がらんどうの瞳

はじめアキラ

第十四話『小池正春Ⅰ』(脚本)

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〇黒背景
  彩名。どこかで聞いたことのある名前ではある。
  芽宇は電話をかけようとしているようなので、冴子は鏡の角度を変えて彼女の手元を覗きこんだ。
  表示されている名前は“瀬田彩名《せたあやな》”。そういえば、息子から彼女の名前を聴いたことがあったような。

〇おしゃれなリビングダイニング
奥田奏音「セタデンキってあるじゃん?駅前にも大きなビル建ってるし。そこの社長の娘と、今年同じクラスになったんだよね」
  食事の時間に、奏音がそんな話をしてきたのだ。
奥田颯斗「へえ、どんな子なんだ。美人なのか?」
奥田冴子「もう、颯斗さんたら」
  恋愛系の話になると思ったんだろう。颯斗がにやにやしながら息子に尋ねていた。
奥田颯斗「そういう子が将来お嫁さんになったら、お前は玉の輿だな!僕も楽できていいなー」
奥田冴子「あのね、まだ奏音は小学生なんだけど?」
奥田颯斗「わかってるって。冗談冗談」
奥田冴子「もう!」
  無論、冗談であることなど冴子にもわかっている。奏音も苦笑しながら、この子だよ、とスマホで写真を見せてくれた。
  といっても、彼女がメインになって映っているものではない。
  奏音と珠理奈、晴翔の三人がピースしている後ろに、それらしき少女が映り込んでいるというだけだった。
奥田颯斗「確かに可愛い子ではあるな」
  颯斗は興味津々で言っていた。
奥田颯斗「服もお洒落だし。・・・・・・話したことはあるのか?」
奥田奏音「まだだよ、クラス替えしたばっかりだし。それに、なんだかとっつきづらくて」
奥田奏音「プライド高いっていうか、なんか自慢が多いかんじでさ。俺とは合わないっていうか」
奥田颯斗「うーん、そうか残念・・・・・・」

〇部屋のベッド
  思い出した。
  あの写真、確か自分のスマホにも送って貰ったのではなかったか。
  瀬田彩名がどうではなく、奏音たちがとてもいい笑顔で映っているからという理由で。
奥田冴子(顔と名前がわかれば、この子の事も調べられる)
  冴子は眼を細めた。
奥田冴子(村井芽宇が、この状況で頼る相手。確かめる必要はありそうね)
  残念ながら芽宇がかけた電話は通じなかったらしい。朝早いから仕方ないだろう。
  しかし、良いヒントは得られた。成果は、充分だ。

〇モヤモヤ
  第十四話
  『小池正春Ⅰ』

〇ビルの裏通り
  夜。
  木槌丘小学校の校長、小池正春は。ため息交じりに、学校からの帰路についていた。
校長先生(面倒なんてもんじゃない。なんで、急にうちの学校から二人も死人が出るんだ)
  警察からも、不審な点があると事情聴取を受けた。太田川亜希子と、小河原海砂。
  どっちも奥田奏音が死んだ件で、いじめに関わっていたかもしれないと目される二人だ。
  無論、校長としては断固としていじめの存在など認めるわけにはいかない。
  奥田奏音が死んだのは学校の問題が原因ではないし、二人の死だって事故死だろうとつっぱねてはいるが。
校長先生(警察は、事故以外を疑っているのか?自殺?いや・・・・・・便器に頭を突っ込んで自殺なんてやりたい奴がいるのか?)
  不審な死に方であるのは確かだが、事故である可能性が高いなら疑っても仕方ないのではないか。
  それとも何か?警察は、本当に奥田奏音の祟りでも疑っているつもりなのか?

〇校長室
瀬田円花「迷惑なんですのよ。この学校に、いじめられた生徒の祟りがあるかもしれない、なんて噂が出るのは」
  今日まさに、怒鳴り込んできた女。
  それは四年二組、瀬田彩名の母親、瀬田円花だった。セタデンキの社長夫人。
  いかにもヒステリックな性格が滲み出ているその女性は、どうやらいじめに娘が関わっていたことには気づいているらしい。
  何としてでも、娘に追及の手が伸びるのは避けたいようだった。

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コメント

  • 前話では戦隊名にかかる無粋なコメント失礼いたしました🙇
    新キャラとして瀬田母子が出てきて、さらに校長先生まで!校長の発言より、いじめって本当に組織的構造+自己保身によるものだと考えさせられますね

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