第一話 外犬とうち犬(脚本)
〇古い本
ずっと犬だった
母「捨ててきな 犬2匹も飼う金、うちにねぇよ!」
母「お前が出てくか?」
家では残飯しかもらえなかったし
同級生A「なんか匂うんだけど」
同級生B「ちゃんとお風呂、入ってる?」
ヒトの輪には入れなかった
パートのおばちゃん「あんたみたいなのがいると迷惑なのよ!」
人に逆らわず、従順に生きてきた
そしたら
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「放って置けないんだよ、お前」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「うちにおいで」
優しいご主人様に出会えた
だから──
〇綺麗な一人部屋
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「いいんです、犬で」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「拾ってもらったご恩を返せるなら──」
〇黒
〇葬儀場
3年間 介護してきた義父が 亡くなった
〇おしゃれなリビングダイニング
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「・・・」
「唯鈴(いすず)?」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「なぁ、唯鈴!」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「あ、はい!」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「ココアは?」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「すみません、今!」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「らしくないな、どうした?」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「ごめんなさい」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「なんか、慣れなくて──」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「嫁いでからずっと 親父の世話に追われてたもんな」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「気分転換に習い事でも始めたら?」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「ダメですよ!」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「愛瀬(まなせ)さんが働いてるのに 私だけ遊ぶなんて──」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「パートとか始めようかな」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「俺の稼ぎで十分だろ?この家もあるし」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「やっと四十九日も明けたんだ ゆっくり休みな?」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「そう、ですね」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「子供ができたら また忙しくなりますもんね!」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「へっ!?」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「あつッ!」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「わ、悪い!」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「いきなり子供とか言うから」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「え? あっ!」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「そ、そ──ですよね! 気が早いですよね!アハハ・・・」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)(お義父さん送ったばかりなのに不謹慎だわ。恥ずかしい)
床から立ち上る甘い香りに
クラクラする
甘い香りは落ち着かない
母が男と会いに行くときの
香水の匂いを思い出すから──
仁藤 唯鈴(にとう いすず)(ココアなんて、いつから飲んでたっけ?)
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「もう出るぞ?」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「あ、はーい!」
〇シックな玄関
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「いってらっしゃい」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「おう」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「・・・」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「今日は定時で帰るから」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「はいっ!!」
〇おしゃれなリビングダイニング
仁藤 唯鈴(にとう いすず)(定時帰り!定時帰り!)
仁藤 唯鈴(にとう いすず)(何年ぶりだろ?何年ぶり?)
仁藤 唯鈴(にとう いすず)(嬉しい嬉しい嬉しい!)
仁藤 唯鈴(にとう いすず)(ずーっと『寝に帰る』だけだったもん)
仁藤 唯鈴(にとう いすず)(夕飯、張り切っちゃおっと!)
〇おしゃれなリビングダイニング
仁藤 唯鈴(にとう いすず)(張り切りすぎちゃった)
仁藤 唯鈴(にとう いすず)(残業かな?)
仁藤 唯鈴(にとう いすず)(連絡は──)
仁藤 唯鈴(にとう いすず)(あ、携帯寝室だ)
仁藤 唯鈴(にとう いすず)(あ♪)
〇シックな玄関
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「おかえ──」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「えっ!?」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「へ?あ? ど、ちら様──」
餘目 天花(あまるめ あまか)「鈴ちゃんったら、また忘れちゃったの〜?」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「あっ!?」
〇教室の教壇
天花(学生時代)「ほんっと忘れん坊なんだから!」
天花(学生時代)「貸してあげる!」
「え、でも──」
天花(学生時代)「大丈夫!鈴ちゃんのために 多めに持って来てるから♪」
〇シックな玄関
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「──もしかして 天花(あまか)ちゃんっ!?」
餘目 天花(あまるめ あまか)「よかった~!覚えててくれて!」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「なんで天花ちゃんがここに!?」
唯鈴(いすず)「二人──知り合いなの!?」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「知り合いっつーか、顔見知りだな」
餘目 天花(あまるめ あまか)「勤務先のビルが一緒なの〜 私は受付〜」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「電車も一緒でな 今朝携帯を拾ってもらったんだが──」
餘目 天花(あまるめ あまか)「待ち受けが鈴ちゃんだったからさ〜 つい声かけちゃった⭐」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「そ、そうだったんだ!」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)(──そうだったんだ、待ち受け♥️)
餘目 天花(あまるめ あまか)「でさ、鈴ちゃんにお願いがあって──」
餘目 天花(あまるめ あまか)「あのね、」
餘目 天花(あまるめ あまか)「少しの間──」
餘目 天花(あまるめ あまか)「ここに住ませて──ッ!!!」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「えぇ──っ!?!?」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「え、どういうこと?」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「ストーカーに遭ってるらしい」
餘目 天花(あまるめ あまか)「警察に相談したけど 動いてもらえなくて」
餘目 天花(あまるめ あまか)「怖くて家に帰れないの! 引っ越し先見つかるまででいいから!」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「ちょうど親父の部屋が空いただろ?」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「ッでも、ストーカーって──」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)(職場はバレてないの? うちに来ない?逆恨みとか──)
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「・・・」
〇古いアパート
〇シックな玄関
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「・・・」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「大変だったんだね 上がって?夕飯にしよ?」
餘目 天花(あまるめ あまか)「ありがと〜」
〇おしゃれなリビングダイニング
餘目 天花(あまるめ あまか)「ほんっと驚いたんだからね~! いきなり高校やめちゃってさ~!」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「色々あって──お金とか、母とか」
餘目 天花(あまるめ あまか)「同窓会も来ないと思ったら ちゃっかり結婚してるしさ〜」
餘目 天花(あまるめ あまか)「こんな素敵な旦那、どこで捕まえたのよ」
餘目 天花(あまるめ あまか)「馴れ初め馴れ初め!」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「天花ちゃんたら」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「俺の客だったんだよ」
餘目 天花(あまるめ あまか)「仁藤さん、CJA社ですっけ? 転職エージェントの」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「高校中退した後──」
〇職人の作業場
食品加工工場で働いてたんだけど
パートのおばちゃん「報連相くらいしっかりなさい! 仕事にならないじゃない!」
二年勤めても迷惑かけっぱなしで
向いてないのかなって
〇大企業のオフィスビル
そんなときバスの広告で
愛瀬さんの会社を知ったの
〇綺麗な会議室
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「介護職に適性がありそうですね 抵抗ありますか?」
経歴も服装も軽かった私の話を
熱心に聞いてくれて──
〇ファミリーレストランの店内
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「辛かったんだね」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「分かるよ うちの母も放置系だったから」
お義父さんが倒れて大変なときも
私的な相談に乗ってくれて──
〇おしゃれなリビングダイニング
餘目 天花(あまるめ あまか)「それで鈴ちゃんから アタックしたワケだ?やるじゃん!」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「ううん、告白は、愛瀬さんから──」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「俺が何とかしてやんねぇとって 拾っちまったんだ」
餘目 天花(あまるめ あまか)「そんな、捨て犬みたいに! 照れてるんですかぁ?」
餘目 天花(あまるめ あまか)「でも鈴ちゃんて昔から そうゆうトコあるもんね~!」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「そ、そうかな?」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「なぁ、唯鈴」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「そろそろ風呂行ってもらったら?」
餘目 天花(あまるめ あまか)「あ!もうこんな時間!?」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「お部屋案内するね」
〇綺麗な一戸建て
〇シンプルな玄関
餘目 天花(あまるめ あまか)「玄関、別なんだ~」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「お義父さんが倒れたときに、義実家をリフォームして二世帯にしたそうです」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「こんな感じに──」
餘目 天花(あまるめ あまか)「結婚する前からってこと!?」
餘目 天花(あまるめ あまか)(変わってる~)
〇家の廊下
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「ここがトイレ、お風呂はあっちね」
餘目 天花(あまるめ あまか)「二世帯住宅っていうか、お隣さんだね」
餘目 天花(あまるめ あまか)「お義母さんも滅多に帰らないって?」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「うん、お義母さんは──」
餘目 天花(あまるめ あまか)「子どもは?作らないの?」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「お互いずっと忙しかったから──」
餘目 天花(あまるめ あまか)「とか言って!ヤルことヤッテんでしょ?」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「あ──その、タイミングとか色々ね」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)(お誘いがあるときに限って、アレなんだよね)
仁藤 唯鈴(にとう いすず)(相性悪いのかな)
餘目 天花(あまるめ あまか)「ニヤリ──」
〇綺麗な一人部屋
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「この部屋を使って」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「掃除は毎日してたし 寝具も変えてあるから」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「私一回戻るけど 何かあったら内線してね」
餘目 天花(あまるめ あまか)「ホテルみた~い!」
〇おしゃれなキッチン(物無し)
夫婦宅キッチン
仁藤 唯鈴(にとう いすず)(よし、終わった!)
仁藤 唯鈴(にとう いすず)(まだまだいつもより早い♪)
〇清潔な浴室
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「はぁ──」
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「あっ!はーい!」
〇シンプルな玄関
〇綺麗な一人部屋
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「どうしたの?天花ちゃ──」
充満する甘い匂いの中
ベッドに座る彼女の太ももに
夫が頭を埋めている──
仁藤 唯鈴(にとう いすず)「え、愛瀬──さん? 何で ここに? 何を──!?」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「火傷がないか見てたんだよ」
仁藤 愛瀬(にとう まなせ)「ココアを ほら、こぼしたらしい」
ベッドに茶色い染みが広がり
ペアカップが床で割れている
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)
遅くなりましたが読ませて頂きました!
こ、これは……外イヌと内イヌなんて😱
旦那も狙ってアレの日に誘ってますね……うわ、旦那ヒド……最悪……これはベシッと復讐してほしい!
チワワといえば昔の某貸金融(だったかな?)のCMを思い出しました。あのぷるぷる震える感じと大きな瞳がほっとけない感じなんですよね。
二世帯住宅っていうのも新しくて面白かったです!
衝撃作過ぎますよー、これ😱💦外犬とうち犬……あの旦那めぇ😡💢💢💨
すずちゃんが不憫で辛いです。ココアのくだりからイヤな予感しかしませんでした。巻き返してくれるかな?
でもとっても面白かったです😆
チワワってなんだか悲しい顔しているように見えますよねー!
計画的に押しかけて来たような女と不倫男は犬の餌にでもしてやる的な逆襲劇が始まったりするのかドキドキです。