しなきゃ!!」
クリント「・・・”あの人”?」

〇洋館の玄関ホール
  そう 私はずっと 
  この人に復讐したかった
  ずっと・・・? それって一体いつから
  いえ どうでもいいの
  今は目の前のことに集中しなさい
アンジェリカ・ロウリー「あ あの 王妃様 失礼がありましたら申し訳ありません」
アンジェリカ・ロウリー「私はなにぶん 田舎貴族と揶揄される身 このような素晴らしいお城にも」
アンジェリカ・ロウリー「そして王妃様のあふれる気品そのものにも 気後れしてしまっているのです」
ジョディ・フローレンス「貴族? いやしくも貴女 自分は貴族の出だと名乗っているの?」
ヒース・フローレンス「母上 そのへんになさってください」
  そう・・・”わかる”のね
  腐っても この人はこの国の王妃
  ならば 私も少しは
  話に「真実」を織り交ぜねば
アンジェリカ・ロウリー「──お恥ずかしながら 私はいっとき  広い世界と庶民の暮らしを知りたいと」
アンジェリカ・ロウリー「身分を偽り 旅一座に加わって 流浪の旅に出ていた時期がございます」
アンジェリカ・ロウリー「その折 階級に拘らず 多くの役に扮してまいりました」
アンジェリカ・ロウリー「旅一座の馬車の中に 貴族の嗜みを 然るべき気品を 置いてきてしまったのかも知れませんわ」
ヒース・フローレンス「アンジェリカ そんな危険な旅に出ていたのかい よくぞ無事で──」
ジョディ・フローレンス「なるほど つまり芝居ならお手の物と」
ジョディ・フローレンス「世間知らずの皇太子を手なづけるのに そう苦労はなかったのではなくて?」
アンジェリカ・ロウリー「そう・・・かも知れませんね 私は愛するヒース様を振り向かせるのに 必死でしたから」
ヒース・フローレンス「アンジェリカ!?」
アンジェリカ・ロウリー「ならばこそ 一度始めたこの芝居 一生涯かけて最高の名演としてみせますわ」
アンジェリカ・ロウリー「ずっと ヒース様には 笑っていて欲しいですもの」
ジョディ・フローレンス「ふーん そうそうボロは覗かせないのね」
  王妃・・・この人
  まったく表情が読み取れない
ノーヴル男爵「あ~・・・そろそろ よろしいですかな」
「だ、誰!?」
ジョディ・フローレンス「失礼ですよ 先客に向かって」
ジョディ・フローレンス「このお方はユーフォスティ王国より アルケミーフロウの買付にお越し頂いた ノーヴル男爵であられます」
ノーヴル男爵「下賤の民と言われれば 私めほど 下賤の民もそうおられまい」
ノーヴル男爵「ですからこそ グリーンヒルド公国から 輸入して頂けるフロウに どれほど助けられていることか」
ノーヴル男爵「世の中では魔力の源となる エナジーフロウこそ重宝されておりますが」
ノーヴル男爵「魔術師の素養など欠片も継承されなかった 我が一族にとっては 錬金術の源となる アルケミーフロウこそが命綱」
ノーヴル男爵「どうぞ皇太子様 以後 お見知りおき下されば幸いにございます」
ジョディ・フローレンス「さ わかったわね 今は公務の最中なの 名前だけはご立派な見知らぬ小娘に 割いてる時間はございません」
アンジェリカ・ロウリー「──」
ジョディ・フローレンス「──」
ヒース・フローレンス「──」
アンジェリカ・ロウリー「──」
ジョディ・フローレンス「──」
ヒース・フローレンス「あ、あの アンジェリカ 一度引き返して もう一度」
アンジェリカ・ロウリー「僭越ながら── ユーフォスティ王国に於きましては」
アンジェリカ・ロウリー「伯爵以下の爵位の家の者が 錬金術を生業とする事 許されておりません」
ヒース・フローレンス「えっ?」
アンジェリカ・ロウリー「大変失礼とは存じますが ノーヴル様は爵位にして最下位につける 「男爵」であらせられるのですよね?」
ノーヴル男爵「・・・そういえば 私めが幼少の頃には そのような 旧弊の法もあったやも知れませぬな」
アンジェリカ・ロウリー「いいえ これは公然の法ではなく あくまでも貴族感で共有される 暗黙のルール」
アンジェリカ・ロウリー「私が旅一座の一員として ”三年前に”かの国で見聞きした実態ですわ」
アンジェリカ・ロウリー「よろしければ より詳細に お話差し上げることも可能でございますが」
ジョディ・フローレンス「ふん・・・ と 下賤な小娘が申しておりますが」
ノーヴル男爵「あ──・・・」
ノーヴル男爵「まあいいや 幸い 人払いはしてあったしな」
ヒース・フローレンス「え?」
ノーヴル男爵「来い!」
  ──
ヒース・フローレンス「うわあーっ 何者だコイツらっ」
アンジェリカ・ロウリー「落ち着いてくださいヒース様 どうか 私の後ろに」
アンジェリカ・ロウリー「──王妃様も お早く」
ジョディ・フローレンス「・・・ええ」
アンジェリカ・ロウリー「結界により城内でフロウの使用は制限されている筈ですが これは」
ノーヴル男爵「ほう? 続けてみたまえ」
アンジェリカ・ロウリー「恐らく 辺境の地で生み出された 極秘裏のエナジーフロウ使用法 ──即ち闇魔法」
アンジェリカ・ロウリー「結界をかい潜るため 送り込まれた生き霊の魔力は きわめて微弱であるとみました」
ノーヴル男爵「ふん 微弱ときたか 貴様が何者か知らないが」
ノーヴル男爵「その微弱な魔力に飲み込まれるがいい」
アンジェリカ・ロウリー「紅のアルケミー、錬成!」
ノーヴル男爵「バカな! 魔法ではなく錬金術によって この一瞬で剣を錬成したというのか」
アンジェリカ・ロウリー「ローズ・ブラッド!!」
「ぐわあああああ」
ノーヴル男爵「ちっ 初手から躓くとはなぁ」
  気のせいか 後ろで王妃もまた
  何かを発動させかけたような
ジョディ・フローレンス「──」
アンジェリカ・ロウリー「さあ 観念して全て白状しなさい 一体 なにが目的でこの国に──」
ノーヴル男爵「言うと思ったか 出直してくらあ」
アンジェリカ・ロウリー「消えた!? 彼もまた生き霊・・・!?」
ヒース・フローレンス「あ・・・あ・・・」
  しまった!
  やり過ぎてしまったかしら
ヒース・フローレンス「アンジェリカあ~ 君って人は どこまで素晴らしいんだあ~」
アンジェリカ・ロウリー「あ あはははは これからも ヒース様のことは 私が守って差し上げますわ」
ヒース・フローレンス「どうだい母上 これ以上の花嫁候補がいると思うかい?」
ジョディ・フローレンス「・・・・・・」
アンジェリカ・ロウリー「?」
ジョディ・フローレンス「フン いいわ でしたら今後一年間 あなたは私に仕えなさい アンジェリカ」
アンジェリカ・ロウリー「!?」
ヒース・フローレンス「ええっ!?」
ジョディ・フローレンス「そこでたっぷり試してあげます あなたが本当に──」
ジョディ・フローレンス「このグリーンヒルド公国の 次期王妃に相応しいのか 否か」
アンジェリカ・ロウリー「あ・・・」
アンジェリカ・ロウリー「はい 喜んで 王妃様」
ジョディ・フローレンス「そうね アンジェリカ 従者を呼ぶには長ったらしいわ」
ジョディ・フローレンス「今日からあなたのことは ”アン”と呼ぶわね」
アンジェリカ・ロウリー「アン・・・?」
ジョディ・フローレンス「異論 ないわよね? アン」

〇広い和室
  杏 !!

〇洋館の玄関ホール
アンジェリカ・ロウリー「──!!」

〇畳敷きの大広間
  あなたはいつになったら
  この家に嫁に来た自覚をもつの!!
  使えない嫁だよ まったくね!!

〇おしゃれなキッチン
  ご、ごめんなさい ごめんなさい

〇古い本
  ──お義母さま!!
  これは・・・私?

〇洋館の玄関ホール
  思い・・・出した
  この人は 私アンジェリカ・ロウリーこと
  アンジェ・ブルームの父の仇
  そして──
  前世の私 倉木杏を死に追いやった
  悪魔の姑 古手川冴香だ
ジョディ・フローレンス「どうしたの? なんとか答えなさい」
ジョディ・フローレンス「──アン」

次のエピソード:エピソード2 悪魔の姑

コメント

  • ひいいい、タイトルでわかっているとはいえ、
    今後の展開が恐ろしい…!
    強く立ち向かって、アン!!😅

  • 死んでも苦痛が続くなんて、まさに地獄...💦エグ過ぎて体力奪われてしまいました...😰
    バトル描写もあって、サービス精神盛りだくさんな印象を受けました🙌

  • うわぁイヤですね😱
    嫁姑問題といえば現代のドロドロですが、それを異世界にまで持ち込んだ設定がおもしろいです!

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