サンビタリア症候群

香久乃このみ

第二話 『私だけを見つめて』(脚本)

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〇女子トイレ
  ――あらすじ――
  陽花の部署へ異動で来たイケメン
  紅林信吾。
  彼が陽花に興味を示したことを
  面白く思わない人物がいた。
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
田所胡蝶(こちょう)「くすはら、せんぱい」
社員「胡蝶、やばいよ。 楠原さんに謝った方がいいって」
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
田所胡蝶(こちょう)「だって、だってぇ・・・。 私、すっごく傷ついたんですよ!」
田所胡蝶(こちょう)「雌犬なんてひどいこと言われて! 悲しくて 頭がぐちゃぐちゃになっちゃって!」
田所胡蝶(こちょう)「私、このトラウマをかかえて 生きていかなきゃいけないんですか? 涙出ちゃいますぅ」
楠原陽花(はるか)「・・・ハァ、 田所さん」
楠原陽花(はるか)「ここのトイレは、 取引先の方も利用する場所よ」
楠原陽花(はるか)「うかつなことを言わないよう 気を付けて」
楠原陽花(はるか)「あなたの一言で取引が白紙になって、 億単位の損失が出た場合、 責任取れないでしょう?」
楠原陽花(はるか)「それだけ」
社員「・・・よかったね、胡蝶。 注意だけで」
社員「はー、心臓に悪い。 田所、気をつけなよ」
田所胡蝶(こちょう)「・・・なによ」
田所胡蝶(こちょう)「私の言葉、完全無視? むかつく」

〇黒

〇オフィスの廊下
楠原陽花(はるか)(あーっ、腹立つ!!)
楠原陽花(はるか)(何が『傷ついたんですぅ』、よ!)
楠原陽花(はるか)(人の彼氏寝取っておいて、 よくあそこまで被害者面出来るよね!?)
楠原陽花(はるか)(その上、私が新しい男に手を出した?)
楠原陽花(はるか)(どこをどう見れば そんなデタラメ思いつくんだろ!)
楠原陽花(はるか)(一体どんな光景が見えてんの!?)
楠原陽花(はるか)(落ち着け、陽花)
楠原陽花(はるか)(今の時代、 目上の人間が厳しい言葉を使えば、 パワハラで訴えられる)
楠原陽花(はるか)(冷静に、冷静に・・・)
桜川大和(やまと)「あっ、はる・・・!」
桜川大和(やまと)「あ・・・」

〇オフィスのフロア
社員「『勇者』!?」
社員「あはは。 でも紅林さんらしいかも!」
紅林信吾(しんご)「はは、そうかな」
社員「あ、楠原さん。 聞いてくださいよ」
楠原陽花(はるか)「なに?」
社員「今、紅林さんの 昔の話聞いてたんですけどね」
社員「小学生の時のあだ名 『勇者』なんですって!」
楠原陽花(はるか)「へぇ」
紅林信吾(しんご)「・・・・・・」
社員「なんとなくわかりますよね、 紅林さんが『勇者』って」
楠原陽花(はるか)「そうね」
楠原陽花(はるか)「きっとクラスの中心にいて、 みんなに慕われるリーダー だったんじゃない?」
紅林信吾(しんご)「はは、そうでもないよ」
紅林信吾(しんご)「大勢のクラスメイトに 囲まれたりはしたけどね」
社員「わぁ、やっぱり!」
楠原陽花(はるか)(クラスの中心にいるイケメンか)
楠原陽花(はるか)(目に浮かぶわ。 さぞかし大勢の女子たちから 好意を向けられてたんでしょうね)
楠原陽花(はるか)(・・・私とは合いそうにないけど)
紅林信吾(しんご)「・・・・・・」
紅林信吾(しんご)「ねぇ、楠原さ・・・」
木田部長「楠原くん」
楠原陽花(はるか)「はい」
木田部長「午後からこの間ウチで担当した、 非常持ち出し袋について取材が来る」
木田部長「頼んだよ」
楠原陽花(はるか)「わかりました」
木田部長「紅林くんも同席するように」
紅林信吾(しんご)「はい」
楠原陽花(はるか)「え? なぜ紅林さんが・・・・・・」
木田部長「楠原くんの仕事を近くで見るのは 勉強になるはずだ」
木田部長「ついでに美男美女で 画面を華やかにしておいてくれ」
紅林信吾(しんご)「だそうです。 どうぞご指導の程、よろしくお願いします」
楠原陽花(はるか)「え、えぇ、こちらこそ」

〇ビジネス街

〇小さい会議室
楠原陽花(はるか)「以上のコンセプトで、 こちらの非常持ち出し袋の中身は 構成されています」
記者「一つお聞きしてよろしいですか?」
記者「この二点のアイテムは 非常時に持ち歩くにはいささか のんきというか、」
記者「必需品ではないですよね?」
記者「これを除外することで、販売価格を 下げられるのではないですか?」
楠原陽花(はるか)「『人はパンのみにて生きるにあらず』 という言葉がありますよね」
記者「はい」
楠原陽花(はるか)「この二つのアイテムは、 心の余裕をサポートするものです」
楠原陽花(はるか)「切羽詰まった状況において、 心の余裕は生きる力となります」
楠原陽花(はるか)「ギリギリのシチュエーションで 使うものだからこそ、 物質的満足以外もサポートしたい」
楠原陽花(はるか)「我々はそう考え、 このラインナップにしました」
記者「なるほど」
紅林信吾(しんご)「・・・・・・」

〇オフィスの廊下
紅林信吾(しんご)「お疲れ様です」
紅林信吾(しんご)「隣にいただけで何のサポートもできず、 すみませんでした」
楠原陽花(はるか)「この取材はそもそも 私一人で受ける予定だったものなので、 気にしないでください」
楠原陽花(はるか)「紅林さんは、 この部署に配属されたばかり」
楠原陽花(はるか)「ここの仕事がどんなものかを 掴んでくれれば、 今回はそれで充分です」
紅林信吾(しんご)「はは、やっぱりかっこいいな、 楠原さんは。 噂通りのやり手だ」
紅林信吾(しんご)「きれいで有能だなんて、 天は二物を与えずってのは嘘ですね」
楠原陽花(はるか)「お上手ね、ありがとう」
楠原陽花(はるか)「その調子で、今後は仕事でも 商品のいい部分をアピールしてください」
紅林信吾(しんご)「なるほど。 今日の楠原さんのようにですか」
楠原陽花(はるか)「えぇ」
紅林信吾(しんご)「すごいなぁ」
紅林信吾(しんご)「楠原さんの口先にかかれば、 ゴミでも魅力ある商品に 思えてしまいそうだ」
楠原陽花(はるか)(は?)
紅林信吾(しんご)「デブでさえないカーストの底辺ですら、 人気者にプロデュースできてしまいそう ですね」
楠原陽花(はるか)「・・・・・・」
楠原陽花(はるか)「何を言いたいのか分からないけど」
楠原陽花(はるか)「ウチの開発部が 総力を挙げて作り上げた商品が、 ゴミであるはずがないでしょう」
楠原陽花(はるか)「アピールする商品をそんな風に言う人に、 この仕事は難しいと思いますよ」
楠原陽花(はるか)「私は確かに、 他人にいい印象を持ってもらえるよう 説明するのが得意です」
楠原陽花(はるか)「でも、そこに噓はない。 いつだって本心だわ」
紅林信吾(しんご)「・・・・・・」
紅林信吾(しんご)「失礼しました」
紅林信吾(しんご)「ちょっとした軽口のつもりでしたが、 配慮が足りませんでしたね」
楠原陽花(はるか)「気を付けてください」

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コメント

  • 主人公、かっこいいですね~!でも内心では普通に怒ったり口悪かったりするところも好きです。

  • 加護を失ったか!

  • 陽花さん、素敵ですね!美人で頭の回転がいい一方で、脆く繊細な内面を持ち合わせているところに惹かれますね。その一方で田所さん、、、こういう女性いるわー(ためいき)陽花さんのように上手にあしらいたいです

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