第2話 女の鎧(脚本)
〇水たまり
菫(スミレ)「・・・」
シャワーの音を聞いてると思い出す・・・
〇清潔な浴室
ママ「神父様・・・」
ママ「この子にも『禊(みそぎ)』 をお授けください」
神父と呼ばれた男「よろしい それでは彼女と二人に」
ママ「はい・・・」
向日葵(ひまわり)「待ってよ、ママ!! 私やだ、こんなこと!!」
神父と呼ばれた男「さあ、おとなしく私に 身をゆだねなさい」
神父と呼ばれた男「できるだけ、 痛くしないからねぇ・・・!」
向日葵(ひまわり)「やめてっ・・・!!」
神父と呼ばれた男「あ・・・?」
向日葵(ひまわり)「っ!!」
神父と呼ばれた男「てめぇ、このメスガキ・・・!」
神父と呼ばれた男「立場わかってんのか、おい!!」
向日葵(ひまわり)「あぐっ・・!」
神父と呼ばれた男「女はな!」
神父と呼ばれた男「カネで払えねえなら おとなしく身体で払うんだよ!」
神父と呼ばれた男「オラぁ!! 足開け、ガキ!」
向日葵(ひまわり)「いや・・・!!」
神父と呼ばれた男「・・・気色悪ぃアザだな」
神父と呼ばれた男「ま、何でもいいや」
〇黒
向日葵(ひまわり)「あ・・・っ!!」
パパと一緒に入った
思い出のお風呂で・・・
初めての痛みが身体を貫くのを
必死で我慢していた
きっとパパがあの扉を開けて
私とママを助けに来てくれる
『待たせてごめんね』って
少しはにかんだあの笑顔で・・・
いつか──
いつか、きっと──
〇血しぶき
再びパパの姿を見たのは・・・
それから10年以上も先のことだった
〇ラブホテルの部屋
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「おい、ずいぶん長風呂だったな 『血』が落ちなかったか?」
菫(スミレ)「女は何かと時間がかかるのよ」
菫(スミレ)「ちょっと待って、いま着替えるから」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「・・・!」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「おい、それ・・・」
菫(スミレ)「何? 女の裸に興奮した?」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「アホ 姉貴に欲情するほど飢えちゃいねーよ」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「じゃなくて、その腰の『アザ』だよ」
菫(スミレ)「これね」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「すげーな・・・ 水商売だと苦労すんだろ」
菫(スミレ)「まあ、それなりにね」
菫(スミレ)「で? そんな話をするために 連れてきたわけじゃないでしょ?」
菫(スミレ)「そういえば、あんたが私と組む 目的を聞いてなかったけど?」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「そうだったな・・・」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「基本、あんたと同じさ」
〇屋敷の門
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「竜胆会(りんどうかい)を 弱体化させてオヤジを弱らせる」
菫(スミレ)「そんなことをして 何の利益があるの?」
菫(スミレ)「あなた、竜胆会の人間でしょ?」
〇ラブホテルの部屋
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「・・・だからだよ」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「オヤジは次期若頭候補に 俺を推す気がない」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「実の息子じゃなく別の人間に 竜胆会を託すつもりでいる」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「オヤジは・・・俺のことに 興味がねえのさ」
菫(スミレ)「なるほどね・・・」
菫(スミレ)「組織の『裏切者』でも 適当にでっち上げて・・・」
菫(スミレ)「『パパ』を疑心暗鬼にさせて 孤立させる・・・」
菫(スミレ)「そこで『頼れる息子』が 登場ってわけね」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「ま、そんなとこだな」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「そこで弱ったオヤジに迫れれば あんたの目的も達成だろ?」
菫(スミレ)「そうね・・・」
菫(スミレ)「どうやら、私たちの利害は一致したようね」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「ああ」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「俺たち、なかなかいい 姉弟(きょうだい)になれそうじゃないか?」
菫(スミレ)「それはあなたの働き次第ね」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「キッツい女!」
菫(スミレ)「・・・」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「しかし、その前にひとつ問題がある」
〇ボロい倉庫の中
『さっきの件』だ・・・
あんたの『カレシ』には痕跡を
残さないようにあの場所に来させた
もし尾行でもされてたら
人質──あんたのことを殺す、と言ってな
〇ラブホテルの部屋
菫(スミレ)「・・・」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「もちろん俺たちの痕跡も残してない」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「簡単にはアシはつかないはずだ」
菫(スミレ)「そう・・・」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「しかし、あいつがウチを 嗅ぎまわってたくらいだ」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「そのうち警察も俺らの 関与を疑いだすかもな」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「となると、警察の捜査状況を 把握する必要がある・・・」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「『計画』を進めるのはその後だ」
菫(スミレ)「・・・」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「俺はそっちの処理を進める」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「あんたはしばらく普段通りに過ごしてろ」
菫(スミレ)「わかった・・・」
〇黒
〇歌舞伎町
数週間後──
〇狭い裏通り
ろれつの回らない女の声「おい、てめーら何のつもりら!!?」
男の声「くそ!! 暴れんな、このアマ!」
菫(スミレ)(・・・裏路地から?)
〇入り組んだ路地裏
男の声「おあああ!!」
怪しい男A「ぐほっ・・・!!」
若い女「せいっ!!」
怪しい男A「気をつけろ! この女、強いぞ!」
怪しい男B「ベロベロの酔っ払いのくせに! 聞いてた話とちげーぞ!?」
怪しい男A「おい、羽交い締めにして脱がすぞ!」
怪しい男A「とにかくある程度『かわいがって』 やりゃあ金が出るって話だ!」
若い女「はな・・・せっ!!」
怪しい男A「へへっ・・・」
怪しい男A「俺を殴りやがったぶんは しっかり身体で払ってもらうぜ!」
菫(スミレ)「あなたたち・・・」
菫(スミレ)「何してるの?」
「っ・・・!!!」
怪しい男B「おい、見られたぞ・・・!」
怪しい男A「しょうがねえ、この女も・・・」
怪しい男A「へへっ、おねーさん悪く思うなよ・・・」
〇手
怪しい男A「・・・っ!!?」
〇入り組んだ路地裏
怪しい男A「何なんだよ・・・この女?」
怪しい男B「おい、どうした!?」
若い女「・・・?」
怪しい男B「おい・・・!」
怪しい男B「この女、竜胆会のシマの 有名なキャバ嬢だ!」
怪しい男B「傷つけたらカタギでも指の2、3本 じゃ済まねえらしいぞ・・・!」
怪しい男A「くそっ!! 行くぞ!!」
若い女「おい、逃げんのら!? てめーら付いてんのか!!?」
若い女「・・・?」
若い女(あのおねーさん見て逃げてった?)
若い女(・・・キレイな人)
若い女「おねーさん大丈夫?」
菫(スミレ)「あなたの方が大丈夫じゃなさそうね」
若い女「わらし・・・は・・・」
若い女「オエエエ・・・!!」
菫(スミレ)「飲みすぎね」
〇黒
・・・
うっぐ・・・
アタマ痛い
あれ、あたし昨日・・・?
確か一人で飲んでて・・・
〇部屋のベッド
???「あら? 目が覚めた?」
え!?
ここ・・・あたしの部屋じゃない
だ、だれ!?
キレイな人・・・
菫(スミレ)「コーヒーは飲める? 二日酔いに効くわよ」
えっと・・・
菫(スミレ)「そうか、覚えてないわよね」
菫(スミレ)「昨日あなたが襲われてるのを 通りすがりに見つけてね」
菫(スミレ)「そのまま酔って倒れちゃったから うちまで連れてきたの」
〇入り組んだ路地裏
〇部屋のベッド
なんとなく・・・
思い出してきた
菫(スミレ)「あ、ごめんなさいね」
菫(スミレ)「あなたの服、『もどしたもの』で 汚れてたから勝手に脱がせちゃった」
若い女「え・・・?」
若い女「ひゃあああ!!? 裸!!?」
菫(スミレ)「着替えも用意してあるから 私ので悪いけど」
若い女「ご、ごめんなさい!! 何とお礼を言っていいか」
菫(スミレ)「別にいいのよ」
若い女「やっば!! こんな時間!!」
若い女「『会議』に遅れちゃう!!」
菫(スミレ)「ちょっと待って!」
若い女「え!?」
菫(スミレ)「あなた、まだお化粧してないじゃない」
若い女「え・・・?」
若い女「いいんすよ、そんなのしたことないし」
若い女「それに男ばっかりの職場なんで」
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)
何か心あたたまる出会いが……と思ったら、全然そんなことはなかったですね! ここであの人の妹さん登場とは。これ、復讐の連鎖が起きててドロドロの展開ですね、好き!
くぁっっこいいぃいい!!!!!
スミレ姐さん、パネェっす!!!!!
これこそ、絶望の象徴ストーリー!!!!!
大好きです!!!!!
これは情に負けてしまう展開なのか?と思いきや、そこはキャラ紹介にある通り「冷静で計算高い」主人公。ある意味清々しかったです。笑
主人公VS竜胆会に加え、国家権力も合わさってくるとは、より重厚な闘いになる予感…! 次回も楽しみです^^