エピソード10〜シンジツ ガ クチ ヲ ヒラク〜(脚本)
〇流れる血
ヒラギノカオル「私は、 整形の「失敗」を繰り返しているうちに」
ヒラギノカオル「人間を怪物へ「改造」する ──その才能を自分に見出したんです」
ヒラギノカオル「それからは、自分の手でできあがった 「怪物」に愛着が湧くようになりまして」
ヒラギノカオル「愛しいなあ、かわいいなあ って思うようになったんですよ」
ヒラギノカオル「・・・全く、面白い話ですよね」
ヒラギノカオル「整形をわざと失敗して 患者たちを「醜く」していたつもりが、」
ヒラギノカオル「むしろ「かわいい」姿に 変えていた、なんて──」
ヒラギノカオル「これこそ、医者としての「悦び」だと 思いましたよ」
ヒラギノカオル「『この傷を治したら、 好きな人に「かわいい」って言われたい』」
ヒラギノカオル「私の元に来る患者たちは 大抵そんなことを言ってました」
ヒラギノカオル「だから、かわいくしてあげたんですよ ・・・それなのに」
ヒラギノカオル「・・・彼らは恐ろしいものを見る目で 「化け物」「妖怪」って言うんです」
ヒラギノカオル「化け物? 妖怪? それの何が悪いんです?」
ヒラギノカオル「私にとって、それらはまるで 赤子のように愛すべき存在です」
ヒラギノカオル「それに比べたら人間なんて、 知能を持った、口の悪い下等生物ですよ」
ヒラギノカオル「自分の本能のままに、 ただ真っ直ぐに行動する化け物よりも」
ヒラギノカオル「無駄に知恵を振り絞って 人を傷つける人間の方が醜いんだ、って」
ヒラギノカオル「どうして、彼らには わからないんですかねえ・・・」
「・・・じゃあ、じゃあ、あなたは」
アオバレイコ「私のこの姿も、 「かわいい」と思っているの・・・?」
ヒラギノカオル「ええ、もちろんですよ」
ヒラギノカオル「だから、この前あなたに 「もっとかわいくして」って言われた時は」
ヒラギノカオル「頭に疑問符が浮かびましたよ 十分かわいいのにな、って」
アオバレイコ「・・・」
ヒラギノカオル「・・・まあそういう訳で、 私はひっそりと闇医者として、」
ヒラギノカオル「化け物を作り続けました」
ヒラギノカオル「そんなある日── 私の目の前に、一体の妖怪が現れましてね」
ヒラギノカオル「彼のあとをついて行くと、 私はある地に踏み入れました」
〇村に続くトンネル
ヒラギノカオル「・・・そう、御野町0丁目ですよ」
アオバレイコ「・・・! その妖怪って、一体何なのよ?」
ヒラギノカオル「さあ、私も詳しいことはわかりません」
ヒラギノカオル「ただ、御野町0丁目にいるうちに わかったことは、」
ヒラギノカオル「あの地は、人間の世界とは隔絶された、 妖怪の世界だということ」
ヒラギノカオル「あの地は、普通の人間は 来ることができないこと」
ヒラギノカオル「御野町0丁目に行ったことのある人、 もしくはそこに住む妖怪の案内によって、」
ヒラギノカオル「外の人間は、初めて御野町0丁目に 足を踏み入れることができるんです」
アオバレイコ「じゃあ、 私を最初にあの地に案内したのも・・・」
ヒラギノカオル「妖怪だった ・・・ふふ、それは違います」
ヒラギノカオル「・・・そうですよね?」
ヒラギノカオル「アタラシミサコさん?」
〇流れる血
アオバレイコ「あ・・・あんた あの時の・・・!」
ヒラギノカオル「そういえば、あなたには」
ヒラギノカオル「アタラシミサコさんについて 詳しく紹介していませんでしたね」
ヒラギノカオル「・・・ではこの場で改めて 紹介しましょう」
ヒラギノカオル「御野町0丁目で 私が最初に「整形」した人間」
ヒラギノカオル「・・・それが、 アタラシミサコさんなんです」
アタラシミサコ「・・・!!」
アオバレイコ「こ、この女が・・・ あんたの最初の被験者!!」
ヒラギノカオル「御野町0丁目はとても快適なのですが」
ヒラギノカオル「人間がやって来れないのが 唯一の欠点でした」
ヒラギノカオル「私は、どうしても 人間を化け物に整形したかったので」
ヒラギノカオル「外の世界で、この女を見つけたんです」
ヒラギノカオル「・・・この女も、 アオバレイコさん、あなた同様、」
ヒラギノカオル「中々悲惨な人生を 送っていたようでしたよ?」
アタラシミサコ「・・・や、やめて・・・」
ヒラギノカオル「ふふ、一つ面白いエピソードを 紹介しましょうか」
ヒラギノカオル「この女、親からも愛されず、 同級生からもいじめられて、」
ヒラギノカオル「ついには、自殺と見せかけて 橋から川へ無理やり落とされ──」
アタラシミサコ「やめてええええええええッ!!」
ヒラギノカオル「・・・あっはは、すみません つい口が滑っちゃいました」
アタラシミサコ「・・・この・・・ 医者のクズが・・・!!」
ヒラギノカオル「ふふ、あなたこそクズでしょ? あの未遂の後、人の命を奪ってんですから」
アタラシミサコ「あんたにだけは・・・クズなんて 言われたくないッ・・・!!」
ヒラギノカオル「何言ってんですか 私は殺人に手を染めたことはありませんよ」
ヒラギノカオル「・・・でもあんたは、 ただの人殺しだろォが」
アタラシミサコ「!!」
ヒラギノカオル「わかったら黙ってろ 殺人者が、医者の私に舐めた口聞いてんじゃねえよ」
アタラシミサコ「・・・はい・・・すみません・・・」
アオバレイコ「・・・何よ・・・ 人を自分の思うままに操って、化け物に整形して、」
アオバレイコ「そんなアンタも、 殺人しているようなモンじゃないの!!」
ヒラギノカオル「ひひッ、何とでも言ってください 負け犬の遠吠えにしか聞こえませんから」
アオバレイコ「・・・このォ・・・ッ!!」
ヒラギノカオル「・・・さて、話を戻しましょうか」
ヒラギノカオル「私は、殺人を犯して その場で立ち尽くしていたこの女に声をかけて、」
ヒラギノカオル「私が匿ってやるからと、 御野町0丁目に連れて行きました」
ヒラギノカオル「そして適当な理由をつけて、 この女を整形し続けました」
ヒラギノカオル「・・・でも、失敗でしたね」
アオバレイコ「失敗?」
ヒラギノカオル「ええ、この女のスペックが低すぎて、 私の理想とする化け物にはできなかったんです」
ヒラギノカオル「・・・そこで私は、また新たな 実験動物が必要になりまして」
ヒラギノカオル「そこで、この女に命令したんです」
ヒラギノカオル「アオバレイコを見つけてこい ・・・と」
アオバレイコ「・・・ど、どうして よりによって私をご指名なのよ・・・」
ヒラギノカオル「ふふ、それはね、 化け物に最も近い人間だからですよ」
ヒラギノカオル「あなたのような化け物の原石なんて、 中々いませんから」
ヒラギノカオル「当時は、口を裂けただけで 終わっちゃったので」
ヒラギノカオル「あの日の続きをしたいと考えた訳です」
〇病院の診察室
ヒラギノカオル「・・・思い出深い、この場所で、ね」
アオバレイコ「──!!」
アオバレイコ「・・・なッ 私をベッドに寝かせて、どうするつもりよ!」
ヒラギノカオル「・・・だからァ あの日の続きをしようって、言ったでしょォ?」
ヒラギノカオル「・・・安心してください 痛みはありませんから」
ヒラギノカオル「素敵な目覚めを約束しますよ☆」
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アタラシミサコさんの正体、そしてヒラギノカオルさんの思惑、それらが一気に明らかになりましたね。それにより、これまでの疑問や違和感といった「刺さっていたトゲ」が全て抜けていくようでした。にもかかわらずスッキリせずにモヤモヤ感が残るのは、このホラーならではですね。この物語の帰結、とても楽しみです!