エピソード27 悲劇の塔の中で(脚本)
〇らせん階段
塔の中
デジール第二王子「!!!!!」
デジール第二王子「あ・・・兄上・・・! あんたは死んだはずだ! だって!」
デジール第二王子「だって・・・」
シャグラン王太子殿下「どうしてこうなったのか ずっと考えていたんだ」
シャグラン王太子殿下「やっとわかったよ」
〇黒
デジール第二王子「外には出られない! 上へ逃げるしかない!」
デジール第二王子「な!? 何だ!?」
〇らせん階段
デジール第二王子「あ、兄上!? 下の階にいたはずなのに!?」
シャグラン王太子殿下「我が弟よ まず謝らせてくれ」
シャグラン王太子殿下「グルナがお前の恋人だなんて 知らなかったんだ」
シャグラン王太子殿下「あれは昨年のことだったか」
〇謁見の間
ジャッド町長「王太子殿下! どうかどうか 我がロワニアの町の視察を!」
シャグラン王太子殿下「スケジュールがキビシイなぁ」
シャグラン王太子殿下「デジール! どうせ暇だろう? 私の代わりに行ってきてくれ」
デジール第二王子「へいへい。どうせオレには 父上も誰も重要な仕事は回しませんよ」
〇らせん階段
シャグラン王太子殿下「そのロワニアで お前はグルナと出逢った」
シャグラン王太子殿下「ロワニアから帰ったお前は」
シャグラン王太子殿下「ロワニアの話ではなく グルナの話ばかりしていた」
デジール第二王子「あああああ!!」
シャグラン王太子殿下「思えば幼いころから私は」
〇大広間
シャグラン王太子殿下「齢の近い女性と言うものについて 悪口しか聞かされてこなかった」
幼少シャグラン「あのこ、かわいいなぁ」
大人「あの令嬢は顔がよいだけで 頭は悪そうですな」
幼少シャグラン「このこ、げんきがいいな」
大人「この令嬢は野心の塊で 王妃の座だけが目当てですわ」
幼少シャグラン「きみ、やさしいんだね」
大人「その令嬢は身内にだけ優しくて それ以外は道具扱いですぞ」
幼少シャグラン(きっと このせかいには すてきな おんなのこ なんか いなくて)
幼少シャグラン(こい なんて ほんとうは そんざい しないんだ)
〇謁見の間
デジール第二王子「グルナ最高!」
〇らせん階段
シャグラン王太子殿下「私はそれを単なる報告 もしくは推薦と捉えてしまった」
シャグラン王太子殿下「お前がグルナに・・・いや 誰かが誰かに恋をしているという発想が」
シャグラン王太子殿下「そもそも私にはなかったんだ」
シャグラン王太子殿下「故郷であるロワニアを守るために 王妃になる道を選んだ人が」
シャグラン王太子殿下「もともとは弟の恋人だったなんて 知らなかった」
シャグラン王太子殿下「お前が私を 殺したいほど憎んでいることにも」
シャグラン王太子殿下「まったく気づかなかったよ」
シャグラン王太子殿下「気づけていれば、ね・・・ あの夜、お前は」
〇洋館の廊下
デジール第二王子「兄上、話がある。来てくれ」
〇兵舎
シャグラン王太子殿下「どうしたんだ? こんな夜中に 塔の最上階なんかに呼び出して」
デジール第二王子「兄上・・・」
デジール第二王子「グルナを返せッ!!」
〇兵舎
シャグラン王太子殿下「お前は私を、ほら そこの窓から突き落とした」
シャグラン王太子殿下「デジール? 聞いてるかい? あまり窓に近づくと危ないよ」
デジール第二王子「逃げられない逃げられない もうどこにも逃げ場がない」
デジール第二王子「窓からなら逃げられるかもしれない 窓しかない」
デジール第二王子「窓から飛ぶしかない・・・!」
シャグラン王太子殿下「デジール!」
〇武骨な扉
その声は塔の下にいても聞こえた
シャグラン王子がデジール王子を
とっさに止めようとしたけれど
シャグラン王子の体は
棺に入れるために形を整えてあるだけで
塔から落ちて死んだときに
肉も骨もバラバラになっていて
デジール王子の体は、シャグラン王子の
二の腕と肩の間をすり抜けた
〇魔法陣2
ロワンの魔法がデジール王子を
窓の中に押し戻した
〇武骨な扉
ロワン「見殺しにしたほうがよかったかな?」
ニュイ「ううん。これでいいんだ」
〇兵舎
シャグラン王太子殿下「デジール・・・」
デジール第二王子「あああああ・・・」
シャグラン王太子殿下「無事でよかった」
〇武骨な扉
シャグラン王子から逃げようとして
デジール王子が足を踏み外して
階段を落ちていく音が聞こえた
グルナ「ああ・・・デジール・・・」
グルナ「う・・・うう・・・」
ロワン「助けたのは無意味だったかな」
シャグラン王太子殿下「いえ。おかげでニュイ君に 死の瞬間を見せずにすみました」
シャグラン王太子殿下「ロワンさんですね? あなたのことはおばあさまから・・・」
シャグラン王太子殿下「バースレッテ王妃から聞いています」
シャグラン王太子殿下「私のような 人間からの“なりかけ”ではなく」
シャグラン王太子殿下「純粋なダークドヴェルグでありながら 人間の味方をしてくださると」
ロワン「僕はアルミュールが守ったものを 守るだけですよ」
ロワン「そのアルミュールはもういないのだから 自分のためでしかありません」
シャグラン王太子殿下「それだけの個人的な想いが 持てるというのは」
シャグラン王太子殿下「少しうらやましいです」
シャグラン王太子殿下「そもそもどうして闇の王の封印が 解けたのかについてですが」
シャグラン王太子殿下「この塔は実は、闇の王を封印するための 装置の一部だったのです」
シャグラン王太子殿下「ですがそれを知る人間は 今では誰もおらず」
シャグラン王太子殿下「ただ私が死んだ場所だという悲しみで 父は塔の撤去を命じました」
〇黒
シャグラン王太子殿下「解体作業の最中に 奇妙なクリスタルが発見されました」
シャグラン王太子殿下「解体中の塔は風によって 笛のように音を立て」
シャグラン王太子殿下「その音はまるでクリスタルが うめいているかのようで」
シャグラン王太子殿下「デジールはそれを 私の呪いの声と聞き間違えて」
〇養護施設の庭
シャグラン王太子殿下「だからデジールはクリスタルを 私の墓へ持ち込んで許しを求めたのです」
〇武骨な扉
ニュイ「そのクリスタルって・・・」
ロワン「うん。僕だね」
ロワン「死にかけだった僕の体を キャスクがクリスタルに封じ込めたんだ」
シャグラン王太子殿下「クリスタルは壁の中の隠し祭壇に 丁重に納められていたそうですから」
シャグラン王太子殿下「ロワンさん、あなたこそが 闇の王封印の要だったのでしょう」
ニュイ「ま、待って! それじゃあ・・・」
ニュイ「闇の王をもう一度封印しようとしたら」
〇黒
ニュイ「ロワンもいなくなっちゃうの!?」