初恋

深都 英二

仕組まれた罠(脚本)

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〇オフィスのフロア
卯月 風磨(いっそ正直に話してみるか)
卯月 風磨(でも「目が覚めたら女の家にいたけど、何もしてない」なんて・・・)
卯月 風磨(信じてもらえるか?)
姫島 幸恵「卯月さん」
卯月 風磨「うわっ!姫島さん!」
姫島 幸恵「ふふっ。そんな驚かないでくださいよ」
姫島 幸恵「それとも、何か意識しなきゃいけないことでもあるんですか?」
卯月 風磨「いや・・・それは・・・」
卯月 風磨「ねぇ、あのことって誰にも言ってないよね?」
姫島 幸恵「もちろん。私と卯月さんだけの秘密です」
卯月 風磨「・・・」
姫島 幸恵「卯月さん、ちょっと付き合ってくれません?」
卯月 風磨「え?」
姫島 幸恵「行きたい場所があるんです」
姫島 幸恵「一緒に来てくれますよね?」
卯月 風磨「ごめん、あのさ・・・」
姫島 幸恵「あの日のこと、他の人に言っちゃおっかな〜」
卯月 風磨「おい!それは・・・!」
姫島 幸恵「冗談ですよ。でも・・・」
姫島 幸恵「あの夜のこと、忘れてないですよね?」
卯月 風磨「っ・・・」
姫島 幸恵「じゃあ、行きましょうか」

〇オフィスビル前の道
刑事「お時間をいただき、ありがとうございました」
刑事「それでは・・・」
楪原 茗「はあ・・・疲れた・・・」
楪原 茗「ん?あれって風磨?」
楪原 茗「隣にいるのって・・・女の人!?」

〇オフィスビル前の道
卯月 風磨「なあ、どこ行くつもりだよ?」
姫島 幸恵「卯月さん・・・」
卯月 風磨「え?」
  突然、姫島が卯月にキスをした。

〇オフィスビル前の道
楪原 茗「キス・・・!?」
楪原 茗「っ・・・」

〇オフィスビル前の道
卯月 風磨「おい!ちょっと何して・・・!」
姫島 幸恵「だって、したくなっちゃったんだもん」
卯月 風磨「あのさ、この際だからはっきり言っておくけど」
卯月 風磨「俺、彼女いるんだよ」
卯月 風磨「だから、こういうのやめてくれないかな」
姫島 幸恵「彼女いるのに、部下に手を出すんですね?」
卯月 風磨「だからあれは・・・事故っていうか・・・」
姫島 幸恵「ふふっ・・・冗談ですよ」
姫島 幸恵「困ってる顔もかわいい」
卯月 風磨「・・・」
姫島 幸恵「私は卯月さんに彼女がいようと気にしませんよ」
卯月 風磨「俺が気にするんだよ」
卯月 風磨「だから、もうこういうのやめよう」
姫島 幸恵「卯月さんにひとつ、良いことを教えてあげましょうか?」
卯月 風磨「え?」
姫島 幸恵「卯月さんの彼女、浮気してますよ」
卯月 風磨「は?何だよそれ」
卯月 風磨「適当なこと言うなよ!」
姫島 幸恵「いずれわかりますよ」
姫島 幸恵「それじゃ、また明日」
卯月 風磨「ちょっと、おい!」

〇公園のベンチ
楪原 茗「雨も降って来て最悪・・・」
楪原 茗「風磨・・・信じてたのに・・・」
楪原 茗「どうしてっ・・・」
麻布 翔「楪原さん!」
楪原 茗「麻布君!?」
楪原 茗「どうしてここに・・・」
麻布 翔「心配だったので待ってました」
楪原 茗「え?ずっと待っててくれたの?」
麻布 翔「そんなことより・・・大丈夫ですか?」
楪原 茗「うん、大丈夫!」
楪原 茗「警察に話を聞かれただけだから」
麻布 翔「何かあったんですか?」
楪原 茗「大丈夫だから、心配しないで」
麻布 翔「大丈夫じゃないです!」
楪原 茗「え?」
麻布 翔「たまには頼ってください」
麻布 翔「俺にできることがあれば、力になりたいんです」
楪原 茗「麻布君・・・」
楪原 茗「どうしていつも気にかけてくれるの?」
麻布 翔「それは・・・」
麻布 翔「楪原さんには恩があるので」

〇オフィスのフロア
  1年前
麻布 翔「徹夜すれば何とかなるか・・・」
楪原 茗「麻布君、大丈夫?」
麻布 翔「楪原さん!?」
麻布 翔「まだ残ってたんですか?」
楪原 茗「佐々木さん担当の案件で大変だって聞いて」
楪原 茗「佐々木さんと連絡が取れないから」
楪原 茗「部長から「フォローしてやってくれ」って頼まれちゃって」
麻布 翔「楪原さんも災難ですね」
麻布 翔「佐々木のやつ、ディレクターのくせに逃げやがって!」
楪原 茗「とりあえず状況を教えてくれる?」
麻布 翔「外注にコーディング頼んでたんですけど」
麻布 翔「上がってきたのが全然ダメで・・・」
麻布 翔「結局社内でやることになりました」
楪原 茗「え?それって明日までに提出のやつでしょ?」
麻布 翔「そうです・・・」
麻布 翔「ま、朝までやれば何とか間に合うかなって感じですね」
楪原 茗「そんな・・・」
麻布 翔「こういうの慣れてるんで大丈夫っすよ」
麻布 翔「楪原さんも帰っていいっすよ」
麻布 翔「俺、残って作業するんで」
楪原 茗「ううん。私も残るよ」
麻布 翔「え?」
楪原 茗「とりあえず、指示書まとめるね」
楪原 茗「コーディング完了したら確認するから声かけて」
麻布 翔「それは助かりますけど・・・いいんですか?」
楪原 茗「もちろん!」
楪原 茗「メンバーが作業してるのに、ディレクターだけ先に帰れないでしょ」
楪原 茗「それに、協力した方が早いでしょ」
麻布 翔「っ・・・」
楪原 茗「さ!疲れた時は甘いものよね」
楪原 茗「麻布君もどう?おいしいよ」
楪原 茗「あ、コーヒーの方がいい?」
麻布 翔「いえ、甘いもの好きです」
楪原 茗「よかった!」

〇オフィスのフロア
麻布 翔「よし!終わった!」
楪原 茗「お疲れさま!」
楪原 茗「すごいね!本当に間に合わせちゃうなんて」
麻布 翔「楪原さんのおかげですよ」
楪原 茗「ううん。麻布君が頑張ったんだよ」
楪原 茗「さっき先方に送っておいたから、今日は帰ってゆっくり休んで」
麻布 翔「あの・・・」
麻布 翔「っ・・・」

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