サンビタリア症候群

香久乃このみ

第四話 悪夢の連鎖(脚本)

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〇レストランの個室
  ──あらすじ──
  紅林信吾は
  幼馴染のシンちゃんだった。
  苗字の変わった原因は
  陽花にあると言うが・・・
紅林信吾(しんご)「みんなの憧れ、高嶺の花の楠原さんと 食事ができるなんて、僕は幸せだな」
紅林信吾(しんご)「再会に、乾杯」
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
楠原陽花(はるか)「単刀直入に聞く。 あなたが私のせいで味わった地獄って何?」
紅林信吾(しんご)「はは、いきなり本題に入るね」
紅林信吾(しんご)「もう少し料理を楽しんでからでも いいんじゃない?」
楠原陽花(はるか)「答えて」
紅林信吾(しんご)「昼間言った通り」
紅林信吾(しんご)「身分不相応な恵みを与えられた人間は、 その加護を失った瞬間攻撃対象に変わる って話」
紅林信吾(しんご)「僕はあの頃、勉強も運動もそして 容姿にも優れない気弱な子どもだった」
紅林信吾(しんご)「スクールカースト底辺で 間違いなかっただろうね」
紅林信吾(しんご)「なのに君という女神が 気まぐれに手を差し伸べた」
楠原陽花(はるか)「スクールカースト? そんなのうちのクラスにあった?」
紅林信吾(しんご)「なるほど」
紅林信吾(しんご)「スクールカーストのトップにいた君は、 その存在すら認識する必要がなかったんだ」
紅林信吾(しんご)「僕のように立場を自覚し、 身の程をわきまえなきゃならなかった 人間と違って」
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
紅林信吾(しんご)「君は僕とは正反対で、何をやっても ずば抜けているクラスの人気者だった」
紅林信吾(しんご)「ハルちゃん、君に幼い恋心を抱いていた 男子も少なくなかったんだよ」
紅林信吾(しんご)「あのいじめっ子のカズも 例外じゃなかった」
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
紅林信吾(しんご)「僕は君に好かれて有頂天だった。 だが、カズは面白くなかっただろうね」
紅林信吾(しんご)「見下していた底辺が、 自分の好きな女の子に好かれている」
紅林信吾(しんご)「それどころか君の影響で 他の女子までが僕に好意的になった」
楠原陽花(はるか)「あったわね」
紅林信吾(しんご)「ハルちゃん、君は僕のことを 周囲にこう言ったそうだね」
紅林信吾(しんご)「『泣かされても間違ったことに 立ち向かう、本当に勇気のある人間だ』 って」
楠原陽花(はるか)「言ったわ。誰か武将の言葉よ」
楠原陽花(はるか)「正確には、泣くほどの恐怖を感じながらも前に進める人間は、真の勇気がある、 だったかな」
紅林信吾(しんご)「君が急に僕に冷たくなってから、 あの言葉が僕に牙をむいたんだよ」
楠原陽花(はるか)「え・・・」
紅林信吾(しんご)「君にそっぽを向かれた僕は、 カズを筆頭としたいじめグループの ターゲットになった」

〇教室
カズ「お前、泣いても悪に立ち向かう、 勇気あるヤツなんだろ?」
カズ「みんなで『勇者』って呼んでやろうぜ」
シンちゃん「え・・・」
カズ「あ、オレ、今日廊下走っちゃった~。 悪いことやっちゃった~」
シンちゃん「・・・・・・」
カズ「何してんだよ、『勇者』! 悪に立ち向かえよ。かかって来いよ!」
シンちゃん「い、いやだよ」
カズ「相手してやるから、 かかって来いっつってんだよ!」
シンちゃん「う・・・・・・、うわぁあああ!!」

〇黒

〇レストランの個室
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
楠原陽花(はるか)(『勇者』・・・)
紅林信吾(しんご)「子どもじみた稚拙な言いがかりだよね」
紅林信吾(しんご)「けれど、子どもにとって効力は十分だ。 弱い立場の僕は逆らえなかった」
紅林信吾(しんご)「カズは幾度もくだらない悪事を僕に告げ、 わざと自分に ケンカを売るように仕向けた」
紅林信吾(しんご)「そして返り討ちにしては 高笑いしてたんだ」
紅林信吾(しんご)「『勇者弱ぇ』とね」
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
紅林信吾(しんご)「教師だって見て見ぬふりだ」
紅林信吾(しんご)「それどころか、 先に手を出したのは菊川だから、 お前が謝れと来た」
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
紅林信吾(しんご)「知らなかったんだね、 隣のクラスで起きていたのに」
紅林信吾(しんご)「ははっ、本当に 僕への関心がなくなってたんだなぁ」
楠原陽花(はるか)「私の言葉で、 そんなことになってたなんて」
楠原陽花(はるか)「配慮が足りなかったわ、 ・・・ごめんなさい」
紅林信吾(しんご)「!」
紅林信吾(しんご)「・・・・・・」
紅林信吾(しんご)「この程度で済んだと思ってる? 続きがあるんだよ」
楠原陽花(はるか)「続き?」

〇綺麗な一戸建て
  繰り返されるいじめに、
  僕は不登校になってしまった。
  大手企業のエリートである父にとって、
  実の息子が『敗者』となったのは
  耐えがたい屈辱だったようでね。
  昔から、愚鈍でみっともない息子に
  イライラしていた父は、
  母にこう言い放ったんだ。
信吾の父「この出来損ないを連れて出ていけ!」
信吾の父「いじめられて不登校?」
信吾の父「こんな恥ずかしい奴が 俺の息子であるはずがない!」
  ・・・ってね。

〇レストランの個室
紅林信吾(しんご)「僕の苗字が変わったのは、そんな理由」
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
紅林信吾(しんご)「言っておくけど、 君は悪くないよ、ハルちゃん」
紅林信吾(しんご)「いじめを行ったのはカズだし、 僕を母とともに見捨てたのは父だ」
紅林信吾(しんご)「でもね、もしも君が 僕に関わらずにいてくれれば、」
紅林信吾(しんご)「こんなことにはならなかっただろうと 思う時があるんだ」
紅林信吾(しんご)「女神の気まぐれな恩恵の反動は、 予想以上に大きい」
紅林信吾(しんご)「多分、あの桜川ってやつも 僕と似たような道を辿るだろうね」
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
紅林信吾(しんご)「もう一度言うよ。君は何も悪くない」
紅林信吾(しんご)「支払いは済ませてある。 ここの料理はとても美味しいから、 最後まで食べて行ってよ」
紅林信吾(しんご)「じゃあね、ハルちゃん」
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
楠原陽花(はるか)「先に私を見捨てたのは、 あなたじゃない・・・」

〇ビジネス街

〇オフィスのフロア
社員「おい、この資料データ抜けてんぞ!」
桜川大和(やまと)「あ、すみません!」
社員「しっかりしろよ、残飯」
社員「まぁ、残飯だしなぁ」

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コメント

  • うわぁ、陰湿…… 女も恐いけど、男の妬み、恨みも中々…… 男女はあまり関係ないのか。
    その中で陽花のばっさりした態度が輝いて見えます。まさしく花。

  • 陽花、サバサバですね。着いて早々に本題を切り出す感じは好ましいですが、デレるところも見てみたい。
    いじけてる考え方の信吾は、彼女と会って変わるのか。楽しみです。

  • 陽花…強い!😳
    シンちゃん、部屋に入りましたね!
    ワクワク✨

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