10.とける(脚本)
〇黒
― 6月下旬 ―
〇おしゃれなレストラン
鷲尾拓海「琴美さん・・・ 梅雨で雨が、酷いですね」
前嶋琴美「そう、だね~~」
鷲尾拓海「この雨じゃ、お客さんも来ませんよね」
前嶋琴美「だよね~~、困ったね~」
前嶋琴美「・・・」
前嶋琴美(ショッピングモールで、拓海くんと南さんのデートを見かけてから)
前嶋琴美(なんだか、拓海くんと上手く話せない)
前嶋琴美(無理に笑ってるからか、いつもより疲れちゃうな)
前嶋琴美(はぁ・・・ 二人きり、気まずい)
鷲尾拓海「・・・」
前嶋琴美「あ・・・拓海くん! えと・・・」
前嶋琴美「テイクアウト用のカップが少なくなってきたから取ってくるね」
鷲尾拓海「はい、わかりました!」
鷲尾拓海「・・・」
〇備品倉庫
前嶋琴美「はぁ、作り笑いって疲れる・・・」
前嶋琴美「えぇ~っと、紙コップのストックは・・・」
前嶋琴美「あった!」
琴美は、棚の上に積み重なっている紙コップを見上げた
前嶋琴美「う・・・んと、背伸びすれば、届く、かな?」
前嶋琴美「あ・・・あと、少し・・・」
「きゃぁーーーーーー!!」
前嶋琴美「・・・あー、も~~!」
鷲尾拓海「琴美さん!?」
鷲尾拓海「大丈・・・夫、ですか?」
前嶋琴美「ああ~! 拓海くん、ごめん! 大声出しちゃって!」
鷲尾拓海「片付けますね」
前嶋琴美「あ! 私がやるからいいよ!」
鷲尾拓海「いえ、僕が──」
前嶋琴美「えと・・・ホントに大丈夫だから」
鷲尾拓海「いえ、二人でやれば──」
前嶋琴美「大丈夫だって言ってるでしょ!?」
前嶋琴美(はっ・・・)
鷲尾拓海「──琴美、さん?」
前嶋琴美「! ごめ──」
前嶋琴美「・・・あの」
来店客「すみませ~ん!」
前嶋琴美「あ・・・」
前嶋琴美「拓海くん、行ってくれる? 片付けたらすぐに行くから」
鷲尾拓海「あ・・・はい」
前嶋琴美「ダメだ・・・ なにやってんの私」
〇おしゃれなレストラン
― 数日後 ―
前嶋琴美「ホットコーヒー、できました!」
熊代真樹(旧姓竜崎)「ちょ! 琴ちゃん! ホットじゃなくて、アイスだよ!」
前嶋琴美「え!? そうでした!? すぐ、作り直します!」
前嶋琴美「・・・」
鷲尾拓海「・・・」
〇おしゃれなレストラン
鷲尾拓海「琴美さん、お疲れさまです!」
前嶋琴美「あ・・・うん、お疲れさま」
鷲尾拓海「・・・明日、店休日ですね。 僕、明日の夕飯は──」
前嶋琴美「拓海くん、ごめん。 ちょっと気分がすぐれなくて──」
前嶋琴美「だから、明日の夕飯は──」
鷲尾拓海「あ・・・はい」
鷲尾拓海「わかりました。中止ですね! ゆっくり休んでください」
前嶋琴美「ん・・・ごめんね」
鷲尾拓海「・・・」
〇おしゃれなレストラン
― 数日後 ―
熊代真樹(旧姓竜崎)「琴ちゃん♪ はい、これ」
前嶋琴美「え! 真樹さんなに!?」
熊代真樹(旧姓竜崎)「なにって、琴ちゃん。 今日7月7日だよ? 誕生日でしょ?」
前嶋琴美「・・・あ!」
熊代真樹(旧姓竜崎)「も~! 忘れてたの?」
前嶋琴美「あ、はは・・・もうこの歳になると、お祝いとか、しないし」
熊代真樹(旧姓竜崎)「なに言ってんの~! 今年は違うでしょ?」
前嶋琴美「え?」
熊代真樹(旧姓竜崎)「鷲尾くんがいるでしょ? 同じ誕生日なんだから、一緒にお祝いしたら?」
前嶋琴美「え、と・・・」
前嶋琴美(たぶん、今日拓海くんは・・・)
熊代真樹(旧姓竜崎)「そのプレゼントね、ガーデニア・・・クチナシの香水なの」
熊代真樹(旧姓竜崎)「琴ちゃん、クチナシの香り好きでしょ? 休みの日につけて楽しんでよ♪」
前嶋琴美「うん! ありがとう真樹さん」
南「じゃあ拓~♪ あとで注文聞きに来てね!」
鷲尾拓海「ああ」
鷲尾拓海「お疲れさまです! すぐに準備してきますね!」
熊代真樹(旧姓竜崎)「琴ちゃん、今日の誕生日、楽しみね♪」
前嶋琴美「あ・・・ははは」
前嶋琴美(きっと、今日の誕生日。 拓海くんは南さんとデートですよ・・・)
前嶋琴美「450円のお返しです」
前嶋琴美「はっ! 失礼いたしました!」
前嶋琴美「こちら、レシートでございます」
前嶋琴美「あ、ありがとうございました!」
前嶋琴美「・・・」
鷲尾拓海「・・・」
〇ビルの裏通り
鷲尾拓海「琴美さん、帰りましょう!」
前嶋琴美「あ・・・うん!」
前嶋琴美(あれ? 誕生日なのに、南さんとデート、しないのかな?)
前嶋琴美(ああ、私を送ってから、後で会う約束、してるのかも・・・)
前嶋琴美「・・・」
鷲尾拓海「あの、琴美さん」
鷲尾拓海「琴美さん!!」
前嶋琴美「・・・あ! なに?」
鷲尾拓海「最近、おかしくないですか?」
前嶋琴美「え、ええ~? なにが?」
鷲尾拓海「だって、僕のこと避け──」
鷲尾拓海「・・・琴美さん、ここのところ、いつもしないミス連発で」
鷲尾拓海「心ここにあらずって感じじゃないですか」
鷲尾拓海「なにかあったんでしょう?」
鷲尾拓海「教えてください。 心配なんです、琴美さんが」
前嶋琴美「な、なんにもないよ~」
前嶋琴美(拓海くんと南さんのことが気になって仕方がない、なんて言えないよ)
前嶋琴美「・・・」
鷲尾拓海「・・・」
前嶋琴美「きゃ!! なに!? 拓海くん!」
鷲尾拓海「・・・いいから来て!」
〇中規模マンション
前嶋琴美「はぁ、はぁ・・・」
鷲尾拓海「琴美さん、ちょっと待ってて!」
前嶋琴美「・・・」
前嶋琴美「ええ!?」
鷲尾拓海「琴美さん、これかぶって乗って!」
前嶋琴美「え・・・え・・・」
鷲尾拓海「早く!」
前嶋琴美「は、はい!」
〇赤い花のある草原
前嶋琴美「・・・ここは?」
鷲尾拓海「琴美さんと来たかった、秘密の場所」
前嶋琴美「秘密の、場所・・・」
鷲尾拓海「はい、琴美さん。 ここに座ってください」
前嶋琴美「これ・・・わざわざ持ってきたの?」
鷲尾拓海「今日は、絶対琴美さんをここに連れてこようと思ってたから」
前嶋琴美「え・・・だって今日は南さんと・・・」
鷲尾拓海「・・・なんでそこで南がでてくるんですか」
前嶋琴美「・・・」
鷲尾拓海「・・・」
鷲尾拓海「ねえ琴美さん・・・上、見て」
鷲尾拓海「今日、晴れて良かった・・・」
鷲尾拓海「キレイですね・・・9年前と同じ」
前嶋琴美「・・・うん、キレイ、だね」
鷲尾拓海「琴美さん、横になりませんか?」
前嶋琴美「・・・うん」
鷲尾拓海「僕・・・9年前に引っ越してから、実はいろいろと嫌なことがあったんです」
前嶋琴美「え・・・そうだったの?」
鷲尾拓海「カッコつけて、話さなかったんですけど・・・(笑)」
〇おしゃれな居間
・・・後継者っていっても、所詮、愛人の子、ですから
いろいろと・・・ね
〇赤い花のある草原
鷲尾拓海「辛いことがあっても、琴美さんと過ごした日々を思い出して」
鷲尾拓海「今まで乗り越えて来たんです」
鷲尾拓海「・・・今日、晴れたから織姫と彦星、会えますね」
前嶋琴美「・・・そうだね」
鷲尾拓海「僕、織姫と彦星って僕たちみたいだなって思ってて」
鷲尾拓海「こと座のベガが織姫、わし座のアルタイルが彦星」
鷲尾拓海「ね? 二人みたいに、離れててもまた会えた(笑)」
前嶋琴美「あ! 琴と鷲・・・」
鷲尾拓海「琴美さんにまた会えるって信じて、頑張ってきたから」
鷲尾拓海「僕・・・琴美さんに会えてなかったら、どうなってたか(笑)」
鷲尾拓海「琴美さんは、人と関わるきっかけを作ってくれて」
鷲尾拓海「楽しい思い出をたくさんくれた人」
鷲尾拓海「・・・それから、僕の初恋の人」
鷲尾拓海「好きな気持ちは・・・今も変わらない。 ずーっと好きだった」
前嶋琴美「!!」
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)
いや~んもう、拓海くんったらなんですか、「琴美さんのここ」って?😳エロすぎて困っちゃううぅ😆❤️お姉さんもう顔を覆った指の間からしか君を見られない!
拓海君!男前です!好きな人にあんなふうに言われて揺れない人いないですよー☺️やっぱり幸せの2人を見るのはいいものですね!
「とける」なるほど!
いいタイトルですね〜✨
もうこのままゴールまで行けばいいのに😆