夫が浮気? (脚本)
〇綺麗なダイニング
香川夏子「拓也、明日は私の誕生日だから早く帰ってきてね」
山本拓也「えっ、明日、誕生日だっけ。忘れてた」
山本拓也「明日は接待があって、遅くなりそうなんだ。ごめん」
香川夏子「明日は私の誕生日なのに・・・・・・」
山本拓也「もっと早く教えてくれたら、接待の日を代える事が出来たんだけど」
山本拓也「明後日、レストランを予約しておくよ」
香川夏子「接待なら仕方がないわね。明後日は絶対ね」
山本拓也「わかった。誕生日プレゼントはその時に渡すから」
香川夏子「楽しみにしてるね」
山本拓也「じゃ、俺、お風呂に入ってくるよ」
拓也が部屋から出ると、夏子はため息をついた。
香川夏子「まだ新婚なのに、妻の誕生日を忘れているなんて」
香川夏子「でも、もっと前に伝えなかった私も悪いわよね」
香川夏子「私は拓也の誕生日はきちんと覚えているんだけどな」
〇役所のオフィス
夏子の誕生日。夏子は会社で仕事をしている。
伊藤加奈「夏子、誕生日おめでとう!」
香川夏子「加奈、ありがとう」
伊藤加奈「飲みに誘いたいとこだけど、今晩は拓也さんと2人でお祝いだよね?」
香川夏子「それが、拓也は今日は接待があるって」
伊藤加奈「新婚なのに、妻の誕生日に接待? 断れなかったのかな?」
香川夏子「拓也、成績を上げるために一生懸命だから仕方がないかな」
伊藤加奈「そういう事なら、今晩は飲みに行こうか?」
香川夏子「嬉しい! 誕生日に1人って寂しいなって思ってたの」
伊藤加奈「OK、じゃ、あとで」
〇ジャズバー
香川夏子「素敵なお店ね」
伊藤加奈「でしょ。兄がオーナーをしてるの」
伊藤加奈「今日は、新婚の夏子の惚気をいっぱい聞かせてもらおうかな」
香川夏子「惚気って・・・・・・」
伊藤加奈「拓也さん、大学の時からイケメンで有名だったもんね」
香川夏子「拓也、家ではだらっとした服を着てるし、」
香川夏子「いつも仕事で帰りが遅いし」
香川夏子「そんなに羨ましがられる生活をしてる訳じゃないのよ」
伊藤加奈「そんなにいつも遅いの?」
香川夏子「うん。今は会社も大変みたいで」
伊藤加奈「妻の誕生日くらい早く帰って来て欲しいよね」
伊藤加奈「でも、拓也さんはイケメンだから許しちゃうか」
香川夏子「加奈ったら」
伊藤加奈「あれっ?」
加奈が前の席をじっと見ている。
香川夏子「加奈、どうしたの?」
伊藤加奈「あの人、拓也さんじゃないかな? でも、そんなはずがないよね」
夏美は驚いて、振り返ろうとした。
伊藤加奈「夏美、急に振り返っちゃダメ。ちょっと待って」
加奈はスマホで、拓也と、一緒にいる女性を撮って、夏美に見せる。
「拓也だ。どうして・・・・・・今日は接待だって言っていたのに」
伊藤加奈「あの女性は仕事絡みの人で、接待をしているとか?」
香川夏子「そうかもしれないよね、拓也は接待の相手は男性なんて言わなかったし・・・・・・」
伊藤加奈「ちょっと待ってて。私、様子を見てきてあげる」
加奈は立ち上がり、拓也の近くを通ってトイレに行き、戻ってきた。
香川夏子「加奈、どうだった?」
伊藤加奈「やっぱり、あれは接待じゃないわ。恋人同士の会話よ」
香川夏子「そんな。加奈、私、どうしたら良いの?」
夏美は目に涙を浮かべている。
伊藤加奈「あの2人が、たまに食事するだけの関係なのか、身体の関係があるのか、調べた方が良いと思う」
香川夏子「もし、身体の関係があったら?」
伊藤加奈「私なら、慰謝料をもらって離婚するわ」
香川夏子「離婚・・・・・・」
夏美は離婚という考えた事もない言葉に、呆然とした。
香川夏子「私は拓也が大好きなのに、どうしてこんな事に・・・・・・」
伊藤加奈「夏美、これ以上、あの2人を見ているのは辛いでしょ?」
伊藤加奈「今日は解散しましょう。家で、ゆっくり考えてみた方が良いと思う」
香川夏子「そうだね。今日は家に帰る。また相談にのってね」
夏美は加奈と別れ、タクシーで家に帰った。
〇豪華なベッドルーム
拓也は深夜12時過ぎに、マンションに帰ってきた。
香川夏子「拓也、お帰り」
山本拓也「夏美、まだ起きてたのか? 寝てたら良かったのに」
拓也はギクっとした顔で答えた。
香川夏子「拓也、今日は接待だったんだよね? どこのレストランを使ったの?」
山本拓也「えっと、先方に紹介してもらったレストランだから、名前は覚えてないよ」
香川夏子「そっか。相手は取引先の部長とかかな?」
山本拓也「ああ、新しい取引先の社長さん」
香川夏子「男の人?」
山本拓也「・・・・・・いや、女性社長だよ。やり手の社長なんだ。というか、夏子、どうしてそんな事まで聞くんだ?」
香川夏子「ちょっと気になっただけ」
香川夏子(なんだ。取引先の女性社長なんじゃない。加奈ったら、心配しすぎなんだから)
香川夏子「明日のディナー楽しみにしているね」
〇テーブル席
佐藤綾子「夏子とランチは1ヶ月ぶりだね」
香川夏子「今日は、話を聞いて欲しくて誘ったの」
佐藤綾子「もちろん良いけど。何があったの?」
夏美は、綾子に拓也の浮気疑惑の話をした。
佐藤綾子「夏子は拓也さんを信じてるんだよね? でも、拓也さんが嘘をついているって事はないの?」
香川夏子「えっ、どういうこと? 拓也は女性社長と接待だったんだよ」
佐藤綾子「だって、夏子にそんな風に切り出されたら、見られたかもって気づくと思う」
佐藤綾子「それなら、自分から女性社長と打合せって言った方が、怪しまれないと思ったんじゃないかな」
香川夏子「そんな事、考えもしなかった。綾子は拓也が浮気していると思う?」
佐藤綾子「ちょっと怪しいと思う。だって、加奈さんは恋人同士って感じだったって言ってたんでしょ?」
香川夏子「うん。そう言ってた。だけど、私、拓也が浮気しているなんて信じたくなくて」
佐藤綾子「夏子が拓也さんを信じてるなら、拓也さんにはっきりと聞いてみたらどうかな?」
香川夏子「そんな事を聞いたら、私が拓也を疑っているみたい」
佐藤綾子「私ならはっきりさせたい。だから、私は聞かずに調べると思う」
香川夏子「調べるって、どうやって?」
佐藤綾子「たとえば、夏子には、拓也さんと共通の友達はいないの? その人にさりげなく探りを入れてもらえば?」
香川夏子「それは無理。私が疑っているって拓也に思われたくないの」
佐藤綾子「じゃ、拓也さんのスマホをチェックしたり、拓也さんのSNSを調べてみたら?」
香川夏子「拓也のSNS?」
佐藤綾子「うん。拓也さん、SNSはしてないの?」
香川夏子「ラインはしてるけど、それ以外は知らない」
佐藤綾子「じゃ、とりあえず、拓也さんの携帯電話のロックを解除して、ラインのチェックをしてみて。SNSは私が探してみるから」
香川夏子「綾子、ありがとう。私、拓也を信じたいから、調べてみる」
〇豪華なベッドルーム
深夜、拓也は寝ている。
香川夏子(拓也は携帯電話のロックには指紋認証を使っている)
香川夏子(だから、寝ている拓也の指で・・・・・・)
夏美はそおっと拓也の手を取り、人差し指を拓也の携帯電話のホームボタンに当てた。
香川夏子(良かった。ロックは解除された!)
夏美は拓也のラインを開く。
真美
拓也、この前はありがとう。楽しかったよ。
また誘うね💕
香川夏子(拓也は真美さんに返信をしていない。これだけでは、拓也が浮気しているかどうかはわからない)
香川夏子(だけど、接待のお礼のラインにハートマークなんてつけるかな?)
香川夏子(やっぱり、拓也は真美さんと浮気しているの?)
夏美が拓也の携帯電話を元の場所に戻した時、綾子からラインがきた。
綾子
夏美、拓也さんのSNS調べたよ。
拓也さん、真美って女性とラブラブみたい。
最後のシーン、同じ既婚者として寒気がしました。ただ、彼女の友人や同僚が彼女を騙しているということも考えられるなあとも、同情心からでしょうか、そんな事が頭によぎりました。