お二人の秘密(脚本)
〇屋敷の書斎
その日の夜。
私はこっそり客間を抜け出し、
公爵様の執務室へと向かいました。
熟考の末、殿下の提案に乗ることに
決めたのです。
好きな殿方のことを、
よく知りたいと思うのは
自然なことでしょう?
ウィレム「・・・よく来たね。 では、隣の部屋で待機してくれるかい?」
ウィレム「もうすぐアシュリーが来るので、 この魔導具で僕たちのやり取りを 観察して欲しい」
ウィレム「それで全てが分かるから」
それは鏡の形をした魔導具でした。
光沢を放つものの、
鏡面には何も映し出されておりません。
何に使うものなのでしょう?
ウィレム「僕たち二人が執務室を出るまで、 隣の部屋から出てきては駄目だよ?」
公爵様の意図がまるで分かりません。
私は頷き、
おとなしく隣室で待機しました。
〇城の客室
待つこと数分。
扉が開き、公爵殿下の執務室に
誰かが入ってきました。
それと同時に、
鏡にはアシュリー様と公爵殿下の姿が
映し出されます。
どうやら、これは離れた場所の光景を
映し出す魔導具のようです。
〇屋敷の書斎
アシュリー「お呼びですか、殿下」
ウィレム「ああ。ロランスはもう眠ったかい?」
アシュリー「寝かしつけのために絵本を読んで 差し上げました。 今はぐっすりお休みになっておられますよ」
ウィレム「そうか。 ・・・だったらいいよね?」
公爵殿下はアシュリー様に近づき、
彼の顎をくいと持ち上げました。
そのまま公爵様のお顔が
アシュリー様に近づいていきます。
〇城の客室
モブリーナ(もしかして、 キスを交わしていらっしゃる? ・・・ど、どういうことなのでしょう?)
〇屋敷の書斎
ウィレム「一週間ぶりなんだ、今夜は覚悟してね」
アシュリー「モブリーナ様に申し訳ないとは 思わないのですか?」
ウィレム「思わないよ」
ウィレム「だって、僕の番(つがい)は君だし、 僕は子供の頃から、 君のことしか見てないから」
アシュリー様はため息をつき、
殿下から離れようとしました。
しかし、殿下はそれを許しません。
背後から彼を抱きしめ、
首筋にキスを落としています。
ウィレム「愛してるよ、アシュリー」
〇城の客室
殿下はアシュリー様の首に飾られていた
チョーカーを外しています。
そのうなじにはアルファが残した
噛み跡がはっきりと残されています。
まさかアシュリー様が
オメガだったなんて・・・
私は軽い目眩を覚えました。
モブリーナ(殿下、いつまで見せつける おつもりですか? 私、そろそろ限界ですわよ?)
・・・やっと分かりました。
ロランス君のお母様は
アシュリー様だったのですね。
周囲のアシュリー様に対する態度、
アシュリー様自身の
母親に対する辛辣な態度、
すべて合点がいきました。
そして、私の初恋が破れたことも
理解しました。
王族を番(つがい)に持つ
出産経験のあるオメガ男性・・・
お父様の言うとおり、
絶対に手の届かない方でしたわ。
私が虚無の感情に囚われている間にも、
お二人は行為を続けていらっしゃいます。
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