クラークコードー愛to憎しみの歴史IF小説ー

神テラス

第三話「遠友夜学校」(脚本)

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〇美術館
  ワタシは真知子さんと共に、札幌にある遠友夜学校の資料室を見学していた。
  新渡戸稲造によって戦前に開設された、夜学だ。
  帝国大学(旧北大)関係者も多数かかわったらしい。
  男女の別なく、無料で開かれた貴重な学びの場でもあった。
  友達と札幌ビール園で会う前に時間が少しあり、真知子さんと一緒に見学することにしたのだ。
  一方で、殺人事件については、ほとんどお手上げだ。
  札幌に到着後、真知子さんのアパートに居候しながら、残されたダイイングメッセージについて色々と文献や資料をあたってみた。
  しかし、全く手掛かりはない。
  経済学者の丸中教授が殺されたのは、北大近くの真夜中の公園だ。
  不思議なことに、周囲の防犯カメラには、全く不審者が写ってはおらず、手がかりは現場に残された、ダイイングメッセージだけだ。
  そのダイイングメッセージも有名な「Boys be ambitious(ボーイズ・ビー・アンビシャス)だ。
  「青年よ、大志を抱け」と一般的には訳される有名な言葉でもある。
  なぜ、丸中教授がその言葉をダイイングメッセージとして残したのかは謎だ。他には現場には言葉も残っていない。
  ワタシは気分転換のためにも、事件とは全く関わりのない、この資料室をのんびり眺めることにした。
ワタシ(戦前、北大の教職員や卒業生が主体となって「遠友夜学校」と言う名の夜学を運営していたんだな)
  ワタシは展示物を眺めながら、そう思った。
ワタシ(昔は経済的事情や子守り、家事に追われて、昼間、学校に通えなかった子供達も、たくさんいたんだな)
ワタシ(特に、女子はそうだろうな)
ワタシ(そんな子供達のために、(旧帝国大学の)北大の有志達が夜学を運営し、学問への門戸を開いていたんだな。立派なものだ)
ワタシ「皮肉なことだ」
  渡氏は資料展示を見ながらため息をついた。
ワタシ「遠友夜学校が廃止された同年、無謀で愚かな作戦といわれた、インパール作戦が発動されているとは」
  ワタシがそう述べると、真知子さんも頷いた。
真知子さん「遠友夜学校の方が、本当の意味で、国民のためにも、世界のためにもなっていたのにね」
  真知子さんは、資料展示を見ながらワタシにそう答えた。
ワタシ「ああ、本当にそうだな」
  ワタシはそう答えた。
ワタシ「歴史は決して繰り返さない。ただ人間が、愚かさを繰り返すだけだ」
  ワタシは展示物を見ながら、真知子さんに述べた。
  二人が展示室を一通り見終わると、良い感じで時間つぶしもできた。
ワタシ「さてと、一通り見学したし、ビール園へ行こう。久しぶりのジンギスカン!楽しみ楽しみ!」
真知子さん「全く、ここにも学ばない人がいるわね」
  真知子さんは呆れ顔でワタシを見た。
  その後、二人はビール園へと歩いて行った

〇テーブル席
  ビール園には北海道の友人達も遊びに来ており、久しぶりにみんなで、ワイワイ、ガヤガヤした。
  野郎どもが、ビールとジンギスカンをたらふく食べて寝ている中で、女性陣はおしゃべりをしていた。
友達「で、どうなの真知子。式の日程とか決めたの?」
真知子さん「全く駄目よ。いつも話をはぐらかすのよ」
  真知子さんはため息をついた。
友達「早く結婚しちゃいなさいよ。私なんて、旦那が無収入でも結婚したんだから。煮え切らない旦那の背中を、思いっきりぶっ叩いてね」
  一人の女性が大きな声で笑いながら述べた。
友達「そうよ。ワタ君は、東京の区立女子大学の講師をやっているんでしょ?」
友達「不安定と言ったって、内地(本州)に職があるだけいいじゃないの。北海道の就職状況はもっと厳しいのよ」
  別の女性の友人も真知子さんに述べた。膝元にも小さい子供もおり、あやしてもいた。
真知子さん「でも・・・」
  真知子さんは、ワタシの方を見た。
  ワタシは、グースカといびきをかきながら、他の男友達と一緒に寝ていた。
  真知子さんは、呆れながらも少し笑った

〇明るいリビング
  翌日、ワタシは真知子さんのアパートで目を覚ました。
  真知子さんは、看護師の勉強会に行ったらしい。
  机の上には、その旨の書き置きと、真知子さんお手製の酔い覚ましのスープが置いてある。
ワタシ「ありがたや。神様、仏さま、真知子様」
  ワタシはそう言って手を合わせ、スープを頂いた。
  その後、ワタシは身なりを整えると、大通り公園にある特別捜査本部へ、地下鉄で向かくことにした。
  石竹警部補から「ぜひ午前中に会いたい」とのメールが来ていたからだ。
  地下鉄に乗りながら、ワタシは考え事をしていた。
  なぜ、丸中教授は殺されたのか?
  丸中教授のダイイングメッセージ(「Boys be ambitious」)には、どういう意図があるのか?
  考えれば考えるほど、謎が深まる。
  当日の防犯カメラには、驚くべきことに何も映っていない。
  丸中教授はまるで、防犯カメラの死角に、ぴったりはまるかの如く殺されてもいる。
  それは、非常に不自然なことだ。
  それは、明らかにおかしい。
  それに加え、事件の進捗も全くない。
  また、殺された教授には借金がかなりあった。
  けれども、月一定額は返済しており、殺してまで回収するほどのことでもない(むしろ殺したら、回収できなくなる)
  殺された教授の金のやり取りや縁故、女性関係も、警察はあらっているが、全く容疑者となるような人物は浮かんでこない
ワタシ(となると、通り魔か研究仲間かだな。いや、教え子という線もある)
  ワタシは、考えれば考えるほど、奇妙な事件に思えてきた。

次のエピソード:第四話「黒い動き」

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