タケオ

れこん

2話 いってらっしゃい(脚本)

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〇スナック
内藤要(ないとうかなめ)「ん・・・朝か。起きてリサちゃんの為に朝食用意しないと・・・」
内藤要(ないとうかなめ)「あっ! そうか──!」
  昨晩酔い潰れてタケオに店に泊まらせてもらったのを僕はすっかり忘れていた。
  けれど、店内を見渡しても、タケオはどこにも居なかった。
内藤要(ないとうかなめ)「タケオはどこに・・・」
武雄(タケオ)「おう、おはよう。ぐっすり寝られたか?」
武雄(タケオ)「それと時間まだあるだろ?」
武雄(タケオ)「今から飯を作るからちょっと待っとけよ」
内藤要(ないとうかなめ)「えっ、もしかして今さっきその為に買い物行ってたの?」
武雄(タケオ)「まあな。けどコンビニでしか材料揃えれなかったから、あんまし期待すんなよ」
  タケオはそう言うと、僕が断る暇もなく店のキッチンで買ってきた食材を調理し始めた。

〇スナック
武雄(タケオ)「お待たせ」
内藤要(ないとうかなめ)「・・・」
武雄(タケオ)「どうした、食べないのか?」
内藤要(ないとうかなめ)「ううん。いただくよ」
内藤要(ないとうかなめ)(タケオはどうしてこんなに尽くしてくれるんだろう?)
内藤要(ないとうかなめ)「いただきます」
内藤要(ないとうかなめ)「うまい! とっても家庭的で温かい味だよ!」
  タケオが用意してくれた朝食はハッキリ言えばレトルトのご飯と味噌汁だ──
  だがタケオは、それに買ってきた食材で一手間加えて美味しく仕上げていた。
武雄(タケオ)「ふふ、うまいか。元はレトルトだぞ?」
内藤要(ないとうかなめ)「それでもうまいよ!」
内藤要(ないとうかなめ)「”毎朝”食べたいくらいだ」
武雄(タケオ)「へぇ・・・、”毎朝”ねぇ・・・」
武雄(タケオ)「それだと奥さんに怒られるんじゃないか?」
内藤要(ないとうかなめ)「こふっ!!? ゲホゲホゲホ!」
武雄(タケオ)「はい水」
内藤要(ないとうかなめ)「ありがとう・・・」
内藤要(ないとうかなめ)(リサちゃんのこと、すっかり忘れてた)
  スマホを確認したが、妻からの着信は一切ない。
  妻は僕に全く興味がないのだろうか
  いや、そうじゃないと願いたい。きっと別の理由の筈だ。
内藤要(ないとうかなめ)(とりあえず今は一旦リサちゃんに連絡しよう)

〇スナック
内藤理沙「んー・・・もしもし?」
内藤要(ないとうかなめ)「あっ、リサちゃん昨日は家に帰れなくてごめんね。実は昨晩部長に──」
武雄(タケオ)「シーッ! ここに来たことは奥さん黙っとけ!」
内藤要(ないとうかなめ)「──えーと・・・部長に残業を押し付けられて会社に寝泊まりしたんだ」
内藤理沙「へぇー、そうなん・・・。大変じゃったね」
内藤要(ないとうかなめ)「う、うん・・・。ところでリサちゃんは大丈夫? 漫画に集中し過ぎて無い?」
内藤理沙「えぇ? 集中するに決まっとるじゃろ」
内藤理沙「なんせ今度応募する漫画のコンテストの締め切り近いんじゃけえ」
内藤理沙「おかげでホンマに寝不足でキツイわ・・・」
内藤要(ないとうかなめ)「駄目じゃないか! そこがリサちゃんの悪い癖だよ!」
内藤要(ないとうかなめ)「そうやって身体を壊しでもしたら元も子もないだから!」
内藤要(ないとうかなめ)「いいかい? 確かに締め切りは近いけど、まだ時間はあるんだし今日は漫画を書くのをやめてしっかり休む事、」
内藤要(ないとうかなめ)「それと・・・」
内藤要(ないとうかなめ)「・・・。・・・」

〇スナック
内藤理沙「──はいはい。カナメっちの言うとうりにするけえ」
内藤理沙「たちまち眠気がやばいけぇ寝るねー。お休み」
内藤要(ないとうかなめ)「あ──理沙ちゃん!?」
  通話が終了しました
武雄(タケオ)「奥さんを大事にしてるんだな」
内藤要(ないとうかなめ)「はは、恥ずかしいところみられちゃったな」
武雄(タケオ)「別に恥ずかしくないだろ」
武雄(タケオ)「寧ろ幸せそうに感じるな」
武雄(タケオ)「カナメはマジで世間一般的に見ていい夫だとオレは思うぜ」
内藤要(ないとうかなめ)「そ、そうかな・・・はは」
  見た感じタケオは明らかに僕より年齢は下だ。
  なのに上から目線で褒められても別に悪い気はしない。
  寧ろ、しっかりした青年から褒められて素直に嬉しさと照れくささを大きく感じる
内藤要(ないとうかなめ)「あ、そういえばタケオは学生なの?」
武雄(タケオ)「おいおい、店子に対してそういったプライベートな質問はご法度だぜ?」
内藤要(ないとうかなめ)「ごめん(知らなかった)」
武雄(タケオ)「けどまぁ、そうだな・・・」
武雄(タケオ)「どうしてもオレの事を知りたいなら、店に来て俺を指名してくれたら考えてやってもいいぜ?」
内藤要(ないとうかなめ)(そうか成る程)
内藤要(ないとうかなめ)(タケオがこんなおもてなししてくれたのはきっと僕を新規のお客さんとして抱え込みたいからなんだ)

〇狭い裏通り
内藤要(ないとうかなめ)「そろそろ出勤するよ。朝食ありがとう」
武雄(タケオ)「おう、”また来いよ”」
武雄(タケオ)「それと──”いってらっしゃい”」
内藤要(ないとうかなめ)「・・・」
  僕は既婚者だ。だからもうこの店には来ないようにしよう。そう決めた。
内藤要(ないとうかなめ)「──いってらっしゃい・・・か」
内藤要(ないとうかなめ)(言われたのは新婚の時以来だな)
  あのタケオのいる店に、いっときの心地よい夢を見させてもらった。僕はそう思うことにした。

〇オフィスのフロア
佐伯部長(さえきぶちょう)(くぅ~、俺としたことが、昨日ハメを外し過ぎちまった。二日酔いで頭がいてえ)
内藤要(ないとうかなめ)「部長、頼まれた資料の確認と決裁をお願いします!」
佐伯部長(さえきぶちょう)「ば、バカもう少し声を抑えろ。二日酔いで頭にひびく。それと要件は後にしろ」
内藤要(ないとうかなめ)(えぇ~。普段体調管理できない奴はだらし無いとか言ってるくせに)
内藤要(ないとうかなめ)「部長! 今日中にこれだけは早く決裁頂かないと業務に支障が出ます!」
内藤要(ないとうかなめ)「しかももうすぐボーナスの査定ですよ! ここでウチの部所だけ支障が出て業務が遅れたら僕だけじゃなく全員に影響がでます!」
メガネの会社員「そうですよ部長! 僕が渡した資料もまだ決裁貰えてなくて業務が滞ってるんですから頼みます!」
女性社員「私もです部長!」
佐伯部長(さえきぶちょう)「わ、分かったからお前ら」
佐伯部長(さえきぶちょう)「今日は残業無しだ。その代わり明日までに全部俺がやるから早く帰れ!」

〇アパートのダイニング
内藤要(ないとうかなめ)「ただいまー!」
内藤要(ないとうかなめ)「あれ?(リサちゃん寝てるのかな?)」
内藤要(ないとうかなめ)「リサちゃん?」

〇本棚のある部屋
内藤理沙(ないとうりさ)「うぅ・・・」
内藤理沙(ないとうりさ)「全然ダメじゃー!! 良い展開が思いつかーん!!」
内藤要(ないとうかなめ)「リサちゃん!」
内藤要(ないとうかなめ)「今日は体調の事を考えて休むように言ったよね!?」
内藤理沙(ないとうりさ)「あ・・・カナメっちお帰り。えーとその──今日は早いんじゃね」
内藤要(ないとうかなめ)「たまたま定時で帰れてね。それよりも今朝電話してからずっとやってたのソレ」
内藤理沙(ないとうりさ)「う、うん・・・ちょっと仮眠してからずっと・・・」
内藤要(ないとうかなめ)「いい加減にしろ!」
内藤理沙(ないとうりさ)「ご、ごめんカナメっち──きゃっ!?」
  僕は妻を無理矢理抱き寄せた
内藤要(ないとうかなめ)「リサちゃん・・・いつも僕が用意したご飯、あんまし食べてないし、ここ最近きちんと睡眠もしてないでしょ?」
  妻の身体は白くて細く痩せて、少し触っただけでとても不健康だと分かった。
内藤要(ないとうかなめ)「だからもう休んで欲しい。見てられないよ」

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コメント

  • カナメの心を、タケオが少しづつ占めていく展開が気になります。ここからこの二人に対しての葛藤がどうなっていくのだろう(-ω-;)

  • タケオも可愛い!リサちゃんも可愛い!
    2人とも情感豊かに描かれていて、カナメっちも含めてどのキャラクターにも感情移入したくなりますね!

  • 夢に見ちゃってるじゃないですか。
    道を逸れないよう願うばかりです。しかし夢追い人の相方は大抵報われないですよね…。救いを求めて離れてしまうのか…。

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