エピソード1(脚本)
〇一人部屋
明後日から始まる中間テストの勉強をするフミヤ。
教科書に偉人の肖像画が描いてあり、口から糸を出すという落書きに励む。
引っ張り出してきた小型ラジオから、深夜放送が流れる。
DJ「・・・今日のメールテーマは、もしも霊的な何かに追い掛けられたときの対処の仕方です・・・」
思わずラジオを注視する。
DJ「・・・それでは、さっそく、ラジオネーム・縦縞のクッキーさんからの投稿です・・・」
DJ「・・・私は卓球部なので、俊敏な動きが得意です・・・」
DJ「・・・だから、シュッシュと方向を変えながら、相手の注意を逸らします・・・」
DJ「・・・妹で試したらうまくいったので、代用できると思います・・・」
DJ「・・・縦縞のクッキーさんには、番組特製クリアポーチをプレゼント。みなさんもどしどしこぞって・・・」
途端にノイズがひどくなり、ラジオの音が一切聞こえなくなる。
ラジオを切ろうとしたところで、ノイズがおさまり、朴訥(ぼくとつ)とした女性の声が聞こえる。
「K60、S75、E78、R82、SH19・・・」
思い付きで、ノートに書き写す。
再びノイズが走り、深夜放送の続きが流れる。
DJ「・・・ラジオネーム・プラマイゼログラビティさんからの投稿です・・・」
DJ「・・・ポケットに盛り塩を持ってます、と告げる・・・」
DJ「・・・プラマイゼログラビティさんには、番組特製クリアポーチをプレゼント。みなさんもどしどしこぞって・・・」
フミヤ「ハハ」
教科書の別の偉人の口から、糸を出すという落書きを始める。
〇一人部屋
翌晩も、テスト勉強に励む。
DJ「・・・今日のメールテーマは、簡単アレンジレシピです・・・」
昨日とは打って変わった内容に、思わずラジオを注視する。
DJ「・・・それでは、さっそく、ラジオネーム・ヨークシャテリオさんからの投稿です・・・」
DJ「・・・パンケーキミックスを、緑茶の茶葉にどっさり入れて・・・」
途端にノイズが走る。
アンテナを左右にぐいぐい折り曲げていると、あの女性の呟きが聞こえる。
「K60、S75、E78、R82、SH25・・・」
昨日書いたノートに、新たに書き写す。
昨日・K60、S75、E78、R82、SH19
今日・K60、S75、E78、R82、SH25
最後のSH19が、SH25に変わっている。
他は、まったく一緒である。
「(大げさに机をたたく)で、何の意味が!?」
教科書の偉人の口に吹き出しを付け、“冷蔵庫の中が臭すぎる! ”と書き足す。
満足すると、すみやかに消灯し、布団に入って眠る。
〇一人部屋
数日後。採点されたテストが返ってくる。
五科目のテスト用紙が、机に並ぶ。
点数は、国語60点、数学75点、英語78点、理科82点、社会25点である。
即座にあのノートを取り出す。
K60、S75、E78、R82、SH19。
K60、S75、E78、R82、SH25。
フミヤ「俺はこのとき、テスト用紙と見比べて、ある共通点に辿り着いた」
フミヤ「教科をローマ字にしたとき、Kは国語の頭文字である」
フミヤ「国語60、数学75、英語78、理科82、社会25」
フミヤ「二度目に聞こえてきたアルファベットと数字が、返却されたテストの点数と一緒である」
フミヤ「これは、おそらく、その時点での点数を勝手に教えてくれていたのだ」
フミヤ「数学と社会がSでかぶるから、社会がSHなのも、どこか可愛げがある気がする・・・(そう思おう)」
フミヤ「そして、社会だけ、最初より6点アップした、ということである」
教科書のまっさらな偉人の口に吹き出しを付け、“たった6点かよ”と書き足す。
フミヤ「もっと頑張れた気がする・・・(肩を落とす)」
フミヤ「あの声は、いったい何だったんだろう・・・」
いくら考えても、まったく毛ほども心当たりはなかったが、
あれからフミヤは、若干成績が上昇傾向にあるという。
ラジオは様々な電波をキャッチできてしまうので、この謎のメッセージの正体は何かとドキドキしながら読んでいました。まさかそんな情報を得ていたとは、驚きです。
冷静にそれを分析している主人公のキャラクターが好きです。
謎のアルファベットと数字の配列、なにか恐ろしいことの前兆でフミヤに囁いていたとおもったら、テストの成績予想だったので一本取られました!
ラジオから意味のわからない音声が聞こえてくるというのは、韓国の放送電波を拾ったかよくないことの起こる前兆だと思いましたがテストの成績が上がるという終わり方でホッとしました。ホラーは苦手なので