オレたちのネトゲ結婚事情

はやまさくら

第1話「本命のあの子にフラれたわけですが」(脚本)

オレたちのネトゲ結婚事情

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〇城の会議室
†悠†「あっ・・・青月さん! オレと結婚してください!!!」
  その日、オレはギルドハウスのホールで、憧れの彼女にプロポーズを敢行した。
青月「え? 悠くん、何を言ってるの? ・・・というか、何で私!?」
  突然の申し出に、青月さんは驚いていた。
  それもそのはず、オレと青月さんは
  恋人同士でも何でもない。
  単に同じギルドのメンバーというだけだ。
  でも、そんなの関係ないっ!!
  オレにとって、青月さんは憧れの人だ。
  「結婚システム」が実装された暁には、
  思い切って彼女にプロポーズしようと
  決めていたんだ。
  彼女はオレと同じ【魔導士】で、
  プレイヤーランキング表の常連だ。
  あまりの廃人っぷりに、
  最初は根拠もなく男性プレイヤーだと
  思い込んでいた。
  だから、オフ会で等身大の彼女と出会い、ものすごく驚いたものだ。

〇居酒屋の座敷席
  実際の青月さんは飛びっきりの
  美人さんだったんだ。
  スタイルもいいし、
  顔もモデルさんみたいに整っている。
  元々同じ【魔導士】として
  彼女に憧れていたオレだったけど、
  その気持ちは一瞬にして恋心へと
  変化してしまった。
  ・・・直結厨とか言うなよ!?
  少なくともオレは、
  青月さんやギルドの皆に
  迷惑をかけたことなんてない。
  そもそも奥手だから、
  この気持ちを伝えたことすら
  なかったんだ・・・。

〇西洋の城
  オレたちがプレイしているゲームは、
  「マジェスティックナイツ・クロニクル」
  通称「MKC」
  大手ゲーム会社である「オルテア」が
  開発した純国産MMORPGだ。
  プレイヤーたちは王国の騎士となり、
  あらゆる方面から持ち込まれる
  「騎士団への陳情」という名の
  ミッションに挑んでいく。
  アクション性の高さと派手な戦闘演出が
  このシリーズの売りで、
  ほど良い難易度でワクワクする戦闘を
  楽しむことが出来る。
  そんな「MKC」に「結婚システム」が
  実装されたのはつい3日前。
  四半期に一度行われる
  大型アップデートの目玉の一つとして
  実装されたんだ。
  アップデート直後は皆、
  新実装のダンジョン攻略に忙しくて、
  プロポーズできるような雰囲気では
  なかった。
  ようやく落ち着いてきたみたいだから、
  誰かに先を越される前に
  思い切って青月さんに
  プロポーズを敢行したわけだ。

〇居酒屋の座敷席
  何せ青月さんにはファンが多い。
  彼女は廃プレイヤーとして
  有名な存在なんだ。
  もうね、オレらみたいなゲーマー男から
  見ると、まさに理想の女性っ!
  ギルドの男性陣、
  特にオフ会でリアルの青月さんに
  会ったことのある連中は、
  皆、彼女を狙っている。
  中には半ば
  ストーカー化している輩もいて、
  青月さんは迷惑しているらしい。

〇城の会議室
  「結婚」にはメリットが多い。
  特典アイテムを多数もらえるし、
  ゲーム的にも有利になる。
  そのため、恋愛云々は関係なく、
  友人同士でとりあえず「結婚」する人は
  多い。
  かくいうオレも
  面と向かって「好きだ」とは言い出せず、
  「ゲーム的に有利だから結婚しよう」と
  持ち掛けてしまった。
  その結果が、「何で私!?」という
  返答だ。
  ・・・素直に告白した方が
  良かったのかなぁ。
†悠†「青月さんは男キャラを 使っているじゃないですか」
†悠†「オレも女キャラを使っているし、 似た者同士で都合がいいと思ったんです」
†悠†「それにオレたちは同じ攻撃職の 【魔導士】だから、」
†悠†「スキル回しの相談をしたり、 立ち回りを研究する機会が多いでしょ?」
  オレはあらかじめ考えておいた、
  それっぽい理由をつらつらと述べた。
  ・・・でも、彼女は
  首を縦には振らなかった。
青月「確かにお互い中身とキャラの性別が 逆だもんね」
青月「でも、悠くんには私より相応しい相手が いるはずだよ?」
青月「私としても、彼とくっついてくれた方が 美味しいというか・・・」
  青月さんはギルドホールの隅で、
  黙ったままオレたちのプロポーズ劇を
  見守っている「彼」に視線を送っていた。

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次のエピソード:第2話「式場内では静粛にお願いします」

コメント

  • ゲームの設定の作り込みがリアルですね!
    悠くんの感情がぐちゃぐちゃになって苦悩する姿が可愛らしいって思ってしまいました。ゲーム上のキャラの性格・特徴と中の人のものの不一致がどんどんと面白いことを巻き起こしてくれそうですね!

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