復讐のヴァージンロード

松田エルナ

第3話 怪物(脚本)

復讐のヴァージンロード

松田エルナ

今すぐ読む

復讐のヴァージンロード
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇黒
  被害者(ガイシャ)は
  警察官、桐島 蓮──
  言わずと知れた
  組対4課のエース・・・

〇山道
  遺体発見は2か月前
  第一発見者は早朝、山中の
  遊歩道を散歩していた男性
  連れていた犬が突然興奮して
  逃げ出したので後を追った・・・
  やがて戻ってきた犬が
  咥えていたのは・・・

〇山間の集落

〇大会議室
捜査一課長「腐敗しかけた『前腕』 だった、と・・・」
雪雫(セツナ)「う・・・くっ!!」
竹田「おい・・・大丈夫か? 『ユキ公』」
雪雫(セツナ)「だっ、大丈夫・・・! もう慣れました、竹田先輩」
竹田「無理すんな」
竹田「本来、ガイシャの身内が 捜査に入るなんてありえねぇ」
雪雫(セツナ)「いえ、あたしは・・・」
雪雫(セツナ)「アニキを殺したヤツを この手で必ず・・・」
竹田「・・・」

〇警察署の廊下
捜査一課長「竹田・・・」
捜査一課長「今回の件、桐島の妹を 捜査に入れることにした」
竹田「な・・・!?」
捜査一課長「本人たっての希望だ」
竹田「ありえんじゃろ!!? そんなん!?」
竹田「ユキ公本人が精神的に つれぇのもあるが・・・」
竹田「何より、身内を殺した犯人(ホシ) を追うなんて・・・」
竹田「捜査員として冷静な判断が できんじゃろうが・・・!」
捜査一課長「だからだよ」
竹田「!?」
捜査一課長「あいつを捜査から外してみろ」
捜査一課長「必ず自分一人だけでもホシの 尻尾を捕まえようとするだろう」
捜査一課長「以前のように・・・」
捜査一課長「『どんな手を使ってでも』な」
竹田「っ・・・!!」
捜査一課長「竹田・・・ お前に任せたぞ」
捜査一課長「『狂犬娘』の手綱 しっかり握っておけよ」

〇大会議室
竹田「・・・」

〇おしゃれな通り
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「よお・・・スミレ 迎えに来た」
菫(スミレ)「ありがとう、シオン」
菫(スミレ)「ねえ・・・大丈夫?」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「あ、ああ・・・別に」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「お袋のやつ、もともと 身体弱かったからよ・・・」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「まあ、長くはねえ だろうなと思ってた」
菫(スミレ)「残念だったわ・・・ お母様のこと」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「悪ぃな・・・」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「俺がこのお袋の店を紹介した 直後にこんなことになっちまってよ」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「店の経営もいきなり スミレに任せることになって・・・」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「大変だったら言ってくれ」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「カネの都合くらいしかできねぇが・・・」
菫(スミレ)「大丈夫よ」
菫(スミレ)「お母様にもいろいろ 親切に教わったから」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「そうか・・・」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「・・・」
菫(スミレ)「どうしたの?」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「いや・・・ なんでもない」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「じゃあ、行くか」
菫(スミレ)「ええ・・・」

〇大会議室
捜査一課長「それでは、第2班報告!」
「はいっ!!」
キャリア刑事B「被害者は暴力団など組織犯罪を 担当する捜査4課所属・・・」
キャリア刑事B「そこで、彼が主に担当していた 暴力団関係者の行動を洗っています」
捜査一課長「『ヤツら』の組織的犯行の線か──」
キャリア刑事B「ええ、指定暴力団『竜胆会』です」
「・・・」

〇屋敷の門
  かなり大規模な組織かつ
  事実上配下に置く半グレも多数
  さらに竜胆会の恩恵を受ける
  クラブ、裏カジノ、麻薬ルート・・・
  被害者の『排除』が
  都合の良い者となると・・・

〇大会議室
キャリア刑事B「ざっと1000人はくだらないかと」
捜査一課長「有能な刑事ほど怨みを買うな・・・」
キャリア刑事B「現在、有力と思われる所から アリバイと動機を追っています」
捜査一課長「現場から物証は ほぼ見つかっていない・・・」
捜査一課長「足で稼ぐしかないな」
キャリア刑事B「皆さんにお配りしてるのが その参考人リストです」
雪雫(セツナ)「こんなに・・・」
雪雫(セツナ)「あ・・・」
雪雫(セツナ)「・・・」
雪雫(セツナ)「え・・・?」

〇広い和室
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「・・・」
菫(スミレ)「立派なものね・・・」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「ああ? まあな」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「それにしても・・・」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「お前、緊張とかしないのか?」
菫(スミレ)「いいえ とってもドキドキしてるわ」
菫(スミレ)「楽しみでね」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「はっ・・・! ふてぇ女だな」
男の声「・・・お待たせいたしました」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「・・・!!」
菫(スミレ)「カスミさんのお店でお世話に なっておりました、スミレです」
菫(スミレ)「改めましてこの度は・・・ 心からお悔やみ申し上げます」
男「大変痛み入ります・・・」
男「彼女も生前、短い間ですが あなたには大変世話になったそうで」
男「どうか、お顔を上げてください」
菫(スミレ)「・・・」
男「先日の葬儀では挨拶もままならず 申し訳ありませんでした」
男「改めまして、私が・・・」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「神宮寺 龍志です」
菫(スミレ)「スミレです 以後、お見知りおきを」
菫(スミレ)「本日は、カスミさんに代わって お店を任せていただくにあたり・・・」
菫(スミレ)「神宮寺様にご挨拶に参りました」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「・・・」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)(ついに『標的』を目の前に してるってのに・・・)
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)(この女は顔色ひとつ 変えねぇのな・・・)
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「ご丁寧にありがとうございます」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「いかにも、オーナーは私 ということになりますが・・・」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「店のことはカスミに 任せっきりでしてね」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「彼女の信頼していた貴女 であれば店も安心です」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「この愚息も微力ではございますが 使ってやってください」
菫(スミレ)「大変助かります」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「・・・」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「紫苑からすでにお聞きかも しれませんが・・・」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「私とカスミは正式な夫婦関係 というわけではありませんでした」
菫(スミレ)「・・・」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「彼女のことはもちろん愛して おりましたが・・・」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「紫苑が生まれてからも 結婚には踏み切れませんでした」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「『こんな商売』だから、と もっともらしい言い訳をして・・・」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「煮え切らない男です」
菫(スミレ)「・・・」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「実は・・・カスミと出会う前に 私は一度結婚しておりましてね」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「・・・」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「その女性とは『死別』でしたが・・・」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「その女性も未だ愛しているがゆえに カスミにはつらい思いをさせてしまった」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「紫苑にも・・・苦労かけたな」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「オヤジ・・・」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「ほとんど初対面の方にお話しする ことではなかったですね」
菫(スミレ)「いいえ・・・」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「ただ、カスミがいわゆる『愛人』 のような半端な存在ではなかったと・・・」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「彼女の名誉のためにも 釈明させていただきたかったのです」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「貴女とは長い付き合いになりそうですから」
菫(スミレ)「そうですか・・・」
菫(スミレ)「そこまでお話くださり・・・」
菫(スミレ)「ありがとうございました」
側近の声「会長・・・」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「すみません」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「次の会合に呼ばれているもので」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「・・・そうだ」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「せっかくですので これをお持ちに」
菫(スミレ)「これは・・・」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「百合(ユリ)の花です」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「私が育てたものです よろしければお店に」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「亡くなった前妻が好きでね・・・」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「彼女の名前も『百合』といいました」
菫(スミレ)「ありがたく、頂戴します」
菫(スミレ)「・・・」
神宮寺 龍志(じんぐうじ りゅうじ)「それでは、私はこれで失礼します」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

コメント

  • 前話でスミレとシオンはうまくやるのかな、なんて思っていたらシオンが引くって……スミレ、恐るべし女ですね。一体何人殺って……彼女の心はどこへいってしまったのでしょうか? 幼少期のトラウマからの、父親に対する完全に歪んだ感情。どちらが真実かはまだわかりませんが、そこに「愛」があって欲しいものです。
    そしてセツナも、真実にたどり着いても壊れないで欲しいです……。彼女が希望の光ーー

  • 久しぶりだし、前回までの話覚えてるかな? と思ったら、こんなん忘れる訳ねぇですわ!
    終始鳥肌立ちっぱなし! 読んでるだけで息苦しくなる程の緊張感。「・・・」のセリフですら何かを感じずにはいられない。
    空気を支配するエルナ・ワールド……

  • 3話タイトルの『怪物』。てっきり会長のことだと思って読み進めていたら、まさか別だったとは・・・! 毎回の予想を裏切る展開に楽しませてもらっています^^

コメントをもっと見る(14件)

ページTOPへ