〇空
玲未（あの日もこんな雨の日だった──）
玲未（こんな日は 路面がよく滑るんだよね）
玲未（今考えればあれも 七海の仕業だったのかも）
玲未（・・・もう、なんでもいいか それにしても──）

〇車内
玲未（ったく、おせーな・・・）
玲未（早く来いよ・・・）

〇一人部屋
玲未「シたんだから 早く教えてよ、殺し方」
久嗣「んだよ 雰囲気台無しだな」
久嗣「それに 人の殺し方っつってもなー」
玲未「約束！」
久嗣「おお、怖え！」
久嗣「そうだなー 俺の場合ビビビッときたら 衝動的にいっちまうからなー」
玲未「何それ」
久嗣「でもまあ勢いって大事だろ 俺はお前も簡単に殺せるし？」
久嗣「殺し方もさ 俺は衝動的にやったけど やりたい方法でさーっとやりゃいいだろ」
玲未「・・・」
久嗣「なんかねーの？ 刺したい絞めたい苦しめたい他にも──」
玲未「・・・轢き殺したい」
玲未（できるなら轢き殺したい 何もかも あの時から全部狂い始めたから──）
玲未（あの記憶は私が 全部帳消しにしたい──）
久嗣「おう、いいんじゃね？ じゃあ車はレンタカー借りるか？ あ、でもお前何も持ってねーのか」
玲未「ポケットに財布が入ってた 免許証くらいならある」
久嗣「うっしゃ！ じゃあお前しばらくうちに置いてやるよ」
久嗣「飯と身体恵んで。 お礼に俺、 対象の行動パターン探ってきてやるよ」
玲未「は？ 警察に追われてる身でしょ？ そんなこと──」
久嗣「いいじゃん、面白そうだし 俺は遅かれ早かれ捕まるだろーし！」
久嗣「それにお前本気なんだろ？ さっきの声で分かった」
玲未「・・・バカ」
久嗣「ははっ お前も本当中学から変わったなー」
久嗣「面白れー女っ！ もっかいヤらせろ」

〇商店街
玲未（ご飯の買い出しは自分で行かないくせに 七海たちの行動パターン探るとか バカなんじゃないのアイツ──）
玲未（でもまあ── あれから２日はバレてないし 明日は雨も降るし・・・）
玲未（あの服・・・！）

〇ファンシーな部屋

〇アパレルショップ
玲未（やっぱり 夢の中で着てた服だ──）
玲未「ふふ・・・」
玲未「スミマセーン これくださーい」

〇黒
玲未（レンタカー手配、よし）
玲未（明日の天気、雨よし）
玲未（明日は家族みんなで出かける予定── って人の家族乗っ取って何様だぁ？）
玲未（ってか蒔田アイツ よく捕まらねーな・・・ふっ）
玲未「もう逃げたりなんてしないから 待ってろよ 七海──」

〇車内
　　殺す・・・
　　殺す、殺す、殺す──
　　殺す殺す殺す殺す
　　殺す殺す殺す殺す殺す
　　殺す殺す殺す殺す殺す殺す
　　殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
　　殺す！　コロス!!　殺す!!!
玲未「やっと来た・・・」

〇住宅街
　　畜生、笑ってやがる・・・
　　何でお前らは──
　　──笑ってんだよ！

〇車内
　　死ねーーーーーー!!!!!!

〇住宅街
芽依「ママ・・・？」

〇車内
玲未（え・・・芽依、今──？）

〇一戸建て
芽依「ママ〜っ！」

〇ダイニング（食事なし）

〇イルミネーションのある通り

〇教室の外

〇教室

〇住宅街
玲未（私は・・・私は・・・）
玲未「うわぁぁぁぁーーーー！」

〇車内
玲未「はぁ、はぁ・・・」
玲未（・・・できるわけないよ）
玲未（七海を殺して、 家族を殺して、 ──私に何が残る？）
玲未（全てを失えば幸せになれる？ そんなの・・・違うよ）
玲未（幸せになりたかった── でも、幸せは・・・）

〇住宅街
芽依「ママ・・・！」
玲未「芽依・・・」
芽依「ママだ！ ななみの言ったとおり！ ママ、戻ってきた！」
芽依「・・・ママ、いたいの？ 泣いてる・・・」
玲未「・・・うん すごく痛いの・・・胸が」
玲未「ごめんね・・・こんな母親で ごめんね・・・こんな弱い人間で」
七海「おかえりなさい、玲未」
玲未「なんで笑って──」
克彦「お前が七海先生の 言う通りに行動するから おかしくって」
七海「本当、面白いくらいに 想定通りなんだもの」
七海「何もできない弱虫な玲未は 結局私たちを殺せない」
七海「”逃げてばかりの臆病者”でしょ？」
玲未（逃げてばかり・・・ 臆病者・・・）
玲未「・・・そうだね」
玲未「・・・逃げてばかりの臆病者だね私」
七海「認めるんだ まあ、何も出来ないから 認めるしかないよね・・・ふふ、憐れ」
玲未「でも・・・違うから！」
七海「は？」
玲未「・・・殺せなかったんじゃない！ 殺さなかったの！」
七海「ふっ・・・ 何それ臆病者が 自己正当化してるだけじゃない」