パンイチ冒険者ケンイチ

紅月桜

第十六話 すべてを失っても、まだパンツが残ってる(脚本)

パンイチ冒険者ケンイチ

紅月桜

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〇暗い洞窟
ハバネロ粘菌デュクシ「デュクシ!」
ハバネロ粘菌デュクシ「デュクシ!」
ハバネロ粘菌デュクシ「デュクシ!」
ケンイチ「パンイチ・パンチ!」
ケンイチ「熱っ!?」
オータ「拳、火傷していル。薬草、使エ」
ケンイチ「ありがとう」
オータ「グンマァ!」
オータ「再生速度、トロールより早イ」
ケンイチ「ここを通り抜けるには倒さなきゃ」
  パンパンパン!(パンツを叩く音)
ケンイチ「教えて!パンツくん!」
ケンイチ「どうすればアレを倒せる!?」
パンツくん「ふむ・・・香辛系のブロブじゃな。 対処法はバルログと似ておる」
パンツくん「有効な属性魔法か、あるいは流体ごと 核まで裂くほどの斬撃か」
ケンイチ「今の俺達じゃダメってこと?」
パンツくん「スノーと合流して魔力回復を待つしか あるまい」
オータ「ケンイチ、先に最下層へ行ケ」
ケンイチ「え!?」
オータ「倒せずとも血路を開くコト、できル」
ケンイチ「でもこの数をオータ一人じゃ・・・」
オータ「スノーとの約束、果たセ」
オータ「ここは俺に任せて、先に行ケ」
ケンイチ「――わかった。ここは頼む!」

〇炎
ニュクス「僕はレベル七のとき初めて炎を斬れた。 オータのレベルを倍にしても足りない」

〇暗い洞窟
オータ(足りない分は・・・・・・命を燃やす)
オータ「グンマァアアアア!!」

〇黒
  第十六話 すべてを失っても、まだパンツが残ってる
ヒカリン「ワイは弱いもんの味方や」
ヴォロディームィル「弱いもんの味方ぁ? それこそ強者の愉悦趣味だろうが」
ヴォロディームィル「この世はパワーゲームだ」
ヴォロディームィル「暴力が禁じられるのは警察だの軍隊だの 暴力装置で囲った箱庭の中だけ」
ヴォロディームィル「警察より強けりゃ逮捕されねぇ。 核兵器をチラつかせりゃ アメリカだって道をゆずる」
ヒカリン「力でてっぺん獲ったところで 次から次へ強い奴が現れるやろ? いつまで争うんや?」
ヴォロディームィル「決まってんだろが」
ヴォロディームィル「この俺様より強ぇ奴にぶっ殺される その瞬間までだ!」
ヒカリン「そらご立派な信念やなぁ」
ヒカリン「80億人の大半は信念の欠けた負け組。 世界はそういうふうにできとる」
ヒカリン「役割分担?得意分野で活躍? 多様性の尊重?誰もが輝ける社会? そんなんメルヘンの世界や」
ヒカリン「できる奴は何でもできる、 できん奴は何にもできん、 それが現実や」
ニュクス「・・・・・・」

〇野球のグラウンド
男子C「あーあ、天才とは住む世界が違うわ」
男子B「すごいなぁ、才能あるって」
十七夜月シン「待ってくれ! みんなだって練習すればもっと・・・」
男子A「おまえさぁ 自分がどれだけ化け物かわかってねぇの?」
男子C「ついてけねぇよ」

〇黒
ヒカリン「勝者を讃えろ?がんばってる人を応援? 負け組にそんなん求めるのは酷やろ?」
ヒカリン「弱者は百メートル走で十秒切れん。 けど十秒切ろうとする強者を 転ばすことはできる」
ヒカリン「あと一歩で夢が叶う強者が無残にコケる。 そのザマが負け組の心を慰めてくれる」
ヒカリン「これがワイの弱者救済や」
ヴォロディームィル「くだらねぇ。 成功してる有名人の失言に大喜びで 群がるマスゴミ信者かよ」
ヒカリン「そうやで? くだらない大衆こそ愛すべき弱者や」
ヒカリン「ワイはヒカリン。 弱者の希望の光になるんや」
ヴォロディームィル「そんなカスに俺様の首が獲れっかよ!」
ヒカリン「ワイが勝つんやない。 君らが負けるんや」
ヒカリン「ワイごときに意識を割いたせいで 隙が生まれとるで?」
「!?」

〇骸骨
ニュクス「この桁外れの魔力量・・・! 邪神以外にあり得ない・・・!」
ニュクス(傷が深い・・・魔力もえぐり取られた。 一撃でこのザマとは・・・)
ニュクス(文献に残る姿とまるで違う・・・ 四百年のあいだに変異したか?)
ヴォロディームィル「クソが・・・! ヒカリンはどこ行きやがった」
ニュクス「透明化して戦域を離脱したようだ」
ニュクス(まずは【治癒】か? いや、ありったけの魔力を一撃にこめる!)
ニュクス「聖剣――最大解放――限界突破――!」
ニュクス「ニュクス・カリバー!!」

〇骸骨
ヴォロディームィル「やったか!?」
ヴォロディームィル「おいおい・・・ 百分の一程度しか体力減ってねーぞ」
ニュクス「四百年前の記録よりはるかに強い・・・!」
ヴォロディームィル「話が違うじゃねぇか!!!」
ヴォロディームィル(出し惜しみはナシだ!)
ヴォロディームィル「【連鎖召喚】――ヒポグリフ!フンババ! バルログ!グローツラング!グール! ルサールカ!カトプレパス!スコル!」
邪神「――■■■■■■■■■■■■!!」
ヴォロディームィル「一瞬で食い尽くした・・・!?」
ヴォロディームィル(このままじゃ負けちまう・・・)
ヴォロディームィル(強さを・・・もっと強さを!!)

〇ラブホテルの部屋
女「ごめんなさい」
女「ぜんぶ私が悪いの」
女「私が弱いせいだから」

〇骸骨
ヴォロディームィル「あああああああっ!!」
ニュクス「な、何を・・・!?」
ヴォロディームィル「このままじゃ勝てねぇ! テメェを殺してレベルアップしてやる!!」
ニュクス(魔力はもうない・・・ 残りの生命力を聖剣に注ぎ込む!)
ニュクス「ニュクス・カリバー!!」
ヴォロディームィル「ちく・・・しょう・・・」
ニュクス「はぁっ、はぁっ・・・!」
ニュクス「これが僕の最強パーティー・・・?」
ニュクス「こんなものを・・・僕は望んだのか?」
ニュクス「何が「真の仲間」だ・・・ダジャレか!」
ニュクス(こんなことのために・・・)
ニュクス(僕はケンイチ君たちを・・・!!)

〇学校の昇降口
朝日ケンイチ「すきっ・・・!」

〇山中の川
(オータのテンポ気持ちよすぎだろ!!)

〇露天風呂
(気持ちよすぎだろ!!)

〇骸骨
ニュクス「トップの称号なんてどうでもよかったんだ ・・・三億円も・・・全国制覇も」
ニュクス「僕がただ欲しかったのは・・・ 強さでも・・・勝利でもなかった・・・」
ニュクス「ケンイチ君みたいな友達が ――ずっと欲しかったんだ」
邪神「■■■■■■■■――!!」
ニュクス「・・・っ!!」
邪神「・・・死ネ」
ニュクス「・・・・・・」
ニュクス「ああ・・・殺せ」
ニュクス「僕にはもう何もない」
ニュクス「魔力も・・・体力も・・・仲間も」
ニュクス「・・・すべて失った」
邪神「アァアアアアアア――!!」
ケンイチ「パンイチ・ヒップアタック!!」
ニュクス「ケンイチ君・・・!?」
ケンイチ「何もないなんてことあるか!!」
ケンイチ「すべてを失っても まだパンツが残ってる!」

次のエピソード:第十七話 パンツ一枚、あればいい

コメント

  • ヒカリンの100m走の例え話が秀逸ですね。凡人代表、劣等感の解消、妙な説得力がある……

    そしてニュクス、ロクな思い出がねぇ!
    だからこそ尊い!
    一緒にバカやれる仲間こそ大事なんだ!

  • ギリギリの回想のチョイスがたいしたものじゃなくて笑えました。ここにぶっ込んでくるとは。もっと思い出すことあったんじゃないのか(笑)

  • アツゥイ!アツゥイ!!アツすぎぃぃ!!!もう大好物です、こういう展開……好き…🤤
    大切なものは、いつだって失ってからその価値に気付くものだ。気付く事が出来たなら、お前は何を為すべきだ?

    シン、お前の本心…パンイチはちゃんと受け止めたぞ……?次はお前がパンイチを受け止める番だよコノヤローーーーッ!!!

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