エピソード2〜Target1 ヨコヤマシンジ〜(脚本)
〇ビルの裏
御野町0丁目の形成外科で”整形”された私、
アオバレイコは──
ひっそりとした路地裏を歩いていた──
アオバレイコ「さて、早速復讐といきたいところだけど・・・」
アオバレイコ「あら、非通知・・・? 一体誰からかしら・・・」
「・・・あ、どうも アオバレイコさんでしょうか?」
アオバレイコ「その声・・・ さっきのヤブ医者じゃないの」
「「ヤブ」医者ではないんですがねー 私の名前はヒラギノカオルですよ」
アオバレイコ「というか、どうして私の番号知ってるのよ?」
「まあまあ、細かいことは置いといて」
「あなたは私の新規のお客様なのでね」
「一応、あなたのチカラについて 説明しておこうと思って電話したんです」
アオバレイコ「なるほど 私も知りたかったから、丁度良いわ」
「それは良かった ではまず、あなたの左腕を見てください」
アオバレイコ「何よこの時計、私にくれるの?」
「そうですよ 近頃、流行ってるでしょう?」
「ウェアラブルデバイス ・・・いわゆるスマートウォッチです」
アオバレイコ「ははあ 健康志向の人が身につけるアレね」
「ただし、それは 普通のスマートウォッチとは異なります」
「そのデバイスからは、 あるフェロモンが絶えず出ているんですよ」
「あなたを「アオバレイコ」と 認識させないための、ね」
アオバレイコ「フェロモンでそんなことができるの?」
「ええ だって私、天才ですから」
「そのスマートウォッチを着けている間は」
「あなたが「アオバレイコ」だと 気づく人は居ませんよ」
「・・・私を除いてね」
「相手にアオバレイコと気づかれない方が、 復讐するには都合が良いでしょう?」
アオバレイコ「まあ、ね 足がつくと面倒だし」
「それに、 あなたがアオバレイコだと気づかれれば」
「復讐する相手も、 そもそもあなたに近寄りませんし」
アオバレイコ「・・・私を馬鹿にしてるの?」
「ははは、すみません でも事実じゃないですか」
アオバレイコ(こいつ・・・ 後で覚えていなさい)
「それと、そのフェロモンには もう一つ、チカラがありまして」
「あなたが復讐したいと思う相手を 引き寄せることができるんです」
「まるで、ミツバチを惹きつける 花のようにね」
「・・・確かにあなたは化け物ですが」
「その容姿、スタイルは中々のもの ですからね」
「復讐相手の男の一人や二人、 落とせちゃったりするんじゃないですか?」
「マスクさえしていれば、 化け物だとバレることはない訳ですし」
アオバレイコ「あなた・・・それ以上言うと ”潰す”わよ?」
「くっひひ、やめてくださいよ 私を痛めつけてもどうにもなりませんよ」
「ひひひひ、では期待してますよ ・・・あ、最後に一つ」
「そのスマートウォッチ、 バッテリーが3時間しか持ちません」
「3時間経つと、 フェロモンを発出しなくなります」
「その瞬間、あなたは 身バレすることになりますので」
「・・・くれぐれも、 気をつけてくださいね」
アオバレイコ「わかったわ まあ、3時間もあれば余裕よ」
「果たしてそうですかねェ・・・ では、健闘を祈りますよ」
「どうか、幸せな復讐ライフを♡」
ツー、ツー。
アオバレイコ「あのヤブ医者、 言いたいことだけ言って電話切ったわね・・・」
アオバレイコ「まあ良いわ では私は表通りにでも行こうかしら」
アオバレイコ「・・・最初の犠牲者と会うために、ね」
〇雑踏
ヨコヤマシンジ「・・・ウィ〜、酔った酔った」
ヨコヤマシンジ「居酒屋もう一軒ハシゴすっかぁ! ・・・ん?」
ヨコヤマシンジ(うわっ! あの女・・・ めっちゃ美人じゃん!!)
ヨコヤマシンジ「ヘイ彼女〜 どう? 俺と一杯やらない?」
アオバレイコ(誰よこいつ)
ヨコヤマシンジ「もちろん、俺が奢るからさ!!」
アオバレイコ(こんなよくわからん奴に構ってるほど、 私、暇じゃないんだけど・・・)
アオバレイコ(でも・・・こうして ナンパされるのって、初めて・・・)
アオバレイコ「まあ、あなたの奢りなら良いわよ」
ヨコヤマシンジ「まじか! やったー こんな美女と飲めるなんて、ツイてる!」
アオバレイコ「美女?」
ヨコヤマシンジ「そうだよ あんた、めっちゃイイ女じゃん!」
ヨコヤマシンジ「美女がこんなとこ一人で歩いてたら危ないでしょ!」
アオバレイコ(こ、こんなに気を遣ってくれる人 初めて・・・)
アオバレイコ(どうしよう、 何だかドキドキしてきたわ・・・)
ヨコヤマシンジ(おおッもしかして照れてる!? 男に耐性がない子なのかな?)
ヨコヤマシンジ(これはもしかして、チャンスかも・・・)
ヨコヤマシンジ「あ、あのさ! 良かったら、俺ん家で飲まない?」
ヨコヤマシンジ「俺ん家、すぐそこだからさ! 居酒屋より家飲みの方がゆっくり話せるし!」
アオバレイコ「・・・いっ、いいいいい家ッ!?」
アオバレイコ(これはもしかして・・・ そういうお誘いと考えてイイのよね? ね!?)
アオバレイコ「わ、わかった・・・ 行くわ・・・」
この時、私の頭からは既に──
「復讐」の二文字は、消えかかっていた──
〇簡素な一人部屋
ヨコヤマシンジ「さあ、上がって上がって!」
アオバレイコ「お、おじゃまします・・・」
ヨコヤマシンジ「何飲む? とりあえずハイボールいっとく?」
アオバレイコ「ええ、お願い」
アオバレイコ(知らない人の家に来てしまったわ・・・)
アオバレイコ(でも、不思議と 嫌な気はしないわね・・・)
アオバレイコ(もしかして私、この人のこと・・・)
ヨコヤマシンジ「はい、ハイボール! そういえば、あんた名前は?」
アオバレイコ「名前?」
ヨコヤマシンジ「ああ、俺はヨコヤマシンジ! あんたは?」
アオバレイコ「えっと・・・」
アオバレイコ「・・・ヒラギノカオル、よ」
ヨコヤマシンジ「カオルちゃんって言うんだ! 名前もかわいいねェ!」
アオバレイコ(さすがに「アオバレイコ」とは 名乗れないものね)
アオバレイコ(あのヤブ医者の名前 勝手に借りちゃったけど、まあ良いか)
ヨコヤマシンジ「何か俺、カオルちゃんとは 初めて会った気がしないなあ」
ヨコヤマシンジ「カオルちゃんと会った瞬間、 俺の中のベルが鳴ったよ! リンゴーン、って!」
ヨコヤマシンジ「その時思ったよ 「ああ、俺はこの子と会うために生まれてきたんだ」ってね!」
アオバレイコ「そ、それはどうも・・・」
ヨコヤマシンジ(この子押しに弱いなあ〜 うまくいけば今晩で落とせるかも♡)
アオバレイコ「・・・あら? 机の下に何かが・・・」
ヨコヤマシンジ「・・・ああ、それ 小学生の頃の卒業アルバムだよ」
ヨコヤマシンジ「つい最近、当時の同級生と会ってさ」
ヨコヤマシンジ「何だか懐かしくなっちゃって、 アルバムを見返してた訳!」
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ついに第一の復讐が……
と思っていたら、ナンパ男に心ときめいてホイホイ付いて行くレイコさんのチョロさに笑ってしまいました。本当に純粋な子なんですねー