理想の女の子作成計画

Reon

理想の女の子作成計画(脚本)

理想の女の子作成計画

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理想の女の子作成計画
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〇おしゃれなリビング
  ──階段を降りる足音がする。彼女が起きたのだろう。──
  ──いつも雰囲気が違う。・・・制服をすでに着ている。──
  おはよう、葵。もう着替えたのか?
葵「うん」
葵「貴方が”朝御飯を食べる前に、着替えろ”って言ったからね」
  ──確かにそんなことを言ったような気がする。──
  良く似合っているよ。やっぱり綺麗だな、お前は。
  ──そう言うと彼女は顔を赤らめ、恥ずかしそうに俯く。──
葵「貴方はいつもそうやって・・・」
  なんだい?
葵「なんでもないわ」
  ──彼女は頭を振ると此方へやって来た。──
葵「それで、朝御飯は何かしら。お腹が空いたのだけれど」
  生ハムのサンドウィッチだよ。君の好物だろう?
葵「じゃあ冷蔵庫の中ね。食べましょうか」
  ──彼女は椅子に座ると喜々として手を合わせる。──
葵「いただきます」
  ──彼女はサンドイッチを頬張り、おいしそうに食べている。──
葵「美味しい。貴方の作るサンドウィッチは最高ね」
  ──私は朝食を食べ進める彼女を横目で流し見つつ自分の分を食べ始める。──
  ──彼女は私が引き取った娘だ。礼儀正しく、優しい娘だ。──
  ──清楚で美しく、学校のミスコンでも優勝をさらった。──
葵「じゃあ行ってくるわね・・・今日から早く帰れると思うわ」
  ああ、気を付けて・・・。愛しているよ。
葵「・・・うん」
  彼女をからかったはずが、彼女は何故か目を細めるだけだった。

〇ダクト内
  私は孤児だった。
  親も死に、身寄りも無い私を引き取ったのは貴方だった。
  私には何もなかった。
  生きる希望もなく、ただ生命活動を維持していた。
  そんな私を救い出してくれたのも貴方だった。
  だけど、私は知っている。
  貴方が隠している秘密を。
  私の本当の記憶を。
  なぜ貴方が私を引き取ったか。
  なぜ貴方が私について苦悩しているかを。
葵「本当に・・・。可愛らしい人。不完全で弱い。でもそこがいい」

〇おしゃれなリビング
  4年前、私は大罪を犯した。
  弁解の余地も無い
  あの時の私は分かっていなかった。
  生命の神秘に人間が手を加える事の重大さを。
  彼女は人造人間だ。
  私が創り、私が育て、私が捨てた。
  おそらく罪悪感からだろう。
  二年前、私は彼女を見た瞬間、何かに駆られるように彼女を引き取った。
  彼女に過去を与え、私が彼女を壊した。
  彼女をそうしたのが自分だという事実を否定しようとしたのだ。
  彼女の笑顔でしか、私はもう笑えないんだ。

〇総合病院
  あの日もこんな雨だった。
  私がポッドから生まれ落ちた日のことだ。
  空は啼き、暗い空は禁忌を犯す人間に対する警告の様だった。
  私はそれをベットの上でながめていた。
  私はポッドから生まれ落ちる前から物心が付いていた。
  透き通るような、私と外界を分けるそれは
  しかし意外に硬く、偶然を装い叩いてもびくともしなかった。
  外界から隔絶された部屋の中、視界いっぱいに広がる白い光と白い壁が私の世界だった。

〇研究所の中枢
  今日は肌のテストらしい。水着を着せられ、異常がないか確かめられた。
  彼がこちらにやって来る。
  気分はどうだい。葵。
  反応は返さない。それが一番良いと考えた。
  彼からして見れば、起動してないロボットが勝手に動いたように見えるだろうから。
  彼は私をじっと見たかと思えば嘆息した。
  相変わらず君は美しいな。・・・恐らくこれからもずっと美しく有り続けるのだろうな、きみは。
  自分の心が浮足立つのがわかる。
  彼は去ったものの、その日は紅潮する頬を抑えるのに必死だった。

〇魔法陣のある研究室
  全機能オールグリーン。・・・問題無しか。
  ──素体は既に完成している。後は経過を見て、記憶を与えるだけだ。──
  ──生命を自分の手で与えたという事実に興奮し、手は痛いほどに握られていた。──
  美しい、人間では決して届かないであろう美の極地とはこれか。
  ──何日も続く雨や雷さえも今は心地良い。──
  ──ポッド室に入るとそこには生まれたままの姿で揺蕩う一体の女性型人造人間がいる。──
  ──その美しい肢体に目を奪われる。──
  ──君こそ完全な存在だ。君こそ完璧な存在だ。──

〇ビルの地下通路
  学校へ向かう道から逸れること2時間。
  都心のビル、地下10階にそれはあった。
  懐かしい景色があった。
  私の生まれた場所だ。
  ここでの彼とのふたりきりの生活は悪くなかった。
葵「確かここに・・・。あった」
  壁に手をあてると、ピッという電子音が鳴り響く。
  通路の端に埋め込まれた数々の書類。
  それは総て[理想の女の子作成計画人]に関するものだった。
  人型自立機の開発は人権の観点から禁止されている。
  それの意味する所は、この書類は彼の生命線だということだ。
  ハッキングを恐れ、データベースに書き込まなかったのだ。
葵「これで貴方を手に入れられる。秘密にしておいてよかった」
  自分の意識が病院以前にあったと知れば、彼は私の認証IDを外していただろう。
  秘密は使いようなのだ。

コメント

  • 近い将来、人造人間の時代が来るのかもしれませんね。そうなったら、人造人間に感情移入して、人類が滅びてしまうかもしれない。

  • スマートな方と言えばスマートなような、心寂しい方と言えば心が寂しいような、なんかそんなお話しでした。理想ではなく、実際の方とのコミュニケーションをとうし、理想の方を見つけれたらいいですよね。

  • 例えば自分が、彼女のような理想的な人間をつくったとして、その彼女が自分のことを愛してくれたとして、それは彼女ですら気づかないうちに、プログラミングされたものだとして、それでもやはり愛されるのは嬉しいことなのか。人間同士の不器用な部分、完璧じゃない綺麗さ、読めない心の移り変わり、そんなものに私はひかれるなぁとこの話を読んで改めて感じました。

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