19話 闇に飲まれて……(脚本)
〇海岸の岩場
宿利ユウ「うわ・・・!」
ダンカン「MPが切れたぞ!」
白崎蓮「よくやった、ダンカン。あとは俺にやらせろ」
市沢恭也「待て、レン! 動くと傷が開くぞ!」
白崎蓮「離せよ!」
ダンカン「ご安心ください、勇者様。MPの切れた敵なら、我々の力で十分です」
どうする? スキルが使えなければ、僕自身のステータスでは太刀打ちできない。
市沢恭也「よぉ。やってくれたじゃねぇか、宿利」
市沢恭也「レンや俺たちに逆らって、どうなるかわかってんだろうな?」
宿利ユウ「ぐっ」
市沢恭也「もうスキルは使えねぇよなぁ?」
宿利ユウ「クソッ」
〇理科室
これじゃ、あの時と同じじゃないか・・・
〇海岸の岩場
市沢恭也「大人しくこっちに来いよ」
市沢恭也「殺しはしない。そうだろ、賢者?」
ダンカン「おっしゃる通りです。宿利ユウ、貴様には聞きたいことが山ほどある」
市沢恭也「レンにも俺から言ってやるよ。 殺すの『だけは』やめとけってな」
また白崎のおもちゃになれって?
元の世界にいたときみたいに?
宿利ユウ「アハハハッ」
宿利ユウ「ないな。それだけは、死んでも嫌だ」
僕は死にたくなかったけれど──
死んでやる。
お前たちを倒すためなら、何度でも。
市沢恭也「なんだ・・・!?」
ダンカン「魔石を飲み込んだ!? まさか、宿利ユウは魔物だというのか!?」
市沢恭也「お前、何しやがった──」
〇モヤモヤ
宿利ユウ「ここは・・・?」
宿利ユウ「うわっ!」
???「ぎゃあああ!!」
あれ? MPが切れたはずなのに、スキルが使える。
よかった。助かったんだ。
もう痛くない。怖くない。
市沢恭也「うおおおお!?」
白崎蓮「何やってんだ! スキルを使っても跳ね返されるだけだろうが!」
市沢恭也「違う、俺じゃない! スキルが勝手に吸われるんだ!」
まだ僕を攻撃するの? どうして?
僕はただ、普通の学校生活を送りたかっただけなのに。
そんなささやかな願いまで踏みにじるというなら──
宿利ユウ「敵は皆、殺してしまえばいいんだ」
〇断崖絶壁
リーナ(この気配は・・・ユウの魔力!?)
リーナ(何があったの・・・?)
勝てない──
リーナ(どうしようもないじゃない。だって、フローレスは戦闘に向く種族じゃないもの)
『新緑のスキルレベルが上がりました』
リーナ(上がったところで、所詮は植物を育てるだけのスキル)
リーナ「ここまで・・・なの・・・?」
〇赤い花のある草原
ミーア
私もあなたのところに行っていい?
また一緒に──
ミーア「来ちゃダメ!」
〇黒背景
リーナ「スキル!」
〇断崖絶壁
『スキルレベルの上昇効果は――』
リーナ(いつの間に雨が止んだの・・・?)
『水吸収効率の上昇です』
リーナ(私のスキルが、雨をやませた!?)
リーナ(だとしたら、条件次第でまだやれる!)
リーナ「海竜! こっちへ来て!」
〇谷
リーナ(岩壁に挟まれた、狭い谷なら──)
〇谷
リーナ「水を枯らすことだってできる!」
リーナ「水の生き物は乾燥に弱い」
リーナ「海竜。その堅いウロコの防御力も、水に濡れていてこそでしょう!」
リーナ「海から出た海竜が、空の種族に付いてこられる!?」
リーナ「ハァー、ハァー」
リーナ「私が、魔石の魔獣を、倒した・・・!」
リーナ「ユウ──」
〇モヤモヤ
殺せ。殺せ。殺せ。
目に映るものはすべて敵だ!
???「ユウ!」
こいつも敵だ! 殺せ!
宿利ユウ「あ・・・」
なぜ、攻撃してこない?
???「ユウ、目を覚まして!」
嫌だ。
???「どうして!?」
みんなが僕を攻撃してくるんだ。
だから、殺さなきゃ。
???「私はユウの味方よ!」
違う。僕に味方なんていない。
殺すんだ。僕自身を守るために・・・
???「だからって、自分を失ってしまったら意味がないでしょう!」
お前にはわからない。
???「・・・ユウ。私も今、そっちに行くね」
〇黒背景
リーナ「大丈夫」
リーナ「私にはもう、失うものなんてないんだから──」
〇モヤモヤ
リーナ「来たよ。さぁ、一緒に帰ろう」
宿利ユウ「帰る? いったいどこに・・・」
リーナ「魔王城に!」
宿利ユウ「魔王城・・・」
リーナ「うん。きっと、魔王様やヴィオ様が心配してる」
リーナ「ユウ、魔獣になんかならないで」
宿利ユウ「僕は、僕は──」
宿利ユウ「うわああああ!」
〇モヤモヤ
リーナ「スキルを無理矢理引き出しても、攻撃なんかしない」
リーナ「それが私の、生まれ持った個性(スキル)だもの」
リーナ「ユウだって、そうなんでしょ?」
リーナ「ユウのスキルだって、自分から誰かを傷つけることはない」
リーナ「お願い、戻ってきて──」
宿利ユウ「僕は・・・」
帰りたい
魔王城――みんなのところに
〇海岸の岩場
リーナ「ユウ」
宿利ユウ「リー、ナ・・・?」
リーナ「ユウのバカ。おかえりっ──」
宿利ユウ「白崎たちは!?」
リーナ「逃げたみたい。 でも、まだ近くで私たちを見張ってる」
宿利ユウ「じゃあ、海竜は!?」
リーナ「私が食べちゃった」
宿利ユウ「えっ!?」
リーナ「さぁ、帰ろっか」
宿利ユウ「――うん」
〇朝日
リーナ「ユウ」
宿利ユウ「ん?」
リーナ「――死なないで」
宿利ユウ「急にどうしたの?」
リーナ「もう失うものはないと思ってた」
リーナ「でも、ユウが消えてしまいそうになったとき、私、怖かったの」
リーナ「お願い、ひとりで行かないで」
宿利ユウ「・・・」
宿利ユウ「わかった。僕は必ず生き残るよ」
宿利ユウ「だからリーナも、もう自暴自棄にならないで」
リーナ「うん、約束する」
リーナ「不思議ね。失っても、失っても、また大切なものができていくなんて──」
〇城壁
トゥルカナ「うるさいよ、アマデウス」
ヴィオ「少し落ち着かれてはどうですか、魔王様」
アマデウス「しかし、ユウとリーナが心配だ。無事に戻ってくるだろうか・・・」
ヴィオ「魔王様がひとりで勝手に魔石狩りに行かれたのは、7つのときでしたな」
ヴィオ「少しは心配する側の気持ちがわかりましたか?」
アマデウス「う・・・。あのときは悪かった」
トゥルカナ「あ、見て!」
〇空
リーナ「あそこにいるのって」
宿利ユウ「アマデウスさんとヴィオとトゥルカナ!」
〇城壁
アマデウス「お前たち、よく戻ってきてくれた!」
トゥルカナ「やるじゃん」
ヴィオ「・・・戻るだろうと思っておったぞ」
アマデウス「魔石狩りは成功したのか?」
リーナ「魔石の魔獣は私がやりました。 人間軍の相手は、ユウが」
宿利ユウ「僕が勇者を倒せればよかったんですけど・・・」
ヴィオ「生きて戻っただけで十分だ」
ヴィオ「それより、思い上がって魔石を飲むでないぞ。貴様のステータスはまだ──」
ヴィオ「まさか・・・」
ああ、帰って来たんだ。
〇闇の要塞
魔王城
僕たちの家に──
〇黒
次回予告
決死のユウが魔石で覚醒!リーナだからこそ、我を失ったユウの心を取り戻せたところが良かったですね。2人の絆も深まって…ピンチが続いた分、凄く楽しい回でした😊
良かった、宿利君…… 強くなった😭
めでたし、めでた…… 四天王設立!? 😍🤩🥳😆
ついにユウとリーナが魔石を飲んで覚醒…!勇者軍を退けるほどの暴れっぷり!!
魔王軍四天王とは…アツそうな展開楽しみです😆