World of Re:Salvation

Alma@Wellクリエイター

1話 M&F(脚本)

World of Re:Salvation

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〇海辺
  砂に、
  恋人になってほしい。
  そう書かれた。
  文字はあっという間に波にさらわれて
  消えてしまったけれど。
  その拙い字も、
  夕焼けも、
  夕日に照らされた彼の顔も、
  今もよく覚えている。

〇屋敷の書斎
フリード・レイン「・・・・・・トーコ様」
フリード・レイン「トーコ様、 読書中に居眠りとは、どういう了見ですか?」
トーコ・スカーレット「ぇ、あ。 ご、ごめんなさい・・・・・・」
フリード・レイン「えらく静かだと思ったら、まさかお休みの最中とは・・・・・・」
フリード・レイン「はぁぁぁ」
トーコ・スカーレット(こ、このひとは、誰?)
トーコ・スカーレット(トーコって、それが私の名前?)
トーコ・スカーレット(私は、塔子のはず・・・・・・)
フリード・レイン「口をポカンと開いて、 みっともない」
フリード・レイン「もう少し、凛々しく振る舞いください」
フリード・レイン「品性を身につけることも大切なことです」
フリード・レイン「ただ魔力がある」
フリード・レイン「今のあなたは、それだけです」
トーコ・スカーレット(魔力?)
トーコ・スカーレット「──」
フリード・レイン「努力をしないものにその力を行使する 権利はありません」
フリード・レイン「精進なさいませ、 トーコ様」
フリード・レイン「あなたは、 この世界で唯一の魔女、 なのですから」
トーコ・スカーレット(ま、魔女・・・・・・)
トーコ・スカーレット(私が?)
フリード・レイン「何度も申していますが、」
フリード・レイン「あなたは、自身を利用しようとする輩から身を守らればならないのです」
トーコ・スカーレット(利用だなんて・・・・・・)
フリード・レイン「よろしいですか?」
トーコ・スカーレット「は、はい」
フリード・レイン「わかって頂ければ、よろしい」
フリード・レイン「では、 お好きなラインラインのフレーバーティーをお持ちしましょう」
トーコ・スカーレット(飲んだことないけど・・・・・・)
トーコ・スカーレット「ありがとうございます」
フリード・レイン「いつものように、」
フリード・レイン「「ええ、お願い」 で、良いのですよ」
フリード・レイン「まだ、ぼんやりされていらっしゃる」
フリード・レイン「おかしな夢でも見られましたか?」
トーコ・スカーレット(夢、ね)
トーコ・スカーレット(私にとっては、今がおかしな感じだけど)
トーコ・スカーレット「はは、そうかも・・・・・・」
トーコ・スカーレット「しれないです」
フリード・レイン「今日は早めにお休みくださいね」

〇屋敷の書斎
  執事と思しき男は、一礼すると部屋を後にする。
トーコ・スカーレット(待って)
トーコ・スカーレット(わけがわからない)
トーコ・スカーレット「魔女ってなに?」
トーコ・スカーレット「魔法が使えるってこと?」
トーコ・スカーレット「っていうか。 なんで、私ひとりなの?」
トーコ・スカーレット「いったい、どういうこと?」
トーコ・スカーレット(さっきまで、カイが一緒にいたのに)
トーコ・スカーレット「カイ・・・・・・」

〇車内
御堂カイ「なぁ、」
御堂カイ「俺じゃなくて、 スマホに夢中って感じ?」
宮野塔子「ご、ごめん」
宮野塔子「メッセージ見てて」
宮野塔子「付き合って、 もう1年になるんだって思って」
御堂カイ「あっという間だったな」
御堂カイ「会う時間、ほとんど取れなくてごめんな」
宮野塔子「ふふ」
宮野塔子「動画配信で毎日合ってるよ」
宮野塔子「いいの、いいの」
宮野塔子「忙しいのはわかってる」
宮野塔子「私もバリスタの勉強始めてから、」
宮野塔子「かかりきりだし」
宮野塔子「結構忙しいんだよ」
御堂カイ「ありがとうな」
宮野塔子「大丈夫!」
宮野塔子「元気な姿を見れるのが嬉しいし」
御堂カイ「近くにいてくれるからな」
宮野塔子「気持ちはね!」
御堂カイ「コーヒーさ、」
宮野塔子「うん」
宮野塔子「マスターに認めてもらったら、」
御堂カイ「一番に飲ませて?」
宮野塔子「もちろん!」
宮野塔子「早く美味しいコーヒー飲んでもらえるように頑張る!」
御堂カイ「応援してる」
御堂カイ「塔子は、きっとなれる」
宮野塔子「ありがとう」
  今日は、特別な日だった。

〇空港の屋上
御堂カイ「大丈夫! 絶対に守りきってやる」

〇映画館の座席
  お昼は、封切りされた出演映画を見に行って、

〇海辺の街
御堂カイ「ロケで来て、 一緒に見たいって思ったんだ」
  海辺のドライブ。

〇結婚式場のテラス
御堂カイ「一緒にいてくれて、嬉しい」
  普段使いにできそうなブレスレットの、
御堂カイ「また、お揃いにしてもいい?」
  プレゼントをくれて、

〇レストランの個室
御堂カイ「恋人になってくれて、 ありがとうな」
  夜は、レストランで食事をして、

〇車内
御堂カイ「塔子」
  記念になることをしよう、
  と言って誘ってくれたデートがもう終わる。
宮野塔子(もうちょっと一緒にいたかったなぁ・・・・・・)
御堂カイ「あのな、」
宮野塔子「うん」
御堂カイ「これからのことなんだけど、」
御堂カイ「俺、」
  カイがそう言って、
  横目で私を見て──。

〇海辺の街
  えっと──
  それから?

〇屋敷の書斎
トーコ・スカーレット「思い出せない・・・・・・」
トーコ・スカーレット「カイ、 きっと、大事な話しをしようとしてたのに・・・・・・」
トーコ・スカーレット「はぁぁぁ」
  私は、改めて部屋を見回す。
トーコ・スカーレット「映画に出てきそう・・・・・・」
  見覚えは全くない。
トーコ・スカーレット「ここ、日本じゃないでしょ・・・・・・」
トーコ・スカーレット(どうして、どうやって?)
トーコ・スカーレット(まさか、拉致られた?)
トーコ・スカーレット(いやいや、私を攫ってどうするのよ)
妖精「お困りですね!」
妖精「ね?」
トーコ・スカーレット「え!」
トーコ・スカーレット「こ、こども?」
トーコ・スカーレット(いったい、どこから入って?)
トーコ・スカーレット「あなた・・・・・・」
妖精「気にしない、気にしない」
妖精「いきなり知らない世界に来たら、ビックリするよね!」
妖精「異世界転生は、ある程度知ってる世界に来るから、成立するけど」
妖精「キミは、身代わりだからさ!」
トーコ・スカーレット「み、」
トーコ・スカーレット「身代わり!!?」
妖精「うん。 身代わり」
妖精「身代わりの上に、 未知の世界に放り込まれて、 流石に酷かなと思って」
妖精「だから、 この世界のことを簡単に教えておこうと思って」
妖精「おせっかいしちゃう」
妖精「私は、お助けキャラと思ってくれていいよ!」
妖精「あえて言うなら、 妖精って感じかな?」
妖精「ま、キミにしか見えないし」
妖精「で、受けるよね。 おせっかい」
妖精「──」
  無言の圧がすごい。
トーコ・スカーレット「お願いします・・・・・・」
妖精「うん、素直でイイね!」
トーコ・スカーレット「異世界転生」
トーコ・スカーレット「死んで異世界にいくっていう・・・・・・?」
トーコ・スカーレット「私、死んだの?」
トーコ・スカーレット(思い出せないのはそのせい?)
妖精「うん。 居眠り運転の事故でね」
妖精「恋人と二人で巻き込まれて、」
トーコ・スカーレット「さっき、」
トーコ・スカーレット「身代わりって・・・・・・」
トーコ・スカーレット(それって)
  ──カイの・・・・・・。
妖精「うん。 キミが考えてる通り」
  そんな──
  カイが私を身代わりにするなんて・・・・・・
妖精「まー、ショックだよね」
妖精「気持ちはわかるけど、」
妖精「彼、アイドルだしね」
  確かに、
  背負うものの重さはあるだろう。
トーコ・スカーレット(なんで、今日だったのよ)
トーコ・スカーレット(私にとっては、 一番楽しい1日だったのに──)
妖精「東雲塔子は、死んでここに来た」
妖精「それが事実」
トーコ・スカーレット「ここは、どこなの?」
トーコ・スカーレット(──今は、苦しくて哀しくて怒りも沸かない)
トーコ・スカーレット(まさか、身代わりで死ぬなんて・・・・・・)
トーコ・スカーレット(まるで、殺されたみたい・・・・・・)
妖精「ここは、君の恋人が書いた世界だよ」
トーコ・スカーレット「カイが!」
トーコ・スカーレット「書いた?」
妖精「『World of Salvation』」
妖精「加護の女王の力が荒廃し、魔物が徘徊する世界で、国中の令嬢が、女王になるために争い、」
妖精「それを支える騎士との甘い恋物語もある恋愛ファンタジーノベルさ」
トーコ・スカーレット「れ、恋愛ファンタジー・・・・・・」
トーコ・スカーレット(カイが、甘い恋愛って)
トーコ・スカーレット(そんな感じだっけ?)

〇巨大ドーム
  私が知ってるのは、
ファン「きゃー!」
ファン「カッコイイ!」
ファン「カイくーん!」
御堂カイ「聞こえねーなぁ」
御堂カイ「もっと騒げよ!!」
  今じゃ割と貴重な
  オラオラ系アイドルの姿。
  S系キャラだ。
  言葉遣いは荒く、
  目つきは鋭く、
  態度もでかい。
  アイドルグループ『Colors』は、
  MCが得意な白王子こと、
  美野ヒイロ。
  ダンスが得意な赤王子こと、
  貴崎ルイ。
  そして、
  歌が得意な黒王子こと、
  御堂カイ。
  この3人からなる
  結成100日で、
  武道館ライブを達成した
  人気グループだ。
  来年には、海外公演も視野に入れている程の。

〇屋敷の書斎
トーコ・スカーレット(カイの小説ねぇ・・・・・・)
妖精「見せてあげる」

次のエピソード:2話 『World of Salvation』

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