03 彼女と幸福(脚本)
〇おしゃれなリビングダイニング
母親「信子、明日から塾に行くわよ」
母親「遊んでいる暇なんか無いわ」
母親「勉強は積み重ねよ」
母親「早く始めればそれだけ良い学校に行けるんだから」
〇おしゃれなリビングダイニング
母親「テストの結果はどうだったの、信子?」
母親「・・・そう」
母親「ねぇ、信子」
母親「貴方分かってるの?」
母親「成績さえよければ、それだけで良い進学先に行けるのよ?」
母親「何処の学校に行くかでこれから先の人生、全く違うんだからね」
母親「・・・いいえ、貴方は分かってない」
母親「いい? 勉強を頑張りなさい」
母親「それさえしてくれれば、お母さん何にも言わないんだからね」
〇おしゃれなリビングダイニング
母親「信子、貴方大学は何処に行くつもりなの?」
母親「・・・そう」
母親「信子、進路希望はここにしなさい」
母親「貴方なら受かるわ」
母親「こっちの方がOGも大企業へ就職してる」
母親「いい、信子?」
母親「良い就職先に入れば、それだけで将来は明るくなるの」
母親「年収だって高いし、結婚相手だってハイスペックな相手を選べる」
母親「そうすれば、貴方の将来は明るいのよ」
母親「だから──」
〇おしゃれなリビングダイニング
「貴方はこれからも私の言うとおりにすれば良いのよ」
〇アパートのダイニング
信子「──っ、はぁ!?」
信子「はぁ──、はぁ──」
信子「うぅ・・・」
信子「お水、飲もう・・・」
〇アパートのダイニング
信子「ふぅ・・・」
信子「仕事、行きましょ・・・」
〇役所のオフィス
信子「おはようございます・・・」
上司「おはようございます、紫錦さん」
上司「・・・あの、大丈夫ですか?」
信子「え?」
信子「あの、何がでしょうか?」
上司「いや、顔色が・・・」
信子「・・・あぁ」
信子「大丈夫です・・・」
信子「・・・少し、寝つきが悪かっただけなので」
〇役所のオフィス
〇役所のオフィス
〇役所のオフィス
信子「はぁ・・・」
信子「逃げてもいられないか・・・」
〇ゆるやかな坂道
信子「──もしもし、お母さん?」
信子「昨日のメッセージだけど、どうかしたの?」
母親「どうしたの、じゃないわよ」
母親「返事も返さないんだから」
信子「・・・仕事が忙しかったの」
母親「貴方、公務員じゃない」
母親「残業も無いのに何言ってるの」
信子「──っ!?」
信子「残業が無いからって、仕事で疲れない訳じゃないでしょ・・・」
母親「何か言った?」
信子「別に・・・」
母親「まったく・・・」
母親「まぁ、いいわ」
母親「それよりも貴方の将来の事よ」
信子「将来って・・・?」
母親「貴方の結婚の事よ」
母親「公務員は安定はしてるけどお給料がねぇ」
母親「良い暮らしをするならもっと稼いでる相手を見つけないと」
信子「え?」
母親「そうすれば貴方も公務員なんて仕事辞められるわよ」
信子「いや、お母さん?」
信子「私、今の仕事を辞めたいなんて一言も・・・」
母親「何言ってるの、地方公務員なんてつまらない仕事じゃない」
信子「──っ!?」
母親「だからね」
母親「良いお見合い相手を、見つけてきたのよ」
信子「・・・は?」
母親「苦労したのよぉ」
母親「お母さん、貴方の為に頑張ったんだから」
信子「わ、私、お見合いなんて・・・」
母親「そんなワガママ言って・・・」
母親「これは貴方のためなのよ?」
母親「これ以上年をとれば相手なんて選べなくなるわ」
母親「だから、若いうちにお金持ちと結婚すれば幸せな家庭を築けるの」
母親「私も若いうちにきちんと考えて行動していたらね・・・」
母親「信子」
母親「貴方には私のようになってほしくないの」
母親「だから、私の言うとおりにしなさい」
母親「そうすれば貴方は幸せになれるんだから」
信子「幸せに・・・」
母親「今度の休みにうちに顔を出しなさい」
母親「いくつか写真があるから、好きな相手を──」
母親「──ちょっと信子?」
母親「貴方聞いてるの?」
母親「私は貴方の為を思っ」
〇ゆるやかな坂道
〇おしゃれなリビングダイニング
母はとても苦労をしてきたらしい
父と離婚してから、1人で私を育ててくれた
〇神社の石段
〇おしゃれなリビングダイニング
それは分かっている
理解している
それでも──
〇神社の本殿
信子「──私は」
信子「あの人がいなければ、幸せになれたのかな・・・?」
ここに至ってやっと、そう思わずにはいられなかった
〇マンションの共用廊下
信子「・・・あぁ、高校の頃か」
信子「まだ佳純にも出会って無いわね」
母親「あらお帰りなさい、信子」
信子「・・・ただいま」
〇おしゃれなリビングダイニング
母親「そうそう、進路希望調査が出てたわよね?」
母親「信子、貴方大学は何処に行くつもりなの?」
信子「・・・何処に行ったら良いと思うの?」
母親「え?」
信子「パンフレット、持ってるんでしょう?」
母親「え、えぇ」
母親「お母さんは此処が良いと思ってるの」
母親「ここならOGの人達も大企業に就職してるし、将来も明るいわ」
母親「そうすれば──」
信子「──お金持ちと結婚して、幸せな家庭を築ける、って?」
母親「!?」
母親「え、えぇ、そうよ」
母親「・・・信子?」
信子「そりゃあ分かるよ・・・」
信子「何回も」
信子「何回も何回も何回も、同じ話を聞いてきたんだから・・・っ!!」
母親「え?」
信子「こんなの!!」
母親「貴方、何をやってるの!?」
信子「結局こんなの、お母さんが決めただけの進路じゃん!!」
母親「私は貴方の為を思って!!」
信子「嘘をつくな!!」
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一気に読ませていただきました😆
面白かったです!最後にちょこっと成長してる姿を描いていて、しかもオチまで...素敵なお話でした🙌
おもしろかったです!
何が幸せなのかは人それぞれですね。嫉妬や苦しみを抱えていてもお金がある方が幸せなのか、お金はなくとも心から笑える方が幸せなのか……。物語を通して深く考えさせられました!
幸せってなんだろう、と考えに考えて分からなくなってきた……。
最後の世界線で主人公が幸せになれたかかどうかは分からないけど、友人の幸せを祝える人生は素敵で豊かなものだと思いました。