運命の席は夢の中を転がる−ケース0.案内(脚本)
〇レストランの個室
がやがやと騒がしい店内。
白い皮手袋をはめた無貌の店員が一礼する。
店員「いらっしゃいませ。 本日は当店にご来店いただき、誠にありがとうございます。人間の男性一名様ご案内です」
店員「当店は夢という特別な空間で、一期一会の出会いを皆様に提供させていただいております」
店員「普段出会わない方達と席を共にすることで、少しでもよい時間を過ごしていただきたいと思います」
店員「その中で、皆様の運命を根底から覆してしまうような出会いをもたらすことができれば、幸いでございます」
店員「当店は全てセルフサービスです。あちらからご自由にお取りください。 どんな食べ物か分からなければ、お気軽にお尋ねください」
店員「また、当店では席替えにも対応させていただいております」
店員「話が合わないであったり、もっとたくさんの方と相席したいなどということがございましたら、私にこっそりとお伝えください」
店員「店内状況によっては少しお時間をいただく場合がございますが、なるべくご要望にはお応えさせていただきます」
店員「相席相手の指名はできませんがなるべくお客様同士の相性を見て、こちらでお席を調整させていただいております」
店員「店の都合で席を移動していただく場合もございますので、その点はご了承ください」
店員「なお、席替えの際はお客様からそういう要望があったことは伝えずにご案内致しますので、ご安心ください」
店員「いつお席を立たれるかは全て、お客様次第でございます」
店員「お渡しする伝票を私にお返しいただき、こちらの扉をくぐられた時点で、本日のご利用は終了とさせていただいております」
店員「ただし、相席のお相手が席を立っているときにお帰りになるのは、相手のお客様にも失礼になりますので、ご遠慮ください」
店員「今までのところで何かご質問はございますか?」