メタリアルストーリー

相賀マコト

エピソード25(脚本)

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〇渓谷
  エドガーは高まった興奮を抑えながら、ライザーたちに説明を始める。
エドガー「僕はこことは別の場所で、ギラノスの討伐を行っていました」
エドガー「1匹を倒しかけてとどめを刺そうとしたところに、もう1匹のギラノスが現れました」
エドガー「1匹目のギラノスとの交戦で体力をだいぶ消耗していたので、いったん茂みに隠れて様子をうかがっていました」
エドガー「すると、弱ったほうのギラノスをもう1匹が・・・食べたんです」
エドガー「そして、捕食したほうのギラノスが変形して頭がもう一つ生えてきました」
エドガー「しばらくするとそいつはそのまま去っていったので、追いかけたんです」
ライザー「なぜそこで信号弾を使わなかった?」
  ライザーはエドガーのポーチを差し出す。
  その中には、ライザーが試験開始時に渡した信号弾が入っている。
エドガー「ああ、落としていたんですね。 まあ持っていたとしても使いませんよ」
エドガー「一度狙った獲物を横取りされて黙っているなど、我が一族の誇りに反しますから」
ライザー「・・・なるほどな」
ライザー「それで、試験の結果についてだが・・・」
「・・・・・・」
  次に続く言葉を予測して、エドガーは悔しそうに唇を噛む。
  ライザーはフッと微笑んだ。
ライザー「ふたりとも合格だ」
  エドガーは動揺を隠せないようで、目を大きく見開いている。
エドガー「・・・ですが、日はとっくに暮れています」
  ぐっと拳を握り、エドガーはライザーの顔をじっと見つめた。
  ライザーは肩をすくめ、空を見る。
ライザー「おっと、気づかなかった。これは俺のミスだ」
ライザー「ただ今をもって試験を終了としよう」
エドガー「でもあれは・・・」
  なにかを言おうとするエドガーの言葉を遮って、ライザーが口を開く。
ライザー「合格条件は時間内にギラノスを討伐すること」
ライザー「お前は倒した。しかもひとりで2匹分を、だ」
ライザー「そうだろ?」
  ライザーは確認するようにニルの方を向く。
  ニルは微笑んで頷(うなず)いた。
ニル「ええ。俺は見てただけですから」
  エドガーはなにかを言いたそうにニルを見る。
  視線に気づいているのかいないのか、ニルはいつも通りの表情で微笑んでいる。
  エドガーは目を閉じ、諦めたように息を吐いた。
エドガー「・・・ブッシュバウム家たるもの、当然の結果です」
ライザー「おう」
ライザー「それじゃ、メルザムに帰るぞ」

〇渓谷
  日が落ちて暗い中パーツを回収するのは大変だということで、その場にいる全員でベースキャンプへと戻った。
  一部のギルド職員以外は、ベースキャンプに残って翌日、後処理を行うことになった。
  受験者には、夜明けまでにメルザムに戻れるようにと馬車が用意されていた。
  ニルはライザーに別れを告げ、討伐したギラノスのパーツを積む幌(ほろ)馬車の中で出発を待つ。
ニル(帰ったら、アイリとエルルに試験のことを話そう・・・)
ニル(まさか試験官がライザーだったなんて、ふたりとも驚くだろうなぁ)
ニル(それから、アイリにはギラノスのおびきよせ方を教えてくれたお礼も言わなきゃ)
  そんなことをぼんやり考えていると、馬車の中にエドガーが姿を現した。
  不思議に思い、ニルは首を傾(かし)げる。
ニル「あれ? エドガーは自分の家の馬車があるんじゃないの?」
エドガー「帰らせたよ」
  エドガーはそう言って、ニルの斜め向かいに腰を下ろす。
  出発を告げる職員の声とともに、馬車はゆっくりと動き始めた。
  無言のまま、しばらく馬車に揺られる。
  時折石を踏んで大きく身体が跳ねた。
  視線を感じてニルはエドガーの方を向く。
  一瞬目が合うが、すぐにエドガーに逸(そ)らされてしまった。
  それから1時間ほど揺られていると、エドガーが唐突に口を開く。
エドガー「・・・ありがとう」
ニル「え」
  ニルはエドガーを見つめる。
  それから少し考えて、微笑んだ。
ニル「・・・なんのこと?」
  ニルの返事に、エドガーは鼻息を吐いた。
  やれやれと呆(あき)れたような様子だ。
  エドガーは立ち上がり、おもむろにニルに近づくとその隣に腰を下ろした。
エドガー「君、本当にルーキーか?」
  ニルが問いかけに頷くと、エドガーは「ハッ」と口角を上げて肩をすくめた。
エドガー「・・・僕はブッシュバウム家の嫡男として、物心ついたころからコレクターとしての修練を積んできた」

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