春の祭り(脚本)
〇大きな日本家屋
〇実家の居間
瀬尾 彩歌 「えー急な用事!?楽しみにしてたのに!・・・もう!最悪!」
瀬尾 文代 「どうしたの?彩歌?」
瀬尾 彩歌 「あ、おばあちゃん!今ね彰人から連絡あってね今度のお祭り一緒に行けなくなっちゃた!」
瀬尾 文代 「おやおや彩歌の彼氏かい?」
瀬尾 彩歌 「うん!ここ最近あってないから!お祭りの日会えると思ったのに!」
瀬尾 京子 「ほら!お昼まだでしょ?これ食べな!」
瀬尾 彩歌 「あ、ピラフ!大好物!」
瀬尾 京子 「おばあちゃんのは違うの作るから!」
瀬尾 文代 「いいよ、私はお腹すいてないから、お茶さえあれば」
瀬尾 彩歌 「その湯呑みずいぶん古いね!」
瀬尾 京子 「そういえば、私が物心ついた時からあるわ! 相当な年代ものよ」
瀬尾 彩歌 「おばあちゃんその湯呑みいつ買ったの?」
瀬尾 文代 「これはね、おばあちゃんが彩歌くらいの年頃に受け継いだ湯呑みよ。あの頃は終戦前でねぇ、色んな物が不足していたよ」
瀬尾 彩歌 「そんなに古いんだ、ふ〜ん」
瀬尾 京子 「こう見えてもおばあちゃん昔はね美人さんだったらしいよ!」
瀬尾 彩歌 「おばあちゃん美人だったて事はモテたの?聞きたい!おじいちゃんとの出会いは?」
瀬尾 文代 「フフッ、出会いはねぇ──」
〇桜の見える丘
吉川 文代 「今年も綺麗な桜が見れて安心するわ」
〇桜の見える丘
吉川 文代 「あっ!」
手にしていたハンカチが風で飛ばされる
引田 昇 「元気なハンカチですね!こっちに飛んできましたよ!ハイッ!」
吉川 文代 「ありがとうございます!(素敵な方!)」
引田 昇 「綺麗ですね!」
吉川 文代 「えっ?えっ?」
引田 昇 「フフッ桜の事ですよ」
吉川 文代 「そ、そ、そうですね!」
引田 昇 「アハハハッ!」
〇桜の見える丘
吉川 文代 「見て下さい桜吹雪!」
引田 昇 「本当ですね!ハハッ!」
〇実家の居間
瀬尾 彩歌 「えっ?おじいちゃんの名前違う!もしかして、元カレ的なヤツ?」
瀬尾 京子 「茶化さないで聞きなさい彩歌」
瀬尾 彩歌 「それで?どうなってくの?」
瀬尾 文代 「それからねぇ──」
〇広い玄関
吉川 文代 「すいません家まで送っていだいて!」
引田 昇 「いえいえ!それより自己紹介がまだでしたね 僕は引田昇といいます」
吉川 文代 「私は吉川文代です!一昨年両親が病気で他界して今はここで一人で住んでるんですよ!」
引田 昇 「えっ!僕も去年おじいちゃんが亡くなって一人暮らしです、一人は何かと大変ですよね!近所に住んでるので今度遊びに来て下さい!」
吉川 文代 「ええ!是非行きます!」
引田 昇 「僕もここに顔見せに来てもいいですか?」
吉川 文代 「もちろんです!お待ちしてますよ!」
引田 昇 「ありがとうございます!近いうちにまた来ますので、それでは!」
吉川 文代 「はい!今日はありがとうございました!」
引田 昇 「失礼します!」
吉川 文代 (近いうちっていつ来てくれるのかしら・・・早く会いたいなぁ)
〇古風な和室
2日後
吉川 文代 「凄い強い風と雨ね、大丈夫かしら?」
〇古風な和室
吉川 文代 「え?何にこの音?」
「文代さん!居ますか!文代さん!」
吉川 文代 「あの声は!?昇さん?」
〇広い玄関
ドン!ドン!
吉川 文代 「昇さん!今開けます!」
引田 昇 「文代さん!良かった!間に合った!」
吉川 文代 「どうされたんですか?ずぶ濡れじゃないですか!」
引田 昇 「強い雨と風の影響で、文代さんの家の裏山が崩れてしまいそなんです!」
吉川 文代 「えっ?そんな!」
引田 昇 「とりあえずここから避難しましょう!さぁ!」
吉川 文代 「は、はい!」
〇岩山
引田 昇 「ハァハァ間一発でしたね!」
吉川 文代 「そんな!お家が無くなっちゃうなんて!」
吉川 文代 「両親の形見の品持って来れなかったなぁ・・」
引田 昇 「文代さん・・・ここは危ないので、離れましょう」
吉川 文代 「・・・そうですね」
引田 昇 「とりあえず僕の家に来て下さい。案内します!」
〇大きな日本家屋
引田 昇 「着きました、ここが僕の家です!さぁどうぞ!」
吉川 文代 「はい!お邪魔します!」
〇古民家の居間
引田 昇 「そこに座って下さい!今、浴衣の替えおもちますから!」
吉川 文代 「そ、そんなお気になさらず!」
引田 昇 「風邪ひいちゃいますよ!」
引田 昇 「これで髪拭いて下さい!」
吉川 文代 「ありがとうございます!」
〇古民家の居間
吉川 文代 (広いお家ねお手入れ大変そう!)
引田 昇 「お待たせしました!先に着替えて申し訳ありません!あちらの部屋に浴衣置いてますのでそちらを着て下さい!」
吉川 文代 「ありがとうございます!」
引田 昇 (もう少しはやく文代さんの家に到着出来たら形見の品を持ち出せたかもなぁ・・・文代さん悲しいだろうなぁ)
吉川 文代 「着替え終わりました!」
引田 昇 「どうです!丈は合いましたか?」
吉川 文代 「ええ!ちょうど良いです!」
引田 昇 「良かったです!さぁ温かいお茶でもどうぞ!」
吉川 文代 「何から何まで、ありがとうございます!」
引田 昇 「本当に文代さんが助かって良かった!」
吉川 文代 「昇さんが駆けつけてくれなかったら、今頃土の中だったかもしれませんね!」
引田 昇 「冗談はやめて下さいよ!そうなったら悔やんでも悔やみきれませんよ!」
吉川 文代 「えっ?」
引田 昇 「あわわっ!か、今日は寝ましょう!お布団用意しますので!」
吉川 文代 「は、はい!」
〇古民家の居間
翌朝
吉川 文代 「ハッ!すっかり寝過ぎちゃった!昇さんは?」
〇大きな日本家屋
吉川 文代 「昇さーん、どこですか!」
引田 昇 「あ、おはようございます!文代さん!」
吉川 文代 「昇さん!寝過ぎてしまい申し訳ありませんでした!」
引田 昇 「いえ、いえ!ゆっくりして下さい!」
吉川 文代 「お散歩に行ってらしたのですか?」
引田 昇 「・・・これ受け取って下さい!」
吉川 文代 「こ、これは!」
引田 昇 「実は朝から文代さんの両親の形見を探していたんですが、見つかったのそれだけだったんです!」
吉川 文代 「グスッううっ」
引田 昇 「申し訳ない!」
吉川 文代 「いえ、これ母が良く使ってたんです、探してくれて、ありがとうございます!」
引田 昇 「良かった!ぼくも形見の事が気がかりでしたので!」
吉川 文代 「ううっ!」
引田 昇 「さぁ家の中に戻りましょう!」
〇古いアパートの居間
引田 昇 「こんな物しかありませんがお召し上がり下さい」
吉川 文代 「あの・・昇さん・私迷惑になってませんか?」
引田 昇 「へっ?」
吉川 文代 「もし、迷惑になっているのなら・・・」
引田 昇 「そんな事はありません!」
吉川 文代 「えっ?」
引田 昇 「はっきり申し上げます!私は貴方と一緒に暮らしたいです!文代さんが嫌なら諦めます!私は文代さんを好きという想いがあります!」
吉川 文代 「あ、え?」
引田 昇 「も、申し訳ありません!大きな声で!い、嫌ですよね?今のは聞き流して下さい!」
吉川 文代 「嫌ではありません」
引田 昇 「そ、そうですよね、嫌で・・・えっ?」
吉川 文代 「嫌ではありません!こちらも同じ気持ちでございます!」
引田 昇 「ほ、ほ、ほ、本当にうれしいです!改めて、よろしくお願いします!」
吉川 文代 「こちらこそ!」
〇大きな日本家屋
1年後
引田 昇 「文代さん!用意出来ました?」
吉川 文代 「はい!お待たせしました!行きましょう!」
引田 昇 「着物とても似合いますね!お祭り楽しみましょう!」
〇桜並木(提灯あり)
吉川 文代 「すごい!とても綺麗!」
引田 昇 「本当ですね!晴れてよかったです!」
吉川 文代 「あ!あそこ馬がいる!」
引田 昇 「まって下さい!」
吉川 文代 「お馬さん触るの初めて!いい子!いい子!」
引田 昇 「喜んでるみたいですね!」
今村 正次郎 「若いお二人さん!どうだ乗ってみんかね!」
吉川 文代 「えっ!乗れるんですか!」
引田 昇 「ハハッ!いいですね!乗りましょう!」
今村 正次郎 「じゃ、お嬢さんから先に乗ってくんなまし!」
吉川 文代 「え、こ、こうですか?」
今村 正次郎 「よしよし!」
今村 正次郎 「じゃあ旦那は後ろに乗ってお嬢さんを支えてあげて下さいな」
今村 正次郎 「若いお二人さんにはこの鈴をあげるよ」
引田 昇 「何ですか?これ?」
今村 正次郎 「馬鈴じゃ、馬が通る事を知らせる道具よ、また、近づき過ぎてくる馬を知らせる道具でもある!その時は離れんと危ないぞ!」
吉川 文代 「そんな役割がこの鈴にあるんですね!」
今村 正次郎 「よし!お二人さんその鈴を鳴らして道行く人達に仲の良い姿見せて回ろう!」
吉川 文代 「ちょっと恥ずかしいですね昇さん!」
引田 昇 「そうですか?僕はとっても嬉しいですよ!」
今村 正次郎 「ハハハッ!それでは出発致しますぞ!手綱をしっかりお持ちくださいよ!それっ!」
吉川 文代 「わっ!動いた!アハハッ!」
引田 昇 「ハハハッ!爽快ですね!」
吉川 文代 「フフッとても楽しいです!」
引田 昇 「あの文代さん・・・」
吉川 文代 「何ですか?」
引田 昇 「これからも僕とずっと一緒にいてくれますか?」
吉川 文代 「・・・はい喜んで!」
馬「バフォォォォォォ!」
文代さんのとっても可愛らしい回想ストーリーですが、イントロダクションに記された不穏な展開が……。馬鈴が物語にどう影響を及ぼすのかも含め、続きを楽しみたいです。