機械人形に藍染めて

毬田祐

母、我が子を回収する(脚本)

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毬田祐

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〇荒廃した市街地
  西暦2X X X年、科学が進歩しても、人々はまだ戦争に明け暮れていた。

〇秘密基地のモニタールーム
海鳴玲子「・・・・・・」
研究員A「エリア21にて45- Xが敵と遭遇、戦闘開始!」
研究員A「撃破しました!」
研究員A「この調子なら拠点も突破できそうです!」
研究員A「やりましたね、所長!」
海鳴玲子「フォーメーションの一部に乱れがある」
海鳴玲子「まだ改良の余地があるわ」
研究員A「(厳しい・・・)」
研究員A「(けど、カッコいい・・・)」
研究員A「ん? なんだあれ?」
海鳴玲子「どうしたの?」
研究員A「エリア12の映像を見てください」

〇荒廃したセンター街
  荒廃した市街地。
  戦車が闊歩し、銃声が飛び交う。
マフギ「はあ・・・・・・はあ・・・・・・」
  そんな戦場の真っ只中を、1人の少女がふらふらと歩いている。
  もちろん人間ではない。対兵器専用ロボット:モデルMFGである。
  なぜ人型をしているのかといえば、市民に紛れるため、そして対兵器に有効な機動力を得るためだ。
  その細い腕には超密度の筋肉が織り込まれ、脳には特殊格闘技術がインプットされている。

〇秘密基地のモニタールーム
研究員A「あれは・・・!?」
海鳴玲子「3ヶ月前に投入したMFGね。様子がおかしい」
研究員A「戦車が近くを走っているのに、破壊行動をしません!」
研究員A「不具合があるのでしょうか?」
海鳴玲子「外傷があるようには見えない」
海鳴玲子「にも関わらず、戦闘を回避しようとしている」
研究員A「なんというか・・・変な言い方ですが・・・」
海鳴玲子「なに?はっきり言いなさい」
研究員A「自分の意思で逃げているように見えます」
海鳴玲子「どういうこと?」
研究員A「ほら、あの表情・・・」
海鳴玲子「表情?」
海鳴玲子「そんな高度なプログラム、戦闘用に組み込んでいるわけないでしょう」
研究員A「分かっています! しかし、見てください」
研究員A「恐怖や苦痛が読み取れませんか?」
海鳴玲子「・・・・・・」

〇荒廃したセンター街
  MFG-6の近くで爆撃が起きる。
マフギ「ううっ!」
  小さな身体が地面に叩きつけられる。
マフギ「はぁ・・・はぁ・・・」
  煤に塗れた銀色の短髪。
  戦闘服はところどころが破れ、金属の繊維がむき出しになっている。

〇秘密基地のモニタールーム
研究員A「もう見てられませんよ所長ォォ!」
海鳴玲子「・・・回収班を向かわせなさい」

〇魔法陣のある研究室
マフギ「・・・・・・」
  実験室。
  強化ガラスの向こうで、回収されたMFG-6がスリープしている。
研究員A「隅々までチェックしましたが・・・」
海鳴玲子「どこにも損傷は見受けられないわね」
研究員A「あの様子はなんだったんでしょうか?」
海鳴玲子「再起動してみましょう」
  レイコがキーボードを叩くと、MFG-6がゆっくりと目を開けた。
マフギ「ここは・・・」
研究員A「ここは研究室だよ」
マフギ「ひっ!」
研究員A「おっと、怖がらなくてもいいからねー」
海鳴玲子「驚いたわ。本当に人間みたいな反応するのね」
研究員A「突然変異・・・」
海鳴玲子「機械にそんなものあるはずがない」
海鳴玲子「とにかく、戦闘ができるのか試さないと」
研究員A「試す?」
  レイコがまたキーボードを叩く。
  ガラス奥の壁が開き、銃火器を装備した物々しい雰囲気のロボットが現れる。
  赤いセンサーがぐるりと見渡し、MFG-6を捉えた。
マフギ「ひっ!」
  銃を構え、MFG-6に向かって発砲し始める。
マフギ「ひっ、ひいいい!」
研究員A「所長!」
海鳴玲子「大丈夫よ」
海鳴玲子「特殊装甲だから」
  銃弾は、小さな背中やお尻に命中し、ポコポコと豆鉄砲のように弾かれていく。
  それでも、MFG-6は身体を丸くして、恐怖と苦痛に顔を歪ませている。
マフギ「う、うう・・・」
研究員A「・・・」
海鳴玲子「・・・」
  無抵抗に撃たれ続けるMFG-6。
研究員A「なんだか・・・とても良くないものを見ている気がします・・・」
海鳴玲子「同感ね」
海鳴玲子「なんて無様なの・・・見てられない」
  レイコはため息をつき、キーボードを叩いた。
  銃撃ロボットがくるりと背を向け、壁の奥へ戻っていく。
研究員A「戦闘ができる状態ではなさそうですね・・・」
海鳴玲子「それじゃあ、壊しましょう」
研究員A「え!?」
海鳴玲子「だってもう使い物にならないもの」
研究員A「もっとちゃんと調べなくていいんですか?」
海鳴玲子「高価な部品をたくさん使っているし、それらを無駄にはできない」
海鳴玲子「さっさとぶっ壊して、開発に回しましょう」
研究員A「ちょ、ちょっと待ってください」
研究員A「異常の原因が分からないまま壊すのは、危険じゃないですか?」
研究員A「もしかしたら、敵軍の対策かもしれない!」
研究員A「恐怖心を植え付けて、戦闘を回避させるように仕向ける・・・」
研究員A「そんなバグプログラムの可能性もあるんじゃないですか?」
海鳴玲子「・・・」
海鳴玲子「そうね」
海鳴玲子「そんなプログラムがあったとして」
海鳴玲子「同期ネットワークを介して他の子たちに共有されたりなんかしたら、おしまいだわ」
海鳴玲子「あなたの言う通り、一度ちゃんと調べる必要があるわね」
研究員A「は、はい(よかった・・・)」
研究員A「(しかし珍しいな、いつも冷静な所長が」
研究員A「軽率な判断を下そうとするなんて)」
海鳴玲子「助かったわ、研究員A」
研究員A「い、いえ!」
研究員A「(名前で呼んでほしい・・・)」
研究員A「どうしましょう、エリア6の研究所に送りますか?」
海鳴玲子「いえ、ここに置いて、わたしが調べる」
研究員A「所長が、ですか?」
海鳴玲子「この子のことを一番よく知っているのはわたしだから」
研究員A「しかし、今以上に忙しくなってしまうのでは・・・」
海鳴玲子「うまく暇を見つけるわ」
海鳴玲子「子の面倒を見るのは親の仕事でしょ?」
研究員A「あ、は、はい」
海鳴玲子「起きなさい、MFG-6」
マフギ「ビクッ」
海鳴玲子「そういうわけだから、あなたのスクラップ行きはもう少し先になる」
海鳴玲子「あなたがどうしてそんなに駄目な子になったのか」
海鳴玲子「頭のてっぺんから足爪の先まで徹底的に調べ上げるから」
海鳴玲子「よろしくね」
マフギ「・・・」
研究員A「(怖ぇ)」

次のエピソード:大佐、ズンドコ節を踊る

コメント

  • 一般的な電化製品でも、まるでこちらの気持ちがわかっているかのような反応する時ありますよね。買い替えを決断した途端、急に息を吹き返したように正常に使えたり。物にも魂があることの証明してほしいです。

  • マフギ、戦闘のために作られたロボット。なのに感情があるように恐怖のを覚え闘うことをしなくなった。
    徹底的に調べて、謎は解明していくのか?

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