愛しさのカタチ

兎乃井メライ

DAY11: 弱点(脚本)

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〇駅前広場
三澤梨々花「ありがとう、送ってくれて ここで大丈夫だよ」
貴島里見「気をつけてね 今夜はオレ、アニキのところ泊まるから 後は心配しないで」
三澤梨々花「うん あ、冷却シートの貼り方とか おかゆの温め方はメモ残してきたから よかったら参考にしてね」
貴島里見「えっ、わざわざありがと そこまでしなくてもいいのに ただの風邪なんだから」
貴島里見「なんか妬けるなあ・・・ ねえ三澤ちゃん まさかアニキのこと好きだったり しないよね!?」
三澤梨々花「へっ?」
貴島里見「だってあの人 顔だけはいいからさぁ」
貴島里見「アニキが高校生の頃なんか 「一目惚れしました!」っていう女子が わんさかうちに押し寄せてさ・・・」
三澤梨々花「そ、それはすごいね・・・」
三澤梨々花「いや、それはないから大丈夫だよ💦 心配するのは先生が雇い主だからだし 緑川さんにも頼まれてるし・・・」
三澤梨々花「家でもうちのことは私がやってるから 誰かの世話を焼くの習慣みたいに なっちゃってるんだよね」
三澤梨々花「うちのお姉ちゃん グータラで手のかかる人だから」
貴島里見「そか お互いキョーダイには手を焼くね」
貴島里見「でも三澤ちゃん、タフだなぁ 学校と部活と家事とバイトと・・・ ハードすぎない?」
三澤梨々花「ふふ、大丈夫だよ こう見えてけっこう体力あるし!」
三澤梨々花「うちは両親いないから お姉ちゃんに働いてもらってる分 わたしも頑張りたいんだよね」
貴島里見「・・・そういうところ、いいよねぇ」
貴島里見「そっか でもなんかあったら遠慮なく言ってね いつでも力になるし」
貴島里見「あ、アニキにリフジンなこと言われたら ソッコー言って! 成敗するから!!」
三澤梨々花「あはは、ありがと じゃあ、先生のことよろしくね」
貴島里見「オッケー あ、三澤ちゃん次のバイトいつ? オレ出来ることあったら手伝うよ ハイジの散歩とか」
三澤梨々花「えっ、いいよいいよ! 里見くんは大会に向けての練習も あるんだから忙しいし」
貴島里見「大丈夫大丈夫 だって、三澤ちゃんに会いたいし」
三澤梨々花「えー? 毎日学校で会ってるよ?」
貴島里見「うーん・・・響かないなー」
貴島里見「学校じゃ、みんなが一緒じゃん? オレはそれより プライベートで会えた方がうれしいなと」
貴島里見「・・・アレと二人きりにとかしたくないし」
三澤梨々花「???」
貴島里見「ま、そゆことで! じゃあまた明日!! 気をつけて帰ってね〜」
三澤梨々花「う、うん、また明日!」
三澤梨々花(変な里見くん・・・さっきのどういう意味? またあとで聞いてみようかなぁ)
三澤梨々花「・・・ん?」
三澤梨々花(・・・今、誰かに見られてたような)
三澤梨々花「・・・気のせいだよね さ、帰ろう」

〇木造の一人部屋
落合はるか「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
落合はるか「・・・・・・・・・・・朝、か・・・」
  あ、目が覚めました?
落合はるか「・・・・・・・・・・・・緑川?」
落合はるか「今・・・何時だ?」
緑川「おはようございます 朝の9時ですよ 気分はどうですか?」
落合はるか「・・・頭はまだボーっとするけど 体は楽にはなった」
落合はるか「やべえ、今日2コマ目からだ・・・ 大学いかねーと・・・」
緑川「何言ってるんですか さっき寝てる間に体温測らせてもらいましたけど、まだ微熱がありますよ」
緑川「またぶり返す可能性もありますし 今日は休んでください 大学には連絡入れておきますから」
落合はるか「そういうわけには・・・・・・ん?」
落合はるか「なんだ、この冷却シート・・・ 脇やら足の付け根やらあちこちに」
緑川「ああそれ、里見くんが貼ったみたいですよ 昨晩泊まってくれたんですね 僕宛に書置きがありました」
落合はるか「ああ・・・そういや来てたな 耳元でギャーギャーうるさかった・・・」
落合はるか「というかお前はなんでここにいるんだ? 出張だって言ってなかったか?」
緑川「そうですよ 朝一番の新幹線で戻ってきたんです 先生が高熱だと昨晩梨々花さんから 連絡をもらって」
緑川「彼女がバイトの日でよかったですよ あやうく野垂れ死ぬとこでしたよ、先生」
緑川「里見くんに色々と看病の指示をしてくれたのも、彼女みたいですよ 感謝しないとですね」
落合はるか「・・・ああ、そうだな たしかに助かったよ だいぶお節介だったけどな」
緑川「またそういうことを・・・」
緑川「そういえば梨々花さんと里見くんは 同じ学校の同級生だそうですね 偶然にも」
落合はるか「あー・・・そうらしいな クラスも部活も同じだとかなんとか 世の中狭いな・・・」
緑川「里見くんの書置きに先生へのメッセージがありましたよ 『三澤ちゃんを困らせたらコロす!』 だそうです」
落合はるか「・・・バカか、あいつ」
緑川「はは、けん制されちゃいましたねぇ でも先生、梨々花さんの言うこと聞いて 大人しく休んでたんですって?」
緑川「珍しいですねえ 人付き合いが嫌いで、出来るだけ他人を遠ざけようとする人が」
落合はるか「はあ?  里見はそんなことまで書いてたのかよ」
緑川「いえ、梨々花さんが言ってたんですよ 『先生、いい子にしてますから』って」
落合はるか「・・・あいつ、マジでおかんかよ・・・」
緑川「はは、かわいいお母さんですね!」
緑川「しかし、まさかこんな短期間で 先生を懐柔してしまえる方が現れるとは 思いませんでした・・・」
落合はるか「懐柔って・・・ されてねえよ、何言ってんだ」
緑川「だって先生を大人しく寝かせるなんて 僕でも無理ですよ・・・」
緑川「胃袋もしっかり掴まれちゃってるじゃないですか・・・ 食欲がないようだと聞いてましたが おかゆも完食されてましたしね」
落合はるか「う・・・うるせえな・・・ 別にいいだろが」
緑川「先生、そういうところカワイイですよね♡」
緑川「でも・・・彼女が、ねぇ キリエさんでも、あなたのテリトリーに 入るのは難しかったのに」
緑川「もしかしたら、彼女のおかげで 『弱点』克服できるかもしれませんね 先生?」
落合はるか「・・・あいつは関係ねぇだろ いちいちキリエと比較すんな」
落合はるか「・・・もう起きる」
緑川「だからダメですって 今日だけはゆっくり体を休めて下さい」
緑川「締切も、特例で延長しますから 梨々花さんに免じて♪」
落合はるか「特例ってなんだよ」
緑川「だってけなげでかわいいんですもん 先生のポンコツぶりに呆れることなく かいがいしく面倒をみてくれて」
緑川「『無理しないようにお仕事調整してあげてください』なんて頼まれたら しょうがないな~って思っちゃいますよ」
緑川「僕、一人っ子ですけど 妹がいたらこんな感じなんですかね」
落合はるか「知らねえよ、なにデレてんだ」
緑川「ま、そういうわけで たまには先生を甘やかそうかなと」
緑川「・・・それに、ちょっと行き詰って いるでしょう? 『情熱(カーディナル)』の今後について」
落合はるか「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
緑川「・・・たまにはしがらみから離れて のんびりするのもいいんじゃないですか? 先生は自分を追い込みがちですから」
緑川「さて、じゃあ僕は朝食の用意してきますね 梨々花さんが作り置きしてくれた おかゆ、温めてきます」
落合はるか「・・・ああ」
落合はるか「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
落合はるか「弱点、か・・・・・・」

次のエピソード:DAY12: 意外なお誘い

コメント

  • 終始微笑ましい内容の今話の中に挿し込まれる、はるか先生の『弱点』が気になります!
    それにしても、梨々花ちゃんのおかんモードが可愛すぎます!

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